表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原始人(?)な俺とお金持ちのお嬢様  作者: ねこ丸
第二章
16/19

本当の、これからの一歩

朝、気がついたら朝だった。

結局のところ、色々と考えていて、寝れずに朝になっていた。



6時半になったので、俺はベッドから起き上がると、洗顔と歯を磨きの為に自室を出た。

同時に、ガチャリと、美代の部屋のドアも空いた。



「あ、原始人」



そう言って歩き出そうとする美代だったが、足の痛みに顔を歪めた。



「無理すんなよ、ゆっくりでいいから」



「ふんだ! どう原始人! 6時半に起きれたわよ!」



しかし、美代の顔を見て、俺はそれが嘘だと分かった。



「美代、お前、寝てないだろ」



「えっ」



どうしてばれた? と美代は驚く。



「目の下にクマ出来てるから、それで分かったよ」



「マジで? いやーちょっと音楽聴くのに夢中になっちゃって」



本当はずっと、泣いていたのだろう。

しかし、俺はどうすれば良いか分からず。



「俺も学校が憂鬱で夜更かしした」



と、嘘をついた。



「あははっ、道理であんたも目の下にクマがあるわけだ」



そう、美代は笑った。

昨日の弱弱しい顔が嘘のように。



「美代……俺は」



「待った待った、あたし歯磨きするから」



そう言って、言葉は遮られた。



「俺もだ」



俺が言うと、美代はむっとした顔をして。



「じゃあさっさと済ませましょ」



そう言って、二人で広い洗面所へ向かった。

シャカシャカシャカ、そんな歯磨きの音が響く。

俺たちは目を合わせることなく、それを終えた。



「じゃあ、俺は一旦戻るぞ」



「なんで?」



「女のお前の方が洗顔とか色々時間かかるだろ? 俺の洗顔はすぐに終わるからさ」



そう言うのならば、と美代は。



「咲ー! ヘアアイロン持ってきて!」



と叫んでいた。



俺は踵を返すと、部屋に戻り、着替えと食事を終えた。

7時20分

そろそろいいかと、俺が洗面所に向かうと、案の定空いていた。

俺はささっと洗顔して、一階エントランスに降りた。



「ふっふっふ、遅いわね原始人」



ニヤニヤと笑う美代、化粧でクマが見事に隠れていた。



「はいはい、遅いですよ」



俺はため息を吐きながら、そう答える。



「何? いつもだったらつっ掛かってくるのに」



「寝不足だからな、お前も、無理すんなよ」



「生意気ね! まぁ、あたしは全然平気なんだから!」



そんなことを美代が言っていると。



「お嬢様、亮太様、迎えの車が来ました」



と、咲さんが言ってきた。



「迎えですか?」



「はい、お嬢様のけがを考慮して」



なるほど、そういう事か……



俺と美代は庭を出ると、目の前の道路に止めてあった車に乗り込んだ。

そうして発射して。



「……静かだな」



俺が呟く。



「? どゆこと?」



美代は理解できていないようで、首をかしげる。



「俺の時代の車は、ガソリン使ってたから、結構音がしたんだよ。昨日の帰りの時点で思ってたことではあったんだが」



「あー、なんだっけ? 化石なんとか」



コイツはもうちょっと勉強した方がやはりいい。



「化石燃料」



「そう、それそれ」



分かってました。と美代が顔で訴えかけてくる。



「あと、昨日からもう一つ気になるんだけどさ」



「何?」



「なんで前の運転席のところだけ黒塗りなんだ?」



「神宮司家のドライバーだと分かると、何かあった時に困るから」



プライバシーの保護、と言うところか。



「と、そろそろ着くわね」



美代が座席の下のカバンを持つ。



「持ってやるよ」



俺は即座にそう言った。



「なんで?」



「足怪我してるんだから、なるべく負担掛けない方が良いと思ってな」



「……ま、その心がけに応えてあげるわ」



そう言って、美代はカバンを渡してきた。



俺たちが正門前に降り立つと、なんだなんだと、周りが見てくる。

無理もない、車で登校したのだから。



「さ、行くぞ」



「原始人! もうちょっと距離を開けなさいよ!」



「無茶言うな、お前は怪我人だ、バランスを崩して倒れたりしたら……と」



ここで、俺は偶然なのかは分からないが、正門を潜ろうとしている藍子を見つけた。



「おーい! 藍子!」



俺の声に気が付いた藍子が、こちらの方へ歩みを寄せてきた。



「どうしたの? 関くんと神宮司さん」



この前の藍子ショックの顔はどこに行ったのだろうというやわらかい顔で、藍子が聞いて来た。



「実は美代が昨日足を怪我してな、都合さえよければ、一緒に歩いてやってくれないか?」



「足? あ、ほんのり靴下から包帯がはみ出てる……」



藍子はそう言うと。



「神宮司さん、困ったことあったら力になります」



「……ありがと」



そう言って、俺たちは正門を潜った。



その瞬間から、俺は思った。

これからを変えていけばいいんだ、と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ