東雲藍子は東雲藍子だけど、ちょっと? 違った
見間違えか? 俺は窓際の席に着いた後。もう一度その東雲藍子そっくりさんを見た。
うん、そっくりって言うか東雲藍子だ。
栗色の内側に伸びたショートヘア。おっとりした目つき。
しかも、隣にいる美代の一つ前の席に座っている。
気になる所だが、宮藤先生がホームルームの話を始めたので、そちらに耳を傾ける。
「今日は欠席0、いつも通りだな。一限目まで遊んでな~」
耳を傾ける必要さえなかった。
そうして宮藤先生が出て行くと。
「なぁお前マジで2000年代生まれなのか!?」
「なんで今になって起きたの!?」
「昔の話教えて~!」
ドッと生徒が詰めかけて来て、俺は質問攻めにあった。
「いや、あの……」
そんな風に俺が困っていると。
「はいっ、皆さんそこまでっ」
パン。と手を叩いて、見えない位置で誰かが立ち上がった。
「あ、東雲さん」
東雲? やはり?
「関くんには教科ボードの見方とかを教える必要があるので、今は駄目ですよ。後、一斉に押しかけないこと、分かりました?」
東雲さんがそう言うと、みな自分の席へ戻って行った。
そうして俺のすぐ近くまで東雲さんが寄ってくる。
「えっと、東雲さんって言うの?」
「はい。そうですよ」
東雲さんは笑顔で言う。
そうして、話を続けた。
「私の名前は東雲藍子。このクラスの委員長をやってます」
「東雲・・・・・・藍子」
「ん? どうかしましたか、関くん?」
東雲さんが首を傾げたので、俺は。
「いや、俺の居た時代の幼馴染の同級生に、東雲藍子って子が居てさ……」
と言うと。
「それは私の祖先ですね。それでなんでか知らないけど、私も藍子って名前に……」
「そう……だったんだ」
知ってる顔だが、初対面で距離感を感じた俺は、少し寂しさを感じた。
「関くんはご先祖様の事、なんて呼んでいたのですか?」
「えっと、藍子って呼び捨てにしてたよ」
「じゃあ私の事もそう呼んでくれていいですよ」
思いもしなかった言葉に、俺は目を丸くする。
「ど、どうしました? まさか具合が悪くなったり?」
心配そうな顔で、藍子は俺のおでこに手を当てる。
「熱は……なさそうですね」
「あはは、いや、なんていうかさ。未来なのに一瞬昔に戻った気がして、ちょっと驚いただけだよ」
俺がそういうと、藍子は慌てて手を離して。
「そ、そうだったんですね。ごめんなさい変な勘違いをして……」
赤面しながら言った。
「良いよ。これからよろしくな、藍子」
俺が笑顔でそう言うと。
「こ、ここ、こちらこそ不束者ですがよろしくお願いします!」
と、なんか気になる言い方をして頭を下げた。
「って、そうじゃなかった。机の使い方教えてあげますね!」
そう言って、もう一歩藍子は近寄ってくる。
「……ここがこう、か?」
「そうです。関くん要領いいですね! もう私が教えることが無くなっちゃった」
「いやいや、藍子の教え方が上手かったんだよ」
俺は素直にそう言った。そうすると、藍子はまた少し赤面した後、真剣な顔つきになった。
「ちょっと……お話ししても良いですか?」
「な、何?」
真剣な話なのだろうと、俺は肘をついていた手を戻して、藍子の方を向いた。
「私のご先祖様。私と同じ名前の東雲藍子は、関くんが植物人間になったことで、ひどく落ち込んでしまったらしいんです」
「そう、だったのか」
過去の藍子には、どうやらかなりのショックを与えていたようだった。
ふと、罪悪感に苛まれ、俺は顔を暗くする。
「でも、なんとか立ち直ったんですって、それで、その藍子が子供を授かったから私が居る訳で・・・・・・」
「……?」
「な、なんだか素敵な出会い、そんな感じ、しない……ですか?」
チラチラとこちらを見ながら藍子が言う。
「そうだな! まさかこんな理解者が現れてくれるなんて、思いもしなかったよ!」
「良かったです! 私と、これから仲良くしてくださいね!」
「おう、よろしくな藍子」
俺たちは信頼の証に、握手した。
「なーにやってんのよ、亮太」
ふと、そんな横やりが飛んできた。美代の言葉だった。
「じ、神宮司さん?」
「東雲、あんたあまり余計なことは吹き込むんじゃないわよ? こいつはあたしが管理してるんだから」
そう言って俺のことを睨み付けてくる美代。
「駄目ですよ! 関くんはアンドロイドじゃなくて人間なんだから、そんな言い方しちゃ!」
藍子はどうやら俺に味方してくれている様だ。
「原始人はね、神宮司家が管理してたの」
俺はここで気になる言葉を拾って、そして聞いてしまった。
「神宮司家が……管理? どうして?」
「え? あ、違う! そうじゃなくて……えっと」
慌てる美代、その顔は何か違う言葉を探そうと必死だった。
「違うってことは、つまり関くんは関くん、ってことですよね?」
揚げ足を取るように藍子が言う。
「そ、そういうことだけど、それが東雲となんの関係があるのよ」
「私と関くんが仲良くなるのって、何にも問題ないですよね?」
「ふぇ!? ま、まあそうね」
藍子の顔は俺からは見えない。
しかし、青ざめた美代の顔から、なんとなく察することは出来た。
「じゃあこれからよろしくね。関くん」
「は、はい!」
そう言って、未来の藍子は1限目が始まるから、と席に着いた。
なんだか、俺は少し寒気を感じた。




