18 世の中ね顔かお金かなのよ
お金を稼がなければいけなくなってしまったので、この辺で手っ取り早く金を稼げる方法はないかと考えてるんだけど、良い案は思いつかない。
地道にやってくなら冒険者として依頼を受けて金を稼ぐのが良いんだろうけど、ランクが低い俺がそんなことをしていたら、その金額を稼げるのがいつになるかわかったもんじゃない。
さて、どうしたものかね。
「どうしたらいいですかね。完全に最初の1歩目で躓いてますよねこれ。受付さんどうしたらいいと思います?」
「そうですね。まあ地道に頑張るしかないんじゃないですかね?」
「そうなっちゃいますよね。最初の1歩目で沈没ですか。ってことは沈歩ですね」
「あの、少し黙ってもらっていいですか?」
「少しだけですよ?」
「なんで私が許可してもらってるみたいな感じになってるんだろう……」
俺は冒険者ギルドのお姉さんとの会話を楽しみながら、一応頭の中でどうしたもんかと考えていた。
しかし本当にどうしたもんかね。一気にお金が手に入るような何かってないかね。
「そういえば、近くに盗賊がいるようなんですけど、その盗賊を討伐すれば、依頼を受けるより稼げるんじゃないですかね?」
「それだ!!どの辺に出るんですか!?」
俺は近くに出るという盗賊を狩ることにした。盗賊は狩ればそれだけで報酬がもらえるし、それに、生きたまま渡せば労働力として役立たせることができるため、更にお金になる。これは普通に依頼を受けるよりも断然稼げそうな感じがして良い。
というわけで、盗賊がいるってところまで馬車でバビューンと来てみました。
「わーぱちぱちぱちー」
「大丈夫ですかご主人様?あ、いつも大丈夫じゃありませんでしたね」
シヤが容赦ない。
「俺はいつだって普通だろう。俺が普通じゃなかったら世の中がくるっているとしか考えられない」
「いえ、ご主人様は普通何て言うちっぽけな枠に収まる方ではありません」
俺は普通には収まれないそうです。普通じゃない奴でしかいられないそうです。
「なんだぁ?お前たちは?」
「俺か?俺は変態だ。それ以上でもそれ以下でもない。純粋な変態だ」
「は?」
「お前では理解できないか、この領域の話は」
盗賊っぽい恰好の知らない男と話していると、なんかわらわらと後ろから同じような装いの奴らがやってくる。
「おいあんた。金目のもん置いていきな。なにわるいようにはしねえよ、金目のもんさえ置いていけばな」
なんか群れの中で一番強そうなやつが俺にそんなことを言ってきた。
「金目のものはないが、金のつくものだったら2つほどもっているな」
「ほう、じゃあそれを寄こしな」
「あげられるものじゃないんだ。というかお前らも持ってるだろうが」
「あ?何の話して……」
「わからないのなら見せてやろう」
――カチャカチャ
俺はズボンとパンツを一気にずりおろした。
「な、なにやってんだお前!?」
「ナニやってんだだと?お前らがわかっていないようだから、現物を見せてやろうという俺の親切心だろう。少しは感謝したらどうなんだ?」
「いや、躊躇しろよ!きたねーもん見せんな!そんなもん見せられて感謝してる姿とか周りが見たら完全におかしい奴だろうが!!」
「ほう、それくらいの常識は持っているみたいだな」
「常識持ってない奴が何偉そうに常識語ってやがる!!良いから金目のもんをおいていけ!あと、その女もな!!」
「お頭!やっちまいやしょう!!」
「お前達じゃ相手にならねえ、俺がやる」
そう言ってお頭が手に持っている剣を抜いて俺に切りかかってくる。
しかし、俺だって毎日厳しい修行を続けてきたのだ、そのくらいは簡単に避けられる。
後方に跳び、振り下ろされた剣を避ける。
「俺はお前たちを狩りに来たんだ。安心しろ、死なせはしない」
俺は腰に帯びている新しい武器を鞘から抜く。これは俺が修行していた"下一刀流"の師範から譲り受けた刀である、"奇剣珍包"だ。刀身を現したそれを、股間の前に構え、刀身を上に向ける。
しかし、この奇剣珍包は刀身がふにゃふにゃしているため、ふにゃっとして横に曲がって剣先が地面を向いてしまっている。
この奇剣珍包は、持ち手の部分を摩擦することで刀身が硬くなるという特殊な剣だ。しかし、硬さは抜群なので愛用している。
股間の前に珍包を構え、基本的には左手で刀全体を支え、右手は持ち手の部分を上下にこすって摩擦し、刀身がたった。
「お前らは俺には勝てない。行くぞ、下一刀流、双頭弧!!」
俺の下一刀流の技がお頭の持つ剣へとさく裂する。一気に間合いを詰め、最初は振り下ろし、それは剣でガードされ、俺の剣は地面を叩く、がそのまま上に跳ね上がり、斬り上げが剣にさく裂する。
俺の双頭弧を剣に食らったお頭は剣を弾かれる。俺は得物を失ったお頭の股間に容赦のない蹴りをぶち込む。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
玉ヒュンするような悲鳴をあげ、この世の地獄を感じているような顔で地面をのたうち回るお頭。
それもそのはずだ、俺の足には柔らかな感触がいまだに残っている。これは男として我慢できる類の痛みではないはずだ。
「ぐ……ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……!!」
なんか息が詰まったような感じの悲鳴に変わってきた。
「ブクブクブクブクブクブクブク」
あ、泡ふいて気絶した。
「や、やべえ、お頭がやられた……」
「お前達も逃がさん。下一刀流、乱れ先走り!!」
珍包から白い何かが飛び出し、残りの盗賊達に着弾していく。盗賊達は情けない悲鳴を上げて倒れていく。
「割とあっけなかったな」
「流石はご主人様です」
とりあえずこいつらを亀甲縛りで縛って、馬車に乗せて持って帰ろうか。