家臣に
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何卒よろしくお願いします!
「分かりました。なんとかして見せましょう。それでは、まず、借金のことを忘れて、アゼリア様の君主になる計画を聞かせてもらえませんか?」
「様って、まだ貴方は家臣ではないのだから呼び捨てでも構わないわ。そうね、まずは私の計画から話しましょうか。」
アゼリアの目にもまた、力が宿っている。
「さっきも言ったけれどいま、この国は混乱しているわ。これまでは君主様を中心に全ての貴族は一致団結していたけれど、君主様が若君に変わられてから各地方の貴族たちが戦役を断ったり、首都での会議を欠席するようになったの。しかもいま、これまで数十年も大人しくしていた、東の国「ヴィーゼ」が度々国境を侵して来ているの。」
「それは、反乱の予感ですね。」
「そう。特に、問題なのは国の北広域を支配している名家にもその動きがあることなの。だけど、君主様も若いからと言ってないもしない訳じゃないわ。」
「なにをするんです?」
勘助が身を乗り出す。
「君主の持つ権利、国難に見舞われた時に全ての貴族を首都に呼び寄せ、今後の方針を決める列侯会議を開かれることにしたの。そこに私も呼ばれるてるのよ。そこで、どうにかして名を上げる予定なの!」
「どうにかって!?」
勘助は自信満々な表情で語るアゼリアに唖然としてしまっている。
「まぁこれが私の計画よ。この列侯会議は100年ぶりの大事件なの!もういまから胸が高鳴っているわ!さぁ貴方も私の家臣になりたいのなら、この借金をどうしてみせるのか教えて。」
「とんでもなくアバウトな計画なんですね。そんなんで会議に行って大丈夫なんですか?」
勘助は苦笑い混じりに聞く。
「そんなの、後は野となれ山となれよ!さぁ貴方の案を教えて頂戴!」
「……まぁでも、一飯の恩義もありますからね。付き合いましょう。案というほどのものはまだありませんが。そうだ、さっきの借金取りのことを教えていただけませんか?紳士そうな人でしたけど。」
「あの男は紳士よ。名前はタレス。両親は農園経営と金貸しをやっていてね、お金に厳しくて有名だったの。我が家はいま、ざっと三千万レプスほど借金があるわ!
彼はその後を継いでるんだけど、もともと気優しい人で農園はともかく借金取りは苦手なようね。なにもなければ家臣にしたいくらい頭もいいのよ。」
ため息をつきながらお茶を用意するアゼリア。
勘助はそれを聞きつつ何かを思案している。
(やっぱりあの借金取りは悪い人間じゃなさそうだな。それに借金取りをしたいとは思っていない。それなら……)
「アゼリア様、明日、街の広場の場所を教えてもらえませんか?できるだけ、人が集まるような場所がいいです。」
「……えぇ。構わないわよ。ほんとに町のこと知らないのね。」
「あと、列侯会議のことは町の人たちは知ってるんですか?」
「いいえ、これは今日我が家に送られてきた手紙に書いてあったの。この町に他の貴族はいないから知らないはずよ。」
勘助は少し眉間にしわを寄せ、口元は笑ったように口角をあげている。この男の中で考えがまとまった時の仕草とでも言えよう。
その様子はまるで、丁半博打で勝つか負けるか勝負そのもを純粋に楽しむ博徒のような不穏さを帯びている。
「まぁ貴方に任せるとするわ。ところで泊まるところはあるの?」
「……ないので泊めてもらえます?」
さっきまでの表情が嘘のように子犬のように甘える声を出す勘助。この男の愛嬌である。