タレス
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「またお食事中でしたか、でも今日はお話させていただきますよ。」
ドアを開けてきたのは借金取りの男タレスであった。
「アゼリアさん、今日町で聞きましたよ、諸侯会議に参加されるそうですね。」
「え、えぇ。お耳の早いことですね、タレスさん。」
アゼリアは先ほどまでの慌てようを忘れたように静かに振舞っている。
「しかも、君主様がヴィクトリア家の過去の武勇を頼りにされ、以前から活発になっている東の国ヴィーゼ討伐に任ぜられるとか。それがうまく行けば、ヴィーゼの町もアゼリアさんの所領になり、褒賞もでるとか。本当ですか?」
タレスが新しい学生ライフ夢見る大学新入生の様な、輝く笑顔でアゼリアに迫っている。
「そうですよ。タレスさん。そうなれば、ヴィーゼの町にもタレスさんに土地を与えそこで商いをしても良いという考えもお持ちです。」
勘助がお茶をすすりながら呟く。
「ほ、本当ですか!?そうなれば、いまのアゼリアさんの借金など、安いものです!君主様がその気になられているのならばヴィーゼに攻め入っても勝てるでしょう。」
「我々もそう考えています。しかし、タレスさん、いま、アゼリア様は格好にしても装飾品にしても実にみすぼらしいのです。」
「こ、こら!小寺勘助!私はそんなにみすぼらしくなどない!!」
「たしかに、そうですね。」
「タレスまで何を言う!?」
アゼリアが顔を赤くして怒る。
「そこで、もう一千万レプスお借りして、身なりを整えます。そしてタレスさんも一緒に列侯会議に参加してもらえませんか?商人なら首都にもお詳しいでしょう?」
淡々と話を進める勘助。
「分かりました。用意しましょう。私も金貸しなどしたくはないのです!新しい町に新しい土地があればまたいい作物を作り、本来の商売で儲けたいと思っていましたのでご協力させていただきます。ところであなたは?昨日もおられた様ですが?」
「僕は小寺勘助。勘助でいいですよ。アゼリア様の家臣です。これからお互いしばし2人だけの家臣団としてよろしくお願いします。」
「こちらこそ!勘助さん!よろしくお願いします。」
タレスは深々と頭を下げると駆けるようにして屋敷をで行った。
「ちょっと、小寺勘助!どうなっているの?列侯会議は本当だけれど、ヴィーゼ討伐や新しい土地の話なんて知らないわよ!」
「あぁ。あれは僕が朝に町で流した嘘です。」
「う、嘘って貴方!タレスが一緒に首都に行くならバレるじゃない!!」
「そうですね。しかし、四千万レプスも借りられていてはタレスさんも簡単には我々を切ったりできません。むしろ、計画通りに物事が進むように協力してくれるはずです。それに、彼は我々と同い年くらいでしょうけどきっといい家臣になりますよ。」
「貴方、わざと借金してタレスが逆に私たちを助けざるを得なくしたの!?でも、どうしても計画通り行かなかったらどうするの?」
「そんなことありませんよ。だってアゼリア様は君主になるのでしょう?この程度障害にもなりませんよ。さぁ物語は動き始めましたよ。後は野となれ……なんでしたっけ?」
「しょうがないわね。貴方に任せたのは、私だものね。やりましょう!タレスには何があっても借金は返すわ!」
「後は野となれ山となれよ!」
こうして2人の物語はここから大きく動き出す。不意に巻き込まれる形となったタレスにとってもまた、大きな運命が訪れることとなるのである。