表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来世のファンサ  作者: REI
ー研究生編ー
1/2

″玲奈″という人間

私、山下玲奈(やましたれな)はイケメンが大嫌いだった。

良いのは顔だけ。中身は全くイケてない。顔も中身もイケメンなんて都合の良い人間は二次元にしか存在しない。そう信じて疑わなかった。


そりゃあ最初からそんなことを思ってたわけじゃないし、私にも好きな芸能人が居た時期があった。


しかし、ことごとく裏切られて来たのだ。


まず小学生の頃好きだった俳優は不倫で干され、その次に好きになった俳優は薬物乱用で逮捕。

身近でも学校一のイケメンだった人は二股をしていたらしいし、当時仲良くしていた友達もなかなかカッコいい彼氏が居たが、彼氏の浮気で別れたという。

興味の無い俳優やアイドルでも未成年と飲酒やらなんやらで次々と干されていく様をずっと見て来た。


結局顔が良い奴はチヤホヤされて、すぐ調子に乗ってやらかす。イケメンなんてクズばっか。

だから好きな芸能人なんて一生出来ない、と思っていた。


あの人達に出会うまでは。


こんなイケメン嫌いの私だったが、一番の親友である城戸結莉愛(しろとゆりあ)はイケメンアイドルが大好きだった。


遊びに行く度にどこからともなく好きなグループのコンサートのDVDを取り出し、ちゃっかり私に見せていた。そんな事が何年も続いたけど、私は決してハマらなかった。


確かにカッコいいとは思っていた。口パクかと思いきやちゃんと歌ってるし、それでいて上手い。ダンスもキレキレだし、MCも面白いからファンじゃない私も気が付けば笑っていた。DVDで歌ってた曲を気に入ってCDを貸してもらった事もあった。


でもハマらなかった。

今思えばまた不祥事で裏切られるのが怖くて、きちんと顔を見てなかったんだと思う。


でも、結莉愛はいつも楽しそうで。私も好きな芸能人が居たら毎日がもっと楽しくなるのかなって、ずっと羨ましかった。


そんなある日。いつものように結莉愛の家に遊びに行くと、いつもとは違うグループの映像を見ていた。聞けば新しく好きになったグループで、まだデビュー前の研究生だというが、次の年にめでたくデビューが決まっている。今のイチオシらしい。


彼らの名前は「Super Man(スーパー マン)」。

アイドル研究生として結成された九人組のアイドルグループ。


彼ら、Super Manとの出会いが私の人生、いや来世に渡って運命を大きく変えていくことになる。


それからというもの、結莉愛の家で見る映像はほぼSuper Manに変わった。前見てたグループが冷めたわけではないが、今はこっちらしい。

そのうち、私は無意識にきちんと顔を見るようになった。何故かは自分でもあまり分からないけど、多分期待したかったんだと思う。

彼らはまだデビュー前。それに加え、長年研究生を続けて来た人達だ。自分達の後輩が次々とデビューしていく背中を見て来たし、不祥事で干されていく姿も飽きる程見ただろう。


そんな彼らが血のにじむ程積んだ長年の努力を、一時の軽率な行動で水の泡にする可能性は低い。


「(この人達なら、信じていいのかな)」


そこからはまるで何かのスイッチが押されたように早かった。正真正銘ストン、と音を立ててSuper Manに落ちたのだ。ちなみに推しメンは黒田蓮之介(くろだれんのすけ)君。通称(れん)くん。

一番最初にSuper Manを見た時からカッコいいな、と思っていたけど本格的に落ちてからはますます輝いて見えた。


その頃から私の中で、今まで経験した事の無い″少しよく分からない感情″が芽生え始めた。


しかしそれは初めてコンサートに当たり、Super Manのパフォーマンスを生で見てハッキリと鮮明に自覚した。


キラキラと輝く笑顔。

気持ちのこもった歌。

ファン一人の顔も見逃すまいと真剣に向き合う姿。


「私は、この人達に憧れてるんだ」


憧れ、とは理想とするものに強く惹かれること。

歌って、踊って、一人一人と向き合って。

皆に夢と希望と憧れを与える。


そんなアイドルに、私はなりたい。


…と、自覚したはいいものの、私には人を惹き付ける美貌も、美しく響く美声も、高い身長も素晴らしいスタイルも、しまいにはパフォーマンスに必要な身体能力すらも兼ね備えて無かった。


ちょっと頑張ればナンパくらいはされるかな、って感じの普通の女子。それが私だった。

一応、彼氏は居るし別に芸能人のような美人になりたいという願望もこれといって無かったけれど。


そもそもSuper Manの所属するアイドル事務所は基本的に男子のみ。女子はどんなにスペックが高くても入れない。


だから私は賭けたのだ。


「来世は必ず男に生まれ変わって、Super Manと同じ事務所に入って、国民的スーパーアイドルになってみせる!!」


そう、強く誓った。


Super Manが私に与えてくれたように、私も皆に希望を与えられるそんなアイドルになりたい。

もちろんファンを裏切るような事は絶対にしない。


だから神様、お願いです。


完璧な人間にしてくれ、だなんてそんな贅沢は言いません。


精一杯努力します。頑張ります。

絶対に夢を諦めません。だってSuper Manの皆も、沢山悔しい思いをして、それでも必死に夢は叶うとを信じて頑張って来たのだから。


どうか、私を…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ