19 おっぱいに刻む
俺達は盗賊を乗せた馬車を冒険者ギルドの前に置いて、受付嬢さんに盗賊を持ってきたことを報告していた。
「すみませーん、盗賊持ってきました」
「はい、盗賊はどちらでしょうか?」
「前に馬車が止めてあるんですけど、その中に乗ってます」
「確認しても良いでしょうか?」
「大丈夫です、お願いします」
受付嬢さんが他の人に指示出して、ギルドの外に出ていった。多分馬車を確認しに行ったんだろう。
「本当に盗賊を討伐してきたんですね。驚きました。あなたのランクはFでしたので、そのランクで盗賊と戦うなんてしないと思っていました」
「あーそうですね、冒険者ギルドは登録してから全然依頼とかしてなかったので。冒険者そっちのけで修行に明け暮れてましたからね。急でお金が必要でしたので」
「そうだったんですか。あ、すみません」
受付嬢さんのところにさっき出ていった人がやってきて何やら話している。何かあったんだろうか?
「え!?あ、はい、わかりました」
受付嬢さんに何か話したらまた外に行ってしまった。
「すみません、お待たせいたしました。お金が必要だということであれば、身柄もこちらに渡して頂けると思って良いでしょうか?」
「はい、できれば一番お金になる方法が良いです」
「わかりました。では、まず、盗賊に関してですが、全員生きたままですので、身柄引き渡しで1人当たり金貨1枚になります。12人いましたので、大金貨1枚と金貨2枚になります」
結構お金になるんだな盗賊って。これからも見つけたら積極的に生け捕りにしていくのが良いかもしれない。
「そして、1人手配されている盗賊が射ました。懸賞金として、大金貨3枚になります」
「え?」
目の前の受付の台に袋が置かれる。
「ですので、こちらが全部で大金貨4枚と金貨2枚のお支払いになります。よろしいでしょうか?」
「あ、はい」
なんとも気のない返事になってしまったが、懸賞金までもらってホクホクな感じになってしまった。
これでシヤの母親をモッコーリ男爵から開放することができる。
俺はお金を受け取って、冒険者ギルドを後にした。
「すみません、モッコーリ男爵に会いたいんですけど。言われた金額稼いできたので、シヤの母親を開放してもらいたいんですけど」
「少々お待ちください。確認いたします」
冒険者ギルドを出てから、さっそくモッコーリ男爵家まで来ていた。
さっさと開放して再開させてやりたいと思ったからだ。
「ほう、もう稼いできたのか、大金貨5枚を」
「は?」
こいつ今大金貨5枚って言ったか?
「大金貨2枚と言っていましたよね?いきなり3枚多くするのはいくら何でもおかしいのでは?」
「なんだ?逆らうのか?」
「いえ、ではこちら大金貨5枚になります」
手持ち分とさっき稼いだので何とか足りていたのでそれを出した。
「おっと、間違えたか、大金貨6枚だったな」
「……」
「ふざけないでください!!」
「シヤ」
シヤが暴走しそうだったので、俺はたしなめるような口調でシヤの名前を呼んだ。
「すみませんでした、金額が足りそうにありませんので、また改めさせて頂ければと」
「仕方がないな。さっさと帰れ」
悔しい思いはあったが、とりあえずその場は帰ることにした。
「なんでですかご主人様!!」
「なんでって、あの態度からして開放する気がないの丸わかりだろ」
「だったらあの男爵を――」
「滅多なことは言わない方が良い。俺達が狙われるならまだ何とかなるかもしれないけど、シヤの母親が狙われたら流石に助けられないと思うぞ?それに、そんな方法じゃ完全にお尋ね者になるしな。そうしたら今度は父親の捜索にまで影響してくる」
「……申し訳、ありません」
「口約束でしかなかったからな。ちゃんと契約書なり書いてもらっとくんだったな。悔しいとは思うけど、一度アポクリに戻ろう。そして、口約束だったけど、約束は守ってもらおうか」
「何かお考えがあるのですか?」
「考えというか、もう土下座するだけっていうか、権力に頼ろうかなって」
土下座しよう。全裸で土下座すればきっと力になってくれるんじゃないかな。なってくれるといいな……。
こうして、母親を見つけられたのに、母親を連れ帰ることができないというなんとも情けない結果となって帰ることになったんだけど、もう少し、ちゃんと考えて行動できるようにならないといかんという教訓として、おっぱいに刻んどきますかね。