2 奴はとんでもないものを盗んでいきました
俺は知らない場所に立っていた。見たことのない街並み。
周りには剣などを装備した人が行きかっている。
しかし、しかしだ。そんなことはどうでもいい事柄としか言えない。
過激だ。過激なのだ。過激な服装をした女性がたくさんいるのだ。
もう水着に近い恰好をしている女性が、当たり前のような顔をして外を歩いている。
こんなことがあっていいのだろうか?本当にこんな天国のような世界に来てしまって良いのだろうか?
しかし、何だろう。何か違和感を感じる。
俺が俺であって俺じゃないような、そんな違和感。
「そうだ。なぜ……なぜそんな恰好の女性がいるのを見ているというのに、俺のエクスカリバーはこうもおとなしいままなんだ……?」
99%が性欲と言っても過言ではないこの俺が、グラマラスが痴女さらして歩いてるような彼女たちを見て、どうしてエクスカリバーをカリバーしないでいられる!?
焦っていた。かなり焦っていた。まさかまさかまさか!
あいつは、あの女神は……俺の……愚息を……
本当にどうしたらいいのかわからない。これはきつい。何がきついのかって言うと、別にそういう気持ちにならないわけじゃない。
気持ちになるけど、息子は反応してくれない。刺激しても反応しない。「元気ねえな。大丈夫か?」と話しかけても反応してくれない。
今までは反応を返してくれていたのに。なんだか一人ぼっちになってしまったかのようだ。
だが、このままストックをため続けたら、俺はどうなってしまうんだろうか。
解消することもできず、そのまま朝起きたらとんでもない数の遺伝子たちと戯れることになるのだろうか。
それに、女神の言っていた特別な能力って言うのは何だろうか。
きっと何か普通じゃない力が備わっているはずだ。
俺もまるでRPGの最初期よろしく、初心者みたいな装備をしている。
とりあえず、街の外に出てみるか。
「はいやって参りました街の外」
とりあえず外に出てみたはいいけど、どこに行けばいいんだろうか。
それに自分がもらったという特別な能力のことも気になる。
「ん?なんだ?」
なんかそんなことを考えてたら、頭の中に自分が使える技の一覧が浮かんできた。
48の技を持っているようだ。そしてその全てに数字が書いてある。
「何々?燕返し、コスト2?なんだコストって。MP?マジックポイントのことか?」
よくわからなかったが、MPは今6たまっていた。
このポイントがあれば、俺は特殊な能力を使用することができるのだろうか。
とか考えてたら、なんか前からぶにょぶにょした奴がやってきた。
初心者用チュートリアル兵器、スライムである。
「よし、ちょっと試してみるか」
剣を抜いて構え、先ほど見た一覧の中の技名を口にする。
「燕返し!!」
すると体が勝手に動き、剣が上段から振り下ろされ、跳ね返るように上へと振り上げられる。
今までしたこともないような動き。それにこんな動き自分でやろうとしてもできるもんじゃない。
それに威力がスライムに使うべき威力ではない。
今、俺の目の前には裂けた地面が広がっている。結構向こうの方まで続いてる感じで。明らかにオーバーキルでしょこれ。
スライムはなくなってしまった。死んだとかそういう意味の亡くなったではなく、本当に跡形もなくなってしまった。
「え゛ぇ゛!?」
日曜日も終わりだなと思わせる、あの国民的アニメのあの人みたいな驚き方で驚いてしまった。
何に驚いているかと言うと、別にスライムをオーバーキルしてしまったことに対してではない。
いや、確かにそれに対しても驚いてはいるが、それよりも、なんだかスッキリしている。
とても清々しい気持ちになっている。まるで、そう、まるで賢者タイムのような感覚。
これはどう考えてもやりましたわ。一応ズボンの中を確認してみる。
うん、大丈夫。よかった。べちょべちょになってるかと心配になったけど、大丈夫。
能力を使用して、スッキリした気分になったということは、つまりそういうことなのだろう。
たぶん、俺の能力のコストが、あいつらということなんだろう。おそらく、コスト2とは書いてあるが、単位は億。2億の遺伝子を消費しているのであれば、あの威力も納得ではある。
性産者である俺と、能力と言う性費者。この関係が出来上がっているのだろう。
「てことは俺はムラムラしたら能力を使用しないといけないのか?しかも、能力使用しないといけない場面までに溜めておかないといけないのか?あ、でも俺、不能になったんだった」
俺はこんな世界に来れたらいいと思っていた世界に、とんでもない能力と代償をもらってきてしまったようだ。ほんと大便召し上がれだ。