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原始人(?)な俺とお金持ちのお嬢様  作者: ねこ丸
第二章
17/19

一人が無理でも、二人の力が合わされば

ホームルーム前、席に着いた俺たち、美代と藍子。



「大丈夫? 痛まないですか?」



藍子は心配そうに美代の様子を伺う。



「ちょっとピリピリするけど、大丈夫」



美代はそっぽを向いて、藍子に言った。



「授業中とか、痛くなったら肩叩いてくれたら良いですから」



「はいはい」



そんなやり取りを、俺は横で見ていた。

そうして、ホームルームの鐘がなる。



「はいお前らー、席付けー」



相変わらずのボサボサ頭の、宮藤先生が来た。

先生はパラパラと日程をめくると。



「はい、一限目まで遊んでな~」



またそれだけ言って去って行った。



「美代、眠くないのか?」



隣の席の美代に声を掛けた。



「眠くなってきた」



そう言って、美代は大きくあくびする。

俺もつられてあくびした。



「二人とも寝不足?」



藍子が言うので。



「あぁ、二人して色々あってな……」



「なるほど、でも授業中の居眠りは駄目です」



そう言って藍子は、ビシッと人差し指をたてた。



「分かった」



俺は素直にそれを受け入れる。



「……」



美代は無言だった。



「神宮司さん?」



藍子が、美代に聞くと。



「委員長だから調子に乗ってるの? それに怪我人をかばって点数稼ぎ? 良い御身分じゃない」



「なっ」



美代の言葉に、俺は頭に血がのぼって行くのを感じた。



「お前!」



「そう思われても仕方ないですね」



俺の怒声を遮るように藍子が言った。



「私は委員長として当然のことをしているだけ、それじゃあダメですか?」



藍子が優しく微笑んで言うと。



「……好きにしたら」



そう言って、美代は腕を枕にして寝始めた。



「関くんも、大声は控えて、ね?」



「すまない」



言葉こそ最初しか出なかったが、クラスメイト達が一斉にこちらを見てきたことには変わらない。



そうして、特に何もなく、昼休み。



「すぅ……すぅ……」



美代は小さく寝息を立てて、本当に寝ていた。



「関くん、ちょっとお話しがあるの」



藍子から話……いや、今はあの件とは関係ないだろう。

俺は首を縦に振ると、藍子と共に教室を出た。



そうして、人通りの少ない廊下で。



「関くんは、神宮司さんのご両親の事、知ってる?」



「……昨日無神経に聞いちまった」



「そっか……確か小学5年生の時だったかな、あの事故は」



「それ以降は、どうやって暮らしてたんだ?」



「詳細は分からない。けれどもアンドロイドと暮らしてたんだと思う」



人の心を持たない物と、ずっと。

俺は想像するだけで嫌になった。



「あいつ……昨日夜泣いてたんだよ。両親の事言いながら」



「……」



俺が言うと、藍子は暗い表情で俯く。



「それに、今は学校以外外出禁止になってて」



「それは、昨日言ってたね」



そうだった。眠気で少し、俺の頭は回っていない様だった。



「でもさ、外出禁止でも」



「ん?」



藍子が口を開いた。



「神宮司さんの家に、遊びに行くのは良いんだよね?」



俺は、ハッとした。その手があった、と。

しかし



「美代は朝、あんなこと言ってたんだぞ? それにこの前、藍子も邪魔だと思っていたじゃないか」



「それは恋愛面、これは違う、友達を助けたいって言う、私の思い、偽善と思われても構わない。それでも、私も本当に力になりたい」



俺は思った。

藍子は、俺より美代の事を心配しているのではないかと。



「じゃあ、今日の放課後から毎日行くね!」



「毎日!? いくらなんでも無理はするな」



「どうせ私も放課後は暇だし、神宮司さんと仲良くなる良い機会だよ」



怖いと言ったことを訂正したいレベルで、藍子は真剣だった。



そうして、腹が決まった俺たちは、教室に戻り。



「美代、美代~」



俺が肩を揺さぶって美代を起こした。



「んあ? 何よ?」



「藍子から話しがあるってよ」



朝の件もあって、美代も少し気まずいのか。



「……何?」



と、小さめの声で聞いた。



「今日から、私、東雲藍子は神宮司さんの家に、毎日遊びに行きたいと思ってます」



「え?」



思いもよらない言葉だったのだろう、美代は混乱していた。



「言葉の通りだ、美代。どうせ暇だろ?」



「暇だけど、あたし朝、東雲にあんなこと言ったのよ? 怒ってないの?」



「ちょっとだけ、むっとしたけど、怒ってないですよ」



大人な対応を、藍子はした。



「……好きにしなさい。あたしは午後乗り切れる気がしないから、もうちょっと寝る」



そう言って、美代はまた眠りについた。



「決まりだね、関くん」



「そうだな」



俺と藍子は、笑顔で向き合った。

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