死んでしまった"玲奈"
突然、気が付いた。
「(あれ?私どうなったんだっけ)」
周りを見ようと顔を上げると、そのままゴロンと後ろに倒れてしまった。目を回したのか視界がぐるぐる回り、何が何だか分からなくなる。
「うっ、うわぁぁぁん!!」
あれ、これ誰の泣き声だろうと疑問に思っていると突然視界がが高くなる。驚いた時には私は誰かの腕に抱えられていた。
「大丈夫ですよ〜。よしよし。いい子ね、″玲央″」
″玲央″…??
降ってきた見覚えの無い名前に首を傾げる。
しかし次の瞬間、ブワッと記憶が流れ込んできた。
『ねえ結莉愛 。私、生まれ変わったらSuper Manとと同じ事務所に入ってアイドルになる!!』
『いいじゃんそれ!でも玲奈だけじゃ心配だから、私も付いて行ってあげるよ 』
『ありがと!二人で同じグループに入ってキラキラしよう!! 』
『もちろん!頑張ろう! 』
″私″はその直後から全く記憶が無い。
というかこの幼児の身体は明らかに″玲奈″ではない。
「玲央、泣き止んだか?」
「ええ。後ろにひっくり返っちゃってビックリしたみたい。お転婆ねぇ」
「男の子ならそのくらいが丁度いいだろう」
「ふふ、そうね」
″玲央″を慈愛に満ちた瞳で見つめる″玲奈″の知らない男女。
流れ込んで来た記憶と照らし合わせると、この人達は″玲央″の両親だ。東京の高級住宅街に住む、会社の専務と専業主婦。
「(めちゃくちゃなお金持ちじゃん…)」
このリビングだってものすごく広いし、天井も高い。大きなガラス窓から暖かい日の光が差し込んでぽかぽかしている。まるでCMでよく見たモデルハウスだ。
「(てことは、″玲奈″は…多分死んじゃったんだよなぁ。何でかは分からないけど…)」
志半ばとはこの事だ。
両親や結莉愛はどうしてるだろう。大好きな彼氏も置いて来てしまった。そう思ったが最後、幼児の涙腺は脆く、いとも簡単に涙が溢れてしまう。
「うぇぇぇん!!!!」
「あらあら玲央。よしよし、お母さんがここに居ますからね」
ここまで来て初めてさっきの泣き声は自分だったのか、と自覚したのだった。