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俺のセイケンはヌけない  作者: さんいちぜろ
15/31

15 マカリ到着

 俺達はマカリという町に到着していた。

 盗賊の襲撃は、町付近での1度だけだった。近くにアジトでもあるんだろうか?


 シヤがギルドから得た情報によると、母親がいるかもしれない場所は、ここマカリから170キロほどの場所であるムァクナイという場所なのだが、俺達がいたワキゲコーイ王国王都であるアポクリから直接そこまで行く馬車はなかったため、近くに行くものに乗ることにした。

 既に、ここまででも120キロほどの道のりで、乗った馬車も急ぐような馬車ではなかったため、4日ほどかかっている。

 場所としてはビルトンと言う町の方が近いのだが、そこからはムァクナイまでの道が整備されていないため、馬車は走っていない。


 俺達は、とりあえずマカリでムァクナイまでの馬車があるかを確認することにした。

 とりあえず何か聞くなら冒険者ギルドだろうと思い、マカリの冒険者ギルドを探すことにした。


「しかし、4日間の馬車の旅は結構しんどいな。ケツにくるし、揺れるし。まあケツは俺の場合どうでも良いんだけどさ」


「そうですね。ですが、ここから馬車に乗るのであれば、今回よりも長い馬車旅になると思いますので、少々気分が憂鬱になりますね」


「本当にそうだな……お?あれか?」


 アポクリで見た冒険者ギルドと同じような建物がある。

 入ってみると、やはり冒険者ギルドだったようで、受付嬢さんのところに行ってみる。


「すみません、ここからムァクナイまで行く馬車ってありませんか?」


「ムァクナイまでですか?少々お待ちください」


 受付嬢さんが、何か資料みたいなのを確認してくれてる。

 あるといいんだけどなー。おっと、なんかチンポジ悪いな。

 俺が腰を左右にフリフリしていると、受付嬢さんが戻ってきた。


「お待たせしました。あるようです。乗車する枠のあるものも護衛依頼を出しているものもあるようですが、どうされますか?」


「護衛の依頼は多分冒険者のランクが足りないと思うので、乗車できる方にしたいんですけど」


「わかりました。一番早いもので明日のものがありますが、それでよりしいでしょうか?」


「はい」


「では、代金として1人銀貨1枚と大銅貨3枚とギルドカードの提示をお願いします」


「じゃあこれで2人分とギルドカードです」


 俺は持っていた銀貨3枚と自分のギルドカードを渡した。


「では大銅貨4枚のお返しです。朝の出発になりますので6時までに北門に行くようにしてください」


 とりあえずこれで明日馬車に乗ってムァクナイまでの旅が始められそうだ。


「わかりました。ありがとうございます」



 俺達は、冒険者ギルドを後にして、宿屋を探していた。

 1階が酒場になっているよさげな宿屋があったので、そこで泊まれるか聞いてみたら大丈夫だったからそこにした。

 とりあえず腹減ったので、シヤと一緒に1階の酒場で飯を食うことにした。


「とりあえずムァクナイまでの馬車が見つかってよかったな。これで歩かなくて済む」


「色々と、ありがとうございます」


 何だろうこの感じ。シヤがすごくしおらしいんですけど。そりゃね、あと何日もすれば母親に会えるかもしれないってんだからうれしい気持ちもわかるんだけどね?今一緒にいるの俺よ?そんな隙だらけで大丈夫?隙あらば変態かます俺のそばでその隙だらけな状態は大丈夫?

 とりあえずシヤの隣の席に座ってお尻をなでてみる。


「あの、ご主人様。この手は何なのでしょうか?」


「愛、じゃないかな?」


 ――グキッ


「アハンッ!ちょっと何すんのよ小娘!!」


「なんでそんな気持ち悪い口調なんですか!!というか手首ひねったのになで続けないでください!!ちょっと!!」


「よいではないかよいではないか」


 おや?シヤがどんどん静かになってく。ふっ、俺のテクニックに溺れて――


「なんで……ひっく……いつもそうやって……グスッ……ふざけるんですか……」


 え、うそ、やべ、なにこれ泣いてるじゃん、ナニコレ。


「……すみません。でも、感謝してるんです。3年も、3年ですよ?私の親を探し続けてくれて、それに、私は不自由な思いをしたこともありませんし」


 あー、確かにシヤに頼んだことって、「シヤの親の情報どうなったか確認してきて」とか「何か美味しそうなものでも買ってきて」とかしかなかったかもしれない。


「そもそも、他の人に買われていたら、親を探すどころか、今頃は誰かへ奉仕するだけで毎日が終わるような生活を送っていたと思いますし。親を探すなんて絶対にできなかったと思います」


 まあ、そうかもしれないよな。そういえばシヤ奴隷だもんな。


「それが今は、親を探し続けてもらって、母親かもしれない情報を見つけてもらって、そこまで連れて行こうとしてくれてるじゃないですか。そんなの……そんなの感謝しないわけないじゃないですか!私は……あんなこと言いたかったわけじゃ……ないのに……いつも……グスッ……」


 さて、どうしたもんかね。感謝とか言われても俺が感謝の気持ちとしてやりたいと思ったことなんだし。


「シヤが感謝してくれてるのは痛いほど伝わってきたし、嬉しいんだけどさ、でも俺がシヤに救われたからやってることなんだよね。俺が魔族を殺した時、あれがさ、俺の中では本当に辛くてさ、怖くてさ、何が何だかわからなくて、頭ぐちゃぐちゃでさ、何をどうしたらいいのかもうわけわかんなくてさ。でも、シヤが傍にいてくれて、抱きしめてくれて、すごく救われたんだよね」


「それは、私はご主人様の奴隷ですから」


「うん。でも奴隷がああいう対応をしないといけないってわけじゃないよね。シヤだったから救われたんだよ。シヤがああしてくれなかったら今頃俺は折れてただろうしね。今のこの状況があるのは、シヤが人のために行動できる人だからだと思うよ。だからそんな感謝されるようなことじゃないんだよ」


「でも――」


「辛い!自分を救ってくれた人の泣き顔はここまで心にくるのか!……まあ、あれだよ。男っていうのは単純だからさ、こんな恥ずかしい事言ってかっこつけた奴は『ご主人様!かっこいいです!』とか言っておだてとけばいいんだって」


 俺がそういうと、シヤは涙を拭って俺をおだててくれた。


「ご主人様!かっこいいです!」


「ふっ、だろ?」


「「ふふっ」」


 俺達はどちらともなく笑いあった。

 多分少し、シヤとの距離が近づいた気がする。

 そしてやっぱり、シヤを大切にしたいという気持ちは本物だと、そう確信できた。

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