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原始人(?)な俺とお金持ちのお嬢様  作者: ねこ丸
第一章
12/19

やっと休める、と思ったけど日曜日も俺は多忙なようです。

「ふぁ~」



俺は大きく欠伸をして起き上がる。

時刻は8時半。



遅刻じゃないかって? いや、違うね。だって今日は。



「念願の休み、日曜だ~」



俺はそう言ってもう一度ベッドで横になった。

今日の予定は、特にない。



昨日の藍子事件、いや、藍子ショックと名付けよう。

あれは過ぎたことだから、明日の事は考えないようにした。



「あ~、なんかすっげー気が楽になった」



気兼ねなく部屋で休めると思ったら、もう二度寝したくなった。

よし、寝よう。



そう言って布団を被った矢先。



「原始人~、起きてる~?」



ゴンゴンと強くドアを叩かれて、俺の二度寝は失敗に終わった。



「うるせーな、なんだよ」



俺がドアを開けると。




「出掛けるから、着いてきて」



私服姿の美代が居た。



「出掛けるって、こんな朝早くからどこに・・・・・・」



「はぁ? もう八時半じゃない。あたしは7時半に起きてたわよ」



7時に起きるのが無理でも、30分延長すればいけるのか……。



「ってあんた寝癖やばいわよ」



そう言って、美代は背伸びして、ちょいちょいと俺の頭を突いた。

今更だが、美代は俺より20センチくらい身長が低い。



「そりゃ今起きたし」



俺がそう言うと、美代は自慢げに。



「だらしないわねぇ、さっさと支度しなさい」



「平日はお前の方がだらしないぞ」



「うぐっ」



ブーメランが刺さった美代はうめき声を小さく吐いた。



「取りあえず30分くれ、ちゃんと準備するから、平日待たされてる分だから文句は言わせないぞ」



「仕方ないわね、9時にエントランスに来なさいよ」



そう言って美代はバタンとドアを閉めた。



「……はぁ、休日。せっかく休めると思ったのによ」



とほほ。俺は諦め顔で身支度を整えた。

そうして9時に。



「ほら、準備出来たぞ」



「きっかり9時ね」



美代はそう言って、携帯を見る。



「んで、どこ行くんだよ」



「あんた学校と家以外にはまだ行ってないでしょ? だから散歩」



美代にしては良心的だが、なんだか引っかかる。

だから俺は。



「買い物とかするのか?」



そう聞いた。



「するけど」



「荷物持ちじゃないだろうな?」



「服買うけど、全部宅配で送ってもらうわよ」



なら安心だ。



「購入までは持ってもらうけど」



安心じゃなかった!



「良いよ。お前には借りがあるし」



「……? なんのことよ?」



藍子ショックの時に助けてくれた礼だとは言えず、俺は黙り込む。



「ははーん、さては、やっと起こしてくれたことに感謝したのね」



そう言って自慢げに無い胸を張る。



「そういう事でいいよ」



俺と美代は、ちょっとした雑談をしつつ、外へ向かった。

そうして、外に出てやっと、俺はこのことを聞けた。



「なんで俺の事名前で呼ばないんだ?」



「だって、原始人は原始人じゃない」



「それは旧石器時代の人間だろ。俺は2018年には居た」



「2000年前なんて原始時代でしょ?」



本当に歴史習ってんのか? コイツ。



「とにかくあんたは原始人、それ以上でもそれ以下でもないからそこは安心して」



何も安心できない。

そんな話をしながら、俺たちは駅でモノレールに乗り移動した。



「場所は?」



「アキハバラ」



「あ、その地名はまだ残ってるのか。でもなんで秋葉原なんだ? 服買うなら渋谷とか原宿の方が……」



「はらじゅく? どこよそれ」



どうやら消えてしまっている地名もあるらしい。

だが、秋葉は確かアニメとかゲームを取り扱ってる店が多かったはずだ。

俺がそんなことを疑問に思っていると。



「あ、ここで乗り換え」



そう言われて、俺は後に続く。



「今も乗り換えあんのか」



「まぁ、全部を繋げちゃうと無理があるからね」



確かに東京内を一つの路線でまとめるのは無理そうだ。

俺たちは隣のホームに移動する。



「秋葉は、今はどんな町なんだ?」



「今は、ってどういう事?」



「昔と今じゃ事情が違うかもしれないから、確認だよ」



「あー、今は学生が行く遊び場所ね」



「なるほど」



「昔はどんな町だったの?」



真面目に答えるとキモイとか言われそうなので。



「パソコンとか、電子機器が売られていた場所だな」



俺はそう答えた。



「へぇ、あんた電子ボードにひたすら張り付いてネットやってる根暗だったの?」



まともに応えても、コイツはひん曲がった言葉を出してきやがる。



「ちげーよ」



俺はそう言って、そして来たモノレールに乗った。

移動する事15分ほどで。



「着いたわよ」



「おう」



俺たちは改札を出た。

と、ここで俺は景色に既視感を覚える。



「あれ? なんかビルの高さが低くないか?」



「人が住む町じゃないからね、って何よその嬉しそうな顔」



どうやら既視感に俺はニヤけていたらしい。



「ちょっと昔と似てるって思ったんだよ」



「そう」



それだけ言って、美代と俺は歩き出す。

この時はまだ、これから起きるめんどくさい出来事を知る由もなかった。


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