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原始人(?)な俺とお金持ちのお嬢様  作者: ねこ丸
第一章
4/19

朝というものは、未来も昔も変わらない。

朝。俺は当然起きた。

白い天井、やはり現実か。

しかし、あの派手なシャンデリアが消えている。どうしてだろうか。



コンコン。

俺が起きたのがまるで分かったかのように部屋のドアが叩かれた。



「どうぞ」



そう言うと、咲さんが手に制服をもって部屋の中に入ってきた。

本当にこれから新しい学園生活が始まるんだと、身に染みた。



「サイズは大丈夫かと思うのですが、一応試着の方をお願い致します」



「分かりました。あの、昨日上にあったシャンデリアは?」



そう言って俺が天井を指さすと、咲さんの視線もそちらに向いた。



「あぁ、実物だと危ないので、あれもフォログラフィックです」



やはりか。



「あの、そのデザインって自由に変更出来たりしますか?」



「出来ますが、どのようなものに?」



「2018年頃の蛍光灯型のデザインって……無理ですか?」



そう言うと、咲さんは黙って目を瞑る。



「サーバーにて情報を検知しました。帰宅までにはそのようにしておきます」



やはり、咲さんは人間ではないんだと、俺は痛感した。

それと、聞かれはしなかったがなんでそんな要望を出したかと言うと、少しでも自分の元居た場所に部屋を近づけたいと思ったからだ。

新しい物ばかりでは落ち着かない。



「それにしても早起きですね」



咲さんが俺のそばの机の上に制服を置きながら言う。

携帯で時刻を確認すると、6時ちょうどだった。



「あー、いつもより30分早いくらいですね。ちなみに学校まではどうやって?」



「徒歩で駅まで向かって頂き、モノレールに乗ってください。学校はその駅前にあります」



「駅名は?」



「経済特区東京第二高等学校前です」



経済特区?

もしかして、と思い俺は続けて質問を投げつけた。



「あの、この国の名前は?」



「ここはどこの国にも属していません。ただ、昔使われていた地名で、経済特区東京、と言われています」



「な、なるほど」



「ちなみに出発時間は7時半なので、今後はいつも通り6時半に起きて頂ければ問題ありません」



それだけ言って、咲さんは部屋を出て行った。



「さて、着てみるか……」



日本だけど日本ではないというショックが少しあったが、今更その程度では驚かない。

それよりも今日の学校が憂鬱だ。どんな顔でクラスメイト達に見られるのだろうか。



「学ランじゃなくて、ブレザーなんだな」



試着して、サイズに違和感が無いことを確認した俺は、机の椅子に座った。

そうして、携帯を開く。昨日使い方の説明書を読んだが、テレビも見れるらしい。

ちなみに、説明書もタブレットみたいなものだった。



一通りチャンネルを見てみるが、正直言って訳が分からないニュース番組だらけ。



「あ~・・・・・・」



俺はベッドの上に携帯を投げると、机に項垂れた。



「学校行きたくねぇ」



本心からそう思った。多分、人生で一番学校に行きたくない日だと思う。

しかし、そんなことをしている場合ではない。もう7時だ。咲さんにサイズの問題が無いことを伝えなければ。



そんなことを考えていた矢先。



「ぎゃ~! 寝坊! 遅刻しちゃう!」



正直言って美代は美少女と言っても良い外見だった。

だからこそ、この大声が美代のものであると思いたくはない。



俺は登校時間まで余裕があったので、ゆっくりとエントランスへ向かった。

洗面所に行って歯磨きを済ませ、朝食用の携帯食料を飲んで、玄関に着く。

7時20分、余裕だった。



「咲~! 髪の毛梳かして~!」



美代は全然余裕がないみたいだ。

咲さんが人間だったら呆れているだろう、いや、もしかしたらアンドロイドでも呆れているかもしれない。

この騒動のせいでサイズの事を伝える事さえ出来なかった。



「みゃ、げんひひん! ひゃやおきにゃにょね!」



ブレザーを着て、携帯食料を飲みながら美代がなんか言っていた。

多分、あ、原始人、早起きなのね! だろう。

なので俺は。



「お前が遅いだけだよ!!」



と思い切り突っ込みを返してやった。




「むぐ・・・・・・、仕方ないでしょ。お気に入りの音楽聴いてたら夜更かししちゃったんだから!」



その開き治りは何だ。

まあ、時刻は7時29分。ギリギリ出発時間に間に合っている。



「美代、駅までの道のりを教えておいてくれ」



「何? その変な言い方は」



「今後お前が大寝坊して、俺まで遅刻するのは嫌だからな」



「きぃー! 原始人のくせに生意気言って! そんなに言うならあんたより早起きしてやる!」



「6時半」



俺は得意げな顔でそう言う。

ぶっちゃけ普通である。



「ぐっ!」



しかし、やはり美代にとっては早いようだった。



「6時45分に起きれば余裕だから、さっきの話は無し!!」



そう言って俺に指をさしてきた。



「お嬢様、登校時間です」



「あ、ほんとに遅刻しちゃうじゃない! 行くわよ原始人!」



正直その呼び名は未だに納得していないが、グダグダ言っていると初登校で本当に遅刻してしまう。

俺は、はいはい、と言って美代と共に外に出た。

いつの時代になっても、時間だけは変わらないことに俺は安堵した。

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