出会い
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ヴィクトル・アゼリアは町の主要道であるヴィクトリア・ストラーダをうつむきながら歩いている。
彼女は人口2万人という小さな町の、国の中心からはずいぶん東に位置する町の貴族の家に生まれた。
300年前に大陸全土でいくつもの国が生まれた戦国時代があった。そして、彼女の先祖はその戦乱の中でこの町から身を立て、盟主と仰いだ今の君主の祖先の手足となって戦働きをし、褒賞としてこの町に貴族として住むことを許された。それ以来の家柄であり、町でもっとも古く正統な血筋であると自らも、また町衆達からも考えている。
しかし、今現在の彼女を取り巻く状況は決して名門のそれではなくなっている。乱世では力でのしがったが、治世になると金や領地経営など、文官的な要素が必要になる。しかし、この一族にはその感覚がなかなか養われなかった。数代のうちに君主から頂戴した農園を売り払うことになり、また家臣団も解散せざるを得なくなっていった。その後、それでも多少商才があるものなども出、財を作ったりもしたがまた数代も持たずに散財してしまっていた。
そして、現在はアゼリアの代となっている。父親と母親は借金にまみれている家計を救うため、首都へ町の特産品を売りに出かけたが途中、賊に襲われ命を落とした。18歳になったばかりのアゼリアは1人残されたのである。
「まずいわ。このままだとお屋敷も売りに出してしまうことになってしまう。わたしの代でそんなことはできない。……まぁでもなんとかなるわよね。」
ギュッと小さな拳を2つ作り、アゼリアは歯を食いしばっていた。顔をあげればそこには彼女の住む、先祖代々の屋敷が建っている。
屋敷は二階建ての洋館で、門にはヴィクトル家の家紋が飾られている。
顔をあげたアゼリアはその家紋をじっと見つめて
「なんとかするにはあれしかないわ。後は野となれ山となれよ。」
と呟く。
「お、お姉さん。そこのお姉さん。お願いです。ご飯を、食事をさせていただけませんか?」
アゼリアの耳に微かに人の声が聞こえる。今にも消えてしまいそうなか細い声に眉をひそめながらアゼリアはその方向を向いてみた。
すると、そこには革ジャンにGパンというハマダーを思わせる出で立ちの男が座っていた。