表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のセイケンはヌけない  作者: さんいちぜろ
31/31

31 にゃんこ子にゃんこ孫にゃんこ

 俺がおとなしくサンをしまってからの話し合いは早かった。

 なんかサンの話の流れで早いって言葉が出てくるのはあまり良いことではないような気がするが、それは流石に俺の気にしすぎで候。

 さて、まあお互いに必要なものを買いそろえていたわけだが、特に変えなかったものもなく、買い出しは終了したらしいと、シヤ、シヤママから言われた。

 シヤパパを探す旅に出る準備は整ったってことになる。まあ俺はまだ旅の道中でお馬さんの乗り方を教えてもらわないと、1人で馬にも乗れないわけなんだが、それでも、シヤに乗せてもらえば、とりあえず出発することはできるので、そこのところは問題ない。

 馬も普通の馬じゃないから到着も思ったよりも早くなるだろう。

 まあ思ったよりも早くなるだけで、別の王国に行くわけだから、それなりの距離にはなるんだろうけどな。


「シヤパパがいるのはビュリングル王国のブラムルってところだったっけ?」


「はい。私が聞いた話ではそうでした」


「なるほど。で、結構な距離になるんじゃないかと思うけど、食料とかはその分かってあるってことで良いの?」


「そうですね。もちろん、必要な分すべてではなく、途中に村などもありますので、そちらで追加の食料などは買うつもりでいます。とりあえずは必要最低限に余裕を持たせるような感じで買ってあります」


 なるほど。途中の村とかにもよる予定があるのか。ってそりゃそうか。遠いだろうし、いくら魔物馬だからってそんな大荷物で走れないか。まあどのくらいの大荷物になるのかも見当ついてないんだけど。

 それに道中襲われて荷物全部持ってかれましたなんてことになったら、全て買いなおしになるしな。最低限の方が買いなおしの量も少なく済むし。

 でも立ち寄る村が全て食料を買えるほど裕福である保証もないから、できればそれなりの量は欲しいと思っちゃうのは心配性なだけだろうか?


「もちろん、最低限というのは、立ち寄った村が食料を買える状況であるかどうかも考慮しての最低限です」


 優秀だった。シヤさん優秀だったわ。


「なるほど、それならとりあえずは安心だな。じゃあこれで出発の準備は整ったってことで良いのかな?」


「そうですね、そうなります」


 ならさっさとシヤパパを探しに行きますかね。

 聞いた話じゃシヤとシヤママ探すために頑張ってるみたいだし、さっさと行ってあげたほうが良いよな。


「よし、じゃあ今すぐ出発しよう!」


「いえ、出発は明日にしたほうが良いでしょう。できるだけ、野宿は避けるようにしたほうが良いかと。夜間は移動しませんので、今から出ても、そう距離を稼げずに野営をすることになると思います。ですので、朝早くに出発して、少しでも日の出ている移動できる時間を多くとりたいと思っています」


 あ、そういうことなのね。なるほど。はい、すみませんでした。


「わかった。シヤがそれでいいなら、そうしよう。シヤママもそれで良いか?」


「そうですね。すぐにでも行きたいという思いはありますが、シヤの言うとおりに行動したほうが良いと思いますので、大丈夫です」


 そりゃすぐにでも行きたいと思うよな。シヤも同じなんだろうけど、俺達の危険のことも考慮して我慢してくれてるんだろう。

 さて、それじゃひと眠りしたら出発しますかね。


 ***


 魔族国。そこは魔族の王たる魔王が支配している領域であり、魔族と呼ばれる者達が主に暮らしている場所でもある。

 魔族は外見としては、人間とそれほど大きな違いはないが、それぞれ魔物の特徴を持っていることが多い。

 例えば背中に翼の生えた者や、頭に角の生えた者、あるいはそのどちらをももっている等、個々にその特徴は色々とある。


 そんな魔族の国で、ある報告がされていた。


「マダナイ様がやられたようです」


 暗い部屋の中で、豪華な椅子に座る者にそう報告するのは、魔族国の諜報を担当している人物である。

 豪華な椅子に座る者、魔王は、その報告を聞いて驚いたような顔をしていた。


「何?あ奴がやられただと?」


「はい、人間の国に勇者の確認に行った後、報告が来なくなっておりました。確認したところ、人間国の何物かに倒されたようです」


 マダナイは、魔王配下12魔将の1人であり、その12将の中でも実力は高かった。奴は戦闘好きであるが故に、こと戦闘においては1対1であれば、12魔将の中で最強と言える実力であった。

 そのマダナイが倒されたという情報は、少なくない驚きを魔王に与えていた。


「そうか、マダナイが……。それが本当だとすれば、人間国には12魔将に匹敵する戦力があることは確実だな。魔将1人で相手させることはできない、か」


「そうなるかと思われます」


 魔王と勇者の戦いは今に始まったわけではない。今までの傾向からして、今の時点で勇者にそこまでの力があるとは思っていなかった。

 せいぜいが傷をつけられる程度の実力であるだろうと思っていたがために、魔将1人で勇者の調査にあたらせた。

 しかし、結果を見てみれば、魔将が倒され、勇者の情報も何も得られていない。


「マダナイを倒したのは誰なのかはわかっているのか?」


「いえ、人間の国では勇者が魔族を倒したという話が広まっておりますので、その魔族というのがマダナイ様なのではないかとは思いますが、確証のある話ではありません」


「その可能性が高いのだろうな……というよりも、勇者以外にマダナイを倒せる戦力を人間が保有しているというのは考えたくないな……」


「そうですね……」


 マダナイを倒したのが勇者であれば、誤算ではあるが、対処しきれないような話ではない。想定していた実力よりも上方修正すれば良いだけなのだ。

 しかし、勇者以外の戦力がそれほどの力を持っているとなると、これから勇者が力をつけていくのが確実で、それとは別にそちらの戦力の対処の方法も考えなければならない。

 そして、そんな別戦力に対処できるほどの戦力が、魔族国にはなかった。それも12将が1人減らされての現状でだ。


「現状の勇者の実力を知りたいが、1対1ではこちらに勝ち目はないか……」


「1対1でマダナイを超えるとなると、それこそ魔王様しかいないかと」


「とにかく、高い戦力をこれ以上減らすわけにはいかん。12魔将には勇者にかかわらないように言っておけ。やむを得ず、勇者と接触することになる場合は、最低でも12魔将2人以上で行動するようにともな」


「かしこまりました」


 魔王は12魔将を勇者に接触させたくないとは思いつつ、勇者の情報は手に入れたいと思っていた。

 今の時点では勇者が倒した可能性が高いとは思うが、しかし、それを素直には信じられない。

 実際に調べて、現在の勇者の実力を知りたいと思っていた。


「さて、私は少し出る」


「出る、とはどちらにでしょう?」


「人間の国に行き、勇者に関しての情報を調査してくる」


 魔王の言葉を聞いた者達は、それに意を唱えたい気持ちがあった。

 しかし、現状、そうも言っていられない状況になっている。

 12魔将最強を倒したと考えている相手だ。生半可な実力では気取られてしまい、更に調査は難しくなるだろう。

 ならば、まだ警戒の薄いだろう今のうちに、相手を上回るだろう実力者による調査が必要である。

 なら勇者の弱い今のうちに倒してしまえばよいではないかと思うかもしれないが、それは魔族にはできない。

 勇者が国に守られているからとか、どこにいるかわからないからとか、そんな理由ではない。

 強く育った勇者は、魔族国にとってなくてはならない存在なのだ。糧として。


「旅の準備を頼む」


 魔王が人間国へと旅立つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ