17 モッコーリ男爵
ムァクナイに到着した俺達は、まず冒険者ギルドに行くことにした。
聞いている情報では、このムァクナイを納めているモッコーリ男爵のところで奴隷として働いているとのことらしいのだが、それが本当にシヤの母親なのかが問題だ。
「すみません、モッコーリ男爵に会いたいんですけど、会うことってできますかね?」
「そうですね、難しいかもしれません。基本的に冒険者ギルドともあまり関わり合いがありませんし、そもそもあまり関わりたくもないですし」
「あ、そういう感じの人なんですね」
「はい。平民はみな貴族のためにいるみたいな考えの方なので、正直いけ好かないですね。あ、この話誰にも言わないでくださいね?」
「ああ、君と僕だけの特別な秘密だね」
「いや気持ち悪いのでやめてください。別にどうしても秘密ってわけじゃないですけど、できればめんどくさいことになるので黙っといて欲しいだけです」
受付のお姉さんが俺を恨めしそうに睨む。ゾクゾクする。
まあ最初から言いふらすつもりなんてないんだけどさ。
「もし言われたらあなたがそう言っていただけで私はそんなの一言も言ってませんでしたって証言して、知り合いの冒険者にも手を回します」
おい、この受付さんかなり質悪いぞおい。
「言わないのでそれはやめてくださいお願いします。それより、モッコーリ男爵に会う方法、何かないですかね?」
「そうですね、外で騒いでれば出てくるんじゃないですかね?」
外で騒いでれば出てくるのか。まあいいか騒いでやろうじゃないか。得意分野だ。
「てぃんぽおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺はありったけの大声で男爵家の前で素敵ワードを叫んだ。
使用人さんがこちらを見て目ん玉をひん剥いている。警備担当の人がこちらに武器を抜いた状態でかけてくる。
あ、これだめな奴じゃん。不届きものでひっとらえられちゃう奴じゃん。
「てぃんぽおぅおぅおぅおぅおぅおぅおぅおぅおぅおぅおぅおぅおぅおぅ!!!」
ビブラートを混ぜてもう一撃放ってやった。
「うるさいぞ貴様ぁ!!なんのつもりだぁ!!」
なんか小太りの形容しがたいんだけど、たぶんもっこーりした感じのちょっと偉そうなやつが出てきた。
「ティンぽてぃんぽうるさいぞ貴様!!」
周りの使用人たちはモッコーリした感じの人に頭を下げて静止している。
「あなたがモッコーリ男爵ですか?」
「いかにも。わたしがモッコーリ・タッタ・ティムポだ」
もっこり勃ったてぃんぽ?え、やばくない?名前やばくない?
「ここでアルナさんという奴隷が働いているという聞いたんですが」
「アルナ?そのようなやつおったか?」
近くのメイドに確認するモッコーリ。まあそんだけ使用人いたら知らない奴もいるもんなのかな?
「はい、メイドとして働いております」
「シヤ!!」
その時シヤを呼ぶ声がしたのでそちらを見てみると、シヤに似た感じのメイドさんがいた。
「お母さま!!」
シヤもお母さまとか言ってるし、間違いないんだろう。さて、どうしたもんかね。
「ほう?大方母親を探しに来たというところか。ならば面倒な話はせず単刀直入に言おう。大金貨2枚で譲ってやる。貴様ら平民に稼げる金額ではないと思うがな!!」
今の所持金が1枚半だから、足りないわ。まるで狙ったみたいな金額だけど、別に俺の事調べてもどうしようもないから狙ってその金額ってことはないだろう。
「わかりました。稼いできますので、稼げましたらまた伺わせて頂きます」
「たのしみにまっておるぞ」
今日は半ケツデイだったので、後ろから俺を見たメイドさんたちの悲鳴を背に、俺達はその場を後にした。
俺は冒険者として活動し、金を稼ぐことにした。