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9. 腐女子と騎士と妹

今回は短め。

「ひ、酷い目にあいました…」


涙目で私を睨む妹。べそをかいているような顔が可愛い。

訴えるような視線をさらりと無視して、私は泉から水を汲んで地面に置いた。

待機していた青い芋虫が中に入り、浄化を行う。

その光景を食い入るように見つめていた妹に、浄化水を渡した。


「浄化…。こんなことまで…」

「大丈夫かと思ったが、スキャンしたところ問題はなかった。もっとも、私の場合は有毒でないことくらいしかわからなかったが、エレンならわかるだろう?」

「はい…。すごい、綺麗な水です」


受け取った肩当の中を確認すると、妹は感心したように呟いて口をつける。

躊躇いないその様子はいっそ潔い。


上品な仕草でこくこくと水を飲み干すと、彼女は顔を上げて私を見た。


「ありがとうございます。あの、もう一杯頂けますか?」


頷いて再度浄化水を作って渡すと、妹はまた礼を言って水を飲んだ。

両手で持って飲む仕草が可愛らしい。そういえば、歳はいくつくらいなんだろう。

写真で見るより大人っぽいが、まだまだ顔はあどけなく、10代前半といったところだろうか。「ご馳走様でした」と丁寧にお辞儀する様は、育ちの良い家庭で育った箱入り娘のようにも見える。


くぅ。

考えていると、目の前の少女が腹の音を鳴らせた。

そんな音まで可愛らしい。何より、「あ…!」と恥ずかしそうに頬を赤くした少女に(もだ)えそうになる。異世界の妹ってこんなに可愛いのか。前世の私の妹は、腹が減ったら食事をよこせと私に飛び蹴りかましてくるようなイキモノだったが、大違いだ。


「エレン、これを」

「ありがとうございます。でも、お姉さまの分は…」

「私のことは気にしないでいいから」


そう言って、女騎士がポーチの中から取り出して妹に渡したのは、携帯食料だ。


「でも…」

「身体の調子が万全ではないせいか、お腹が空かないんだ。もう少し休めば動けるようになるだろう。そうしたら、何か食べ物を探すよ」


遠慮する妹を安心させるように微笑むと、少女はこくりと頷いて携帯食料を食べ始めた。

ちまちまと食べている様子がまるでリスのようで可愛い。


それにしてもご飯か。

色々あったせいで忘れていたが、私と違って彼女たちに食事は必要不可欠だ。

特に二人は大怪我をしていたわけだし、今は良くても身体が栄養を欲するだろう。


…そういえば、泉の魚を捕ろうとしてたんだっけ。


はたと思い出して、池へと視線を向ける。

覗き込んでみると、魚は大小さまざま沢山いた。

これだけいれば、食糧の問題は解決だ。

毒などの問題があるが、水の件もあるし、青い芋虫に頼めばなんとかなるだろう。


問題は、どうやって魚を捕るかだ。

二人に協力してもらえば魚を捕えることはできそうだが、今の彼女たちには酷だろう。


そうなると私だけでどうにかする必要があるのだが、でもどうしよう。

考えていると、ふと女騎士の鎧が目に入った。

その中の一際大きい鎧の一部。上半身に着ける鎧だ。

最初に挑んだ時、鎧の肩当を使い、泉の外から魚をすくおうとして失敗したのだが、これを使ったらどうだろうか。


ふむ、と一人頷いて早速試してみることにした。

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