21 白いツバサ 流転転生 本編17
しかし、選の考えを否定するように町の中で騒ぎが起こった。
大きな通りを歩いている時だった。
通りに立つ家の一つが赤い炎に包まれて燃えているのが分かった。
炎はゴウゴウと燃えていて、収まるどころかどんどん激しくなっていっている様。
女性「まだ家には子供がいるんです! 行かせてください!」
男性「駄目だ、言ったら巻き込まれてしまうぞ!」
女性「ああ、そんな……っ」
その家の前では、燃え盛る家の中に飛び込んで行こうとしている女性がいるが周囲にいる人間から止められているようだった。
周囲ではほんの数人が水の魔法を使って火を弱めようとしているが、あまり効果は出ていない。
選「大変だ、助けないと!」
緑花「待って、危険よ! あんなに燃えているのに」
選「でも、放っておけないだろ!」
中に子供がいるという女性と同じように、家の中へ飛び込んで行こうとする選だが、緑花に止められてしまう。
なあ「あわわ、大変なの真っ赤なの」
未利「魔法でもっとばーっと水かけて消したりできないの?」
啓区「消防士さんー、じゃなくて火消しさんみたいな感じの人はいないのかなー」
コリー「この町には、それほど強大な魔法を扱える人はいないんです。消化隊の組織の人もいるでしょうけれど、もうしばらく時間はかかるはずです」
つまりこの場には、火を完全に消せる人はいないようだった。
選は決断した。
これは、行くしかないよな。
選「やっぱり放っておけるか!」
緑花「あ、ちょっと選!」
緑花の声を背後に聞きながら選は燃え盛る家の中へと飛び込んで行った。
想像したと通り……ではなく想像以上に中は暑かった。
壁や床などを燃やす炎の熱が肌を焼いて、発生する煙で視界が悪くなる。
選「くそ、こんな所にいつまでも放っておくわけにもいかないよな」
苦心しながら部屋を周って行く。どこもかしこも真っ赤な炎に覆われていたが、三部屋目でようやくベビーベッドに寝かされた赤ん坊を見つける事が出来た。
場所が良かったのかまだ燃えてはおらず、火傷などの怪我もしていないようだった。
赤ん坊は家の中が炎に包まれて大変な事になっているというのに、ベッドですやすや気持ちよさそうに眠っていた。
選「無事でよかった」
見つけたのなら後は、脱出するだけだ。
そう思ったすぐ後、何かが軋む音がした。
視線を向けるとその音の正体は、すぐ近くの壁に並んでいた棚の一つだった。
壁越しに炎に燃やされた影響なのか、突然傾いてこちらへと倒れて来たのだ。
選「!」
緑花「やああっ」
とっさに腕に抱いた赤ん坊を庇おうとする選。
しかし、棚は倒れてくることなく、駆けつけた緑花によって粉々に砕かれた。
選「緑花! 助かった」
緑花「心配させないでよ。子供は見つかったのね、早くここから出ましょう!」
急いで炎の家から脱出すると、それを見計らったかのように玄関から出た直後、火の勢いが一段と強くなった。
家の周囲ではクラスメイト達や町の人たちが水の魔法を使って、消火活動に励んでいた。
火の勢いを見れば焼け石に水状態だろうが、選が脱出するまで無事だったのは彼らの助力のおかげかもしれない。
そう言えば忘れていたけど、俺達魔法を授かっていたんだっけか。
考える前に飛び出したので、さっぱりその事について思い至らなかったのだ。




