24 納品
王女様に言われて強力な魔物ってやつを倒しに行ったんだけど、森の中で出会った龍さんは結構話せるやつだったので、王女様に紹介することにして、俺はアポクリに人化している龍を連れてきた。
「というわけなので、この龍さんを納品したいと思いまして」
魔物をどうにかできそうなので、王女様に報告させてほしいと連絡役の人にお願いし、王女様のところに案内された俺は、単刀直入に自分の要件だけを伝えた。
「いえ、あの、意味が分からないのですが、そちらの方はどちら様なのでしょうか?龍さん?でしたか?」
流石になんの説明もなしにいきなり龍さんを納品させてほしいと言っても、ロイヤルファミリーブレインでも理解できなかったようだ。当たり前だ。
「実は王女様の言っていた強力な魔物と言うのが龍でして、流石に私でも倒せないと思ったんですよ。でもですね、話してみると意外と話せる相手でしてね。だったら王国の切り札として住んでもらうのもいいのではないかと思いまして、こうして龍を連れて帰ってきたわけなんですよ」
俺の説明を聞いてぽかんとしている王女様。というか多分討伐対象が龍だってことはわかってたよね。誰かが目撃なり、戦闘なり下から強力な魔物ってわかったわけで、目撃でも戦闘でもあの姿で龍以外の報告になるとは思えないし。
王女様は俺が龍を倒せるような奴だと思っているんだろうか?まあ実際倒せないこともないとは思うんだけど。
「ということは、そちらの龍さん?は龍さんというお名前ではなく、龍なのですか?」
「そうなりますね。ご飯くれて寝床用意してくれるなら、いざという時力貸してくれるって言ってます。だよね?」
俺は龍さんに確認するようにそう言う。
「うむ。もちろんである。人間が襲ってくるのはめんどくさいので、人間が襲ってこないことも重要である」
住むとしたら王城付近か、もしくは王城の空いてる場所とかになるだろうから、襲われるなんてことはほとんどないんじゃないかと思うけどね。
「ええ、それでしたら、襲うような者もいないと思いますし、正体を知っていたら、そもそも襲おうと思う者がどれだけいるのでしょうかという話でもありますし。こちらとしてはありがたいお話なのですが」
本当に信用しても良いのでしょうか?って感じの視線をこっちに向けてくる王女様。まあそう思うよね。俺もそこ保証できるわけじゃないし。
「1度人間の国に住もうとしたこともあるそうなので、住める環境が整ってしまえばそこは問題ないと思ってます。王国に害をもたらすかどうかという点は、保証できかねますね。ただ、襲われない寝床が欲しいだけみたいなので、これを断ったとしても、王国から手出ししなければ龍さんから手出しすることもないかと。だよね?」
「そうであるな。別に人間は美味しくはないからの。魔物を食ろうた方が全然ましである」
「というわけなので、別にどちらでも構わないみたいですけど、どうしますか?」
王女様は少し考えているみたい。まあ龍だもんね。そうなるよね。
「そうですね、では、この王国で暮らして頂きたいと思います。先ほどの通りに、こちらからは寝食の提供、そして、求めるのはいざという時に力を貸してもらえるということ。これで良いでしょうか?」
「うむ。もちろん問題ないのである。襲われない寝床と食事があれば十分なのである」
「わかりました。ではそれでお願いします」
ということで龍さんは王国に住むことになった。
王女様曰く、断ったとしても同じ場所を寝床とするのであれば、国として手を出さないようにすると決めることはできますが、全員を制御できるかと言うと、また話が代わってしまうのだとか。
もちろん王家の人間や、信頼できる者に関しては問題ないが、王派ではなない派閥の貴族が勝手をして龍にちょっかいを出してしまう可能性が排除できないため、そのリスクを背負うくらいなら、囲っておいた方が安心できるとのこと。
既に龍がいたという情報は掴まれているだろうし、同じ場所にとどまっているのであれば、武勲を立てようと龍討伐に乗り出してしまうかもしれないので、龍がいなくなったという事実も欲しいとも言っていた。
まあ確かに人化してるから龍はいなくなってるもんね。
「ということですので、龍がいなくなったということを公の事実とするために、あなたがそれを成した人物であるとし、その功績を讃える場を用意したいのですが、良いでしょうか?」
さてさて、これはまた王様からなんか褒美がもらえるんだろうけど、正直お貴族さんに目を付けられるような状況になるのは遠慮したいなとも思う。
しかし、お金、お金なー。多分まだ必要になるよなー。
「ですが、貴族位などはいりませんので、できるだけお金になるようなものを頂きたいと思います」
「わかりました。私からお父様にそうお伝えしておきます」
これでこれからシヤ父の情報が見つかった時の旅の資金はなんとかなるかな?
「あ、それと、これは私からの依頼料です。お受け取りください」
「いえ、今回は以前協力して頂いた借りを返しただけですし」
「だめですよ。それは"断らなかった"時点で終わっているのです。成功報酬は別物ですよ。しっかりと受け取っておくのも、相手の面子をつぶさないために必要なことです。それに、これは今後とも良しなにという意味合いもありますので、受け取っていただきたいです」
これからも何か頼みごとをされる予定があるんだろうか。
「わかりました。頂戴しておきます」
というわけで大金貨で5枚ももらってしまった。
とりあえず当面の資金はこれだけでもなんとかなりそうだ。