29 おで、魔道具、買う
「汚便くださーい」
魔道具店にやってきた俺は、店に入って早々ぶちかましてやった。出会い頭に汚便をたれ流したら汚便頭って呼称できるかね?
「きったねえ挨拶する奴がいたもんだねえ」
「店の奥の方からしわくちゃのババアが出てきた。俺はそのババアのしわくちゃ加減に若干引きつつ、しかし、顔には出さないように気を付けた」
「顔に出さなくても言葉に全部出てたら意味ないだろうがこのクソチンコ」
しまった、あまりのしわくちゃ加減に動揺して全て言葉にしてしまっていたらしい。
というかクソ野郎なのは認めるがクソチンコとは……あ、不能だったわ。
「まさか、鑑定持ちか?」
「あ?なんだい鑑定持ちってのは?」
異世界物を見すぎだったらしい。
「ワタシのこの魔道具、チンカウンターで見た結果、あんたのチンコが不能だってのはわかってんだよ」
異世界物だったらしい。ていうかすごく限定的な能力の魔道具をつけてるな。え、もしかして常用してんの?このタイミングでつけて出てきたってことは常用してんの?
「なんだい?ワタシがこれをつけてんのがそんなに不思議かい?もちろんいつもつけてるわけじゃないよ。外に出るか、客を相手するときだけさね」
おい最低だなこのババア。俺が言えることでもないと思うけど、最低だなおい。
「で?何の用なんだい?このチンカウンターはやらんからね?」
いらないし。パイカウンターなら欲しいけど、チンカウンターはいらないし。
「ちなみにパイカウンターもある」
「買おう」
なんだよこの店、最高じゃないか。出だしから良い予感しかしねえ。
「この店に、身を護るのに役立つ魔道具はあるか?」
「もっと細かく注文できないのかい?魔法の盾を出す魔道具だとか、衣服を強固にする魔道具だとか」
「そういう身を守れる系統のものを全て確認したい」
「金はあんのかい?」
「ああ、たぶん問題ないと思う」
「ちょっと待ってな」
しわくちゃは店の中を物色している。
店の中はあちこちに色々なものが置いてあるような感じになっていて、客が自分で何かを探せるような状態にはなっていない感じだ。
他人から見たら散らかっているようにしか見えないけど、本人からしたらわかりやすい配置になっているみたいな感じなんだろうか?
興味本位で置いてあるものを見てみるが、特に説明書きとかがされているわけでもないので、置いてあるものが何に使用されるのかわかるものが全然ない。
魔道具の形から、なんとなく大雑把な用途が想像できるくらいで、細かな使い方は全然わからない。
モノクル型のチンカウンターみたいな形のものがいくつかあるが、さっき言っていたパイカウンターはこの中にあるのだろうか?
「ほれ、まずはさっき言ってたパイカウンターだよ」
しわくちゃが戻ってきて、テーブルの上に色々な魔道具が置かれる。
その中のパイカウンターを手渡しされるが、それを俺はテーブルに置いた。
「試さなくていいのかい?」
しわくちゃが世迷言を言っている。
「試す相手がいないだろ」
「ここにナイスバデーがいるだろうが」
しわくちゃが世迷言を言っている。
「いや、試さなくて良い、信じるよ」
「ワタシがナイスバデーだってことをかい?」
「そこじゃねえよ!あんたが売ろうとしてる魔道具の性能をってことだよ!」
くそ、俺が突っ込みになるなんて、このババア、普通じゃねえ。
普通じゃねえのは最初から雰囲気出てたが、普通じゃねえのレベルが普通じゃねえ。
俺のボキャ貧も普通じゃねえ。
そういえば、前の世界で使っていたような通信機器とか、娯楽用品は魔道具として存在しているんだろうか?
「なあ、質問してもいいか?」
「なんだい?」
「遠くと話ができる魔道具ってあるのか?」
「そんなもん無いよ。やろうと思えばできるのかもしれないけどね。王族とかは持ってるかもしれないね。騎士と話ができると色々便利だからね。それを個人で持ってたら、それだけでそいつが脅威になるんじゃないかね?」
なるほど、確かに王族がそういうのを使用して指揮系統を厚くしてるんだとしたら、それを個人で使えるような奴がいるのは好まれないかもな。
それに、そういうのが個人に仕えるようになったら、その会話を盗み聞きされるリスクもあるだろうし、そのリスクはできるだけ消しておきたいと考えるか。
「じゃあ、なんか遊びに使える魔道具とかはあるのか?」
「それはあるね。まあ娯楽に使えるほど、お金に余裕がある奴しか買わないから、正直売れ残ってるものの大半がそういった娯楽用の魔道具だね。パイカウンターもそのうちの1つだよ。他の娯楽魔道具よりは売れるけどね。馬鹿な男が多いからね」
まあ男なんて馬鹿なもんだからな。異世界ひゃっほーで全裸ブレイクダンスしてた俺が他の男を馬鹿にできる余地何てこれっぽっちもないがな。
パイアールには目が引かれてしまうのは、性なんですよ、へへ。ナイスππ。
円周率円周率♪をおっぱいの隠語にしようぜ委員会会長の俺はいつでも会員を募集しているぜ。
「とりあえず、その娯楽魔道具も気になるけど、まずはその身を護る魔道具を確認させてもらっても良いか?」
「はいよ」
そう言って魔道具の説明をしてくれるしわくちゃ。
「残ってた護身用の魔道具は5個だけだね。さっきも言った通り、残ってる魔道具の大半は娯楽用になるからね。数が少ないのは文句言うんじゃないよ」
「ああ、ないよりは良いだろ。まだ何も性能聞いてないからわからんけど」
「そうさね。まずはこれだ。魔法の盾が発生する魔道具だ。ただ馬鹿みたいに魔力を食うからね、貯める魔力量に対して、使用できるのは3回だけっていう品さね」
「防御力はどんなもんなんだ?」
「竜のブレスを防げるらしいけど、本当かどうかはわからないね。まあ攻撃魔法の大半は防げてたから、あながち嘘でもないかもしれないけど、魔力を溜めるのに時間がかかるし、使用できるのは3回だから、ここぞという時にしか使えないね」
まあそれでも攻撃魔法の大半を防げるなら、あるに越したことはないだろう。
特にシヤや、シヤママに持たせておこうと思っていたものだから、三回だけでも防げるなら絶対にあったほうが良い。
しかし、魔力を溜める方法がわからない。
「魔力を溜めるのってどうしたらいいんだ?」
「魔法を使えるもんなら誰でもできるさね。まあ必要になる魔力が多ければ多いほど、そいつの負担が大きくなるけどね。自分の魔力を使って魔力を溜めるんだから当然だね」
なるほど、つまり魔法を使えるやつがいないと、完全に使い切りになっちゃうわけか。使えるやつがいたとしても、魔力を温存しておかないといけない場合とかは、魔力を溜めてる場合じゃないってことか。
魔法を使える奴を仲間にするのを考えたほうが良いかね?
「あとは魔力を溜めるのを専門としている者がいるから、そこで頼むのが良いね」
「あ、そういうのがあるのか」
ならそこに頼めばいいかね。金はかかるんだろうけど、命を守る物に金をかけるんだから惜しんでる場合じゃないだろう。
「まあ魔道具の魔力についてはそんなもんだね。それで次は――」
それから他の魔道具に関しても説明してもらって、全て購入することにした。
金額はそれなりになったけど、まあ変えない値段じゃなかったし、シヤやシヤママの安全を考えると、買っておいて損はないだろう。
俺は買ったばかりのパイカウンターでパイ測しながら宿屋への道を進んだ。