プロローグ
俺の名前は関亮太。17歳、ただの高校生男子。
しかしただの高校生男子であるが、実際のところを言うとちょっと違う。
関家は代々伝わる名のある名家なのだ。
家には家政婦だって居るし。友人に引かれるくらいに家は広い。日本庭園付きの家を見たら大体の者が引くであろうとは予想はつくが。
そんな俺だが、人生はレールが敷かれていてただ歩くだけだ。聞いたところによると、最近許嫁も出来たらしい。
当主となって家を継ぎ、財閥の社長となる。そして子供を授かってまた新しい当主を育て上げる。まだ居ない子供とはいえ、正直可哀想だと思った。
「あーあー、何か面白いことねぇかな」
そう言って俺は通学路の途中で落ちていた石を蹴り飛ばした。蹴り飛ばした石はヤクザの車に当たるだとか、単純に誰かに当たるという事もなくコロコロと地面を転がった。
「亮ちゃん危ないよ~」
そんな俺に一人の少女が話しかけてきた。
東雲藍子。俺の幼馴染でクラスメイトの女子だ。
「大丈夫だって、ヤクザの車に当たったとしても家の力で何とかなるさ」
「う、うん……」
少しの沈黙の後、藍子は頷いた。
我ながら恥ずかしい言葉の選択だったと反省する。
始業式を終え十日。来る日も来る日も勉強、家では親父に当主としての心構えを教え聞かされる毎日。
ファンタジーの世界に行けたら良いな。最近はそんな逃避にも嵌まっている。
いわゆる中二病ってやつだが、口に出していないから問題はない。
ファンタジーの世界に行けなくても良い。でも、普通の庶民として俺は生きてみたいと思っていた。
そんなことを考えながら下を向いて歩いていると。
「亮ちゃん危ない!!」
「え?」
言われて顔を上げると、乗用車が真横に来ていた。
そこで、俺の意識は遠のいた。