壊れた眼鏡
途中でラム視点に変わります
少し落ち着いたので戻ることにしましょう。眼鏡壊れてないでしょうか。
壊れていないことを願いましょう。
「君…」
ん?誰でしょうか。後ろから声がしました。後ろを振り返ってみるとキラキラとしたオーラを放った男子生徒が立っていました。
ネクタイが紫色なので多分一年ではないと思うのですが…。
「…君の名前を教えてくれないか…?」
いきなり名乗れと言われました。私の名前を聞いたところで何も無い気がするんですが、まあ、答えましょう。
「私の名前は立花すみれです」
私がそう答えると、彼は「立花すみれ…立花すみれ…、よし、覚えた」と呟いていました。
なんかこの人怖い…。
「僕の名前は深っ…ちょっと待ってよ!」
なんとなく身の危険を感じたので逃げることにしました。
クラスの人達も心配しているかもしれないし。
私は教室に戻ることにしました。
◇一方その頃(ラム視点)◇
転入生が皆の質問攻めを受けて、逃げてしまった。すみれ…さんといっただろうか。
10年に一度の転入生と聞き、どんな生徒が来るのかと思っていたけど、来たのは地味目な女の子だった。
逃げたときにすみれさんがドアにぶつかって眼鏡を落としていた。そして眼鏡が壊れた。でも、不自然なことがあった。眼鏡を外した瞬間に髪ゴムがほどけた。眼鏡が壊れたのは仕方ないにしても髪ゴムがほどけるのはおかしい。…いや、消えた。無くなったのだ。彼女は一体…。
僕がそう思っていたとき、いきなりレイン先生が「…黙れ」と言ったこの先生は少々口が悪い。悪い人では無いんだけど…。
あの隠している片目が気になって仕方がないのは僕だけだろうか…。そして銃はいい加減持ってくるのをやめた方がいい気がする。
この前、年増アリスに怒られていた。年増アリスとは僕が裏で呼んでいるニックネームで、1年C組の担任になっていた。本名はアリス·リー·フレイア。
自分の魔術でずっと20の時から自分の成長を止めている年齢100歳越えの先生だ。
実年齢が分からない。一体何歳なんだろう。
…話が逸れた。
「…転入生の立花は、ちょっと…質の悪い魔術持ちでな。魔術を言うことはまだ出来ないんだが、本人にはまだ知らせていないんだ。知らせると……」
知らせるとなんだろう。と言うか質の悪い?それを知らない?それは大丈夫なんだろうか。いや、レイン先生は知っているのか。
「先生は転入生の魔術を…」
「知っている」
やっぱり知っているのか。
「立花には色々事情があってな…。それを立花は知らないが、少し落ち着くまで…魔術の事は伏せておくことにしたんだ。そして今…立花は魔術が使えない…。魔術停止の術がかけられているからな。でも立花は…学園に通うことになっている。そこのところ…理解してほしい」
そんなに危ない魔術?事情とは?でもこの学園で実力も何もなしに特別扱いって…本当にすみれさん一体何者なんだろう…。
「そんなのおかしいだろうが。いきなり転入生が現れて事情があるからって魔術使えないのにここに通うって。なにもできないのに特別扱いかよ。ただでさえ逃げたのに」
無性に僕の幼馴染みをシメたくなった。こいつイラつくわ。
「お、落ち着いて…レンにいっちゃうよ?」
真冬が止めてきた。お兄様の名前を出すのはひどいと思う。
そもそもこいつ高等部だし。
どうしてかお兄様につけられてしまった。と言うか執事なら丁寧な態度をとろうよ。せめて形だけでも。いや、こいつ執事じゃなかった。
こいつはお兄様の親友だ。いつの間にか愛里理事長にも許可をもらっていた。本当にあの人はなんだかんだいいながらもお兄様に弱い。
無自覚みたいだが…。あ、あれ…執事はこっちの影うすだった。危ない、忘れかけてた。一応幼馴染みなのに。暖が僕をジトッと見ていた。気まずくなって目をそらした…。
と、とにかく、なにかあったらお兄様に言わなくてはならないらしい。お兄様の前ではいい妹で居たい。
僕は臨也をシメるのはまた今度にしようと思った。辺りを軽く見渡していると、
え…?
僕は見てしまった。すみれさんの壊れていた眼鏡が元に戻っていく瞬間を。
気づいたら、壊れていた眼鏡は破片も残らず綺麗になおっていた。
これは一体…。
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