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原始人(?)な俺とお金持ちのお嬢様  作者: ねこ丸
第一章
8/19

度を超えたお金持ちは、友達が居ない、だが

俺は何とか、昼休みまで学校で無事に生活を送れた。

朝の委員長、藍子の言葉のおかげで、質問が一回の休憩につき、3個程度だったからだ。



ただやはり一番多かったのは、2018年の生活事情だった。

俺がちょっと不便だけど今とそんなに変わらないと伝えると、ある生徒はそうだったのか、と感心したり、そうなの? と少し残念そうな顔をしていた。



それとは別に、気になったことが一つ、それは教室からの外の景色だった。

空は快晴、それは別に当たり前だが、どうやらこの学校は海辺に立っているらしく、綺麗な海が視界に広がった。

話しかけてきた生徒に聞くと、ここは人工島らしい。



さらにそれとは別に、気になったこと。

美代の方には、誰も近寄らず、話しかけないことだ。



もっとも、美代が休憩中寝たふりをしていたり、昨日みたいな不機嫌そうな顔で携帯を弄っていた。なども関係ありそうだった。



俺は未だに違和感を覚える携帯食料のゼリーを飲みながら、美代の方に目を遣る。最速で食事を終えた美代は、また寝たふりをしていた。



話しかけるべきか? と俺が悩んでいると、ふと、視界の隅にちょいちょいと手招きしている。藍子の姿が目に映った。



何の用だろうと、俺は立ち上がる。



「どこいくの?」



俺にはやたらと干渉してくるな、こいつ。

見れば美代が起きて、こちらを見ていた。



「どこって、トイレだけど」



「あっそ」



俺が適当にそういうと、美代も適当な返事を返してきた。

俺は手招きしていた藍子の後を追って、教室を出た。


そうして、教室から少し離れた。水飲み場の広場に出る。



「関くんに、神宮司さんについて話しておきべきかな、と思ってね?」



唐突に、藍子が言った。



「美代か・・・・・・、まぁ俺も何を伝えようとしているかなんとなく分かるけど」



「そうですか・・・・・・、じゃあ単刀直入に言うと、神宮司さんには、関わっている人が少ない、いや、こう言うとちょっと失礼なんだけれど、居ないんです」



「それって……友達とかもか?」



そう言うと、藍子は首を縦に振った。



「この学校はクラス替えがないんだけど、今日の朝の件で、多分神宮司さんと一番話したかな? って感じなんです」



「やっぱり美代のあの態度か?」



そう聞くと、藍子は今度は首を横に振った。



「神宮司さんがお金持ち過ぎて、みんな何を話せばいいか分からないの」



「そうか? あいつ見た感じ普通の女子生徒じゃないか」



「関くんは、神宮司さんの家に昨日から居候始めたばかりだから、そう思うのだろうけど」



「……?」



朝とは違ってどこか口ごもった藍子の発言に、俺は疑問を抱いた。



「まず、この人工島、ここは神宮司グループが作ったの」



「え」



「それと、ここから少し離れた、シブヤの軌道エレベーター、それも神宮司グループが一番関わっているの」



「ちょ」



「あとね、東京のビルの会社も大体が神宮司・・・・・・」



「ストップ、ストップ!」



俺は手を挙げてそう言った。

良家のお金持ち、程度だと思っていた美代が、そんな異次元のお金持ちだとは思わなかった。



「あ、あいつがそんな?」



「う……あ、はい」



うん、と言いかけた藍子が、はい、に言葉を変えた。



「そういうお金持ちが行く学校は無いのか?」



「一応あるけど、そこでも確実にういちゃうと思います。あと、校則が厳しいから、それが嫌で神宮司さんはここを選んだんじゃないかなって」



「なるほどねぇ」



俺はそういうと、素直な言葉で言った。



「別に、金持ちとか気にしないで仲良く話せばいいじゃんか」



「え、でも話題が……」



「あいつ、昨日は夜遅くまで音楽聴いてて寝坊したって言ってたぜ? 藍子たちが思うより、多分美代はずっと庶民的だよ」



「でも……」



「俺は、そんな程度の理由で距離を置くやつの方が嫌いだ」



心の底から俺はそう思った。身分なんて、関係ない。みんな仲良くすればいいじゃないか。



「なんだか」



藍子が言う。



「関くんって、かっこいいね」



「はい?」



俺は頭に?マークを浮かべて言う。



「そんなこと、簡単に言っちゃうなんて、私が神宮司さんに対して特別視しすぎていただけなんだなって、反省しました」



「そ、そうか。あとさ」



「なんで・・・・・・なんでしょうか?」



「お前はなんで敬語を使ってるんだ」



「それは、私の家は女子は大和撫子らしく、と言う決まりがあるからでして」



「確かに守るべきかもしれないなそれは、でも、俺には普通に話しかけてくれ」



「どうして?」



「そういうのって、どうしても距離を感じるんだよ、お前、藍子だってもう少し仲良くなりたいだろ?」



「それは是非!!」



何故だか物凄く喰い付いて来た。



「まぁ、徐々にでもいいから、俺にはフレンドリーに話してくれ」



「わかり・・・・・・分かったよ、関くん」



「それじゃ、早速行動を起こすぞ」



「え?」



俺はそう言って教室に向かう。何をするんだろう? と言った顔で藍子は俺について来た。

そうして教室に戻って、自分の席に着く、藍子もそばにいる。



「おい、美代」



「何? トイレにしては長かったけど?」



「お前、昨日どんな音楽聴いてたんだよ」



「は? あんたに言っても分からないでしょ」



「確かに俺はさっぱり分からねえと思う、でもよ」



俺は藍子を指さして。



「藍子なら分かるはずだ」



「はぁ?」



理解できないと、美代は顔でそう言っていた。



「いいから教えろ」




「……シャントレーゼってバンドの曲、だけど」



「シャントレーゼ? あ、私もたまに聞きますよ」



「え? どれとか?」



「愛の世界、とか」



「あぁ、あれね! あの曲良いわよね!」



「はい、愛とは何かを伝えてくれる曲で!」



「あんた意外と分かるじゃない……、っ!?」



美代は、今まで感じたことない視線に、驚いていた。



「神宮司さんって今どきの音楽も聴くんだね」



「神宮司さんって庶民の事分かるのかも?」



そんなヒソヒソ話が聞こえる。



「~~~っ! 寝る!」



そう言って再び美代は寝たふりをする。



「ね、寝ちゃったよ関くん? どうすれば」



「ははっ、まあ最初はこんなもんで良いだろ」



続けて俺は言う。



「俺と美代。二人の友達になってくれたな? 藍子」



そんな言葉を投げかけると、少しの間の後。藍子はとびっきりの笑顔で。



「うん!!」



そう言ってくれた。




~~~~~~



放課後。

俺と美代は3メートルの距離を置いて帰り始めた。



「原始人」



「なんだ?」



「あんたがなんか言ったんでしょ? 急にあんなこと東雲が喰い付いてくるなんて」



「まぁな」



俺がそういうと、美代は大きくため息をついた。



「でも、楽しかっただろ?」



「……それは、まぁ……うん」



「俺みたく乱暴に扱わなれば、友達は出来るって」



「それはどういう意味よ」



「特に意味はない。普通に接しろってことだ」



「そう……ねぇ、原始人」



「ん?」



前を歩いていた美代が、歩みを止めて振り返った。



「ありがと」



そんな感謝の言葉と、笑顔。



「いや、礼を言われるほどの事じゃねえよ」



俺はその笑顔に少しドキッとして、そっぽを向いた。

なんにせよ。俺だけじゃなく、美代の学校生活も変わっていく、俺はそう思った。

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