表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/50

20 白いツバサ 流転転生 本編16



 事前に聞いていたコヨミ姫との合流場所はアクアナトリウムという町の、その港だ。

 けれど、ハングの説明によって実際に転移したその場所が判明する。

 町の中にある小さな喫茶店、その裏手だった。


 何故そんな事になったかというと……。


 コヨミ姫は、ずっと前から城が危険にさらされる事を危惧していた。

 前々から重要人物を逃がす為の魔法や仕掛けを色々考えていたのだが、その際に自分の所が襲われる事になるのなら他の場所も同様の危険にさらされる事になるかもしれないと、そう思い至ったのだ。


 重要人物を直接(ちょくせつ)目的地へと転移させては確実に危険から逃す事が出来ない。

 そういうわけで、コヨミは保険として目につきにくいただの民家を、転移魔法の行き先の候補に決めたらしい。


ハング「本当なら貴方達は、本来の合流場所を訪れるずだったのでしょうが、姫様が独自に判断されて念には念を入れたのでしょうな」


 判断したのはおそらくアルガラとカルガラだろうが、城の事は言わないでおいた。

 お姫様の生死が不明だなんて教えて、余計な不安をかかえさせるのは気が引けたからだ。


選「そう言う事だったのか」

緑花「ちょっと、びっくりしちゃったわ」


 とにかく理由は分かった。ハングからの話を聞いて選は緑花と顔を見合わせ納得する。


ハング「姫様からお声がかかった時は、まさか私らこうして関わる事になろうとは思いもしませんでしたが、これも天の導きでしょうな」


 その後は、合流場所への行き方を教えてもらったり、喫茶店で出している名物のマフィンをもらったりした。


 しばらくすれば、お客さんの姿が少ない時間になったのかコリーが戻って来て、ハングと入れ替わった。

 コリーは選達だけでは不安だろうと、合流場所までの案内を申し出たのだった。


 選達は喫茶店の裏手を出て、コリーと共に町を歩いて行く。







選「異世界の町って外国みたいなんだな」

緑花「本当ね」


 コリーに聞こえないように小声でやり取りするのだが、気を抜くと声のボリュームが戻ってしまいそうだ。

 目に映るもののどれもが見慣れない物ばかりだった。

 だが、現実の外国と完全に似ているわけでもなく、外国の少し前の時代と言い表した方がしっくりくるような景色だ。

 電車や車みたいな乗り物はなかったが、代わりに馬車は通っている。

 コンクリートの地面や高層建築の建物はないが、教科書やテレビなどで見た昔の外国の風景そのものだ。


選「でも、通りでああいうの見てるとやっぱ異世界だなって思うな」

緑花「確かに」


 視線を向けるのは、植木鉢に魔法を使って水やりをしている女性の姿や、広い通りで魔法で炎を出現させて芸をする大道芸人の姿だ。


コリー「あらあら、珍しいですか。選さん達はずいぶん遠くからいらっしゃったみたいですね」


 選達の事情を知らないコリーは、ほほえましい物でも見るかのような表情だ。


選「ああ、まあ。俺達の住んでいる所には無いものばかりだからな」

緑花「ええ、そ、そうね。珍しい物ばかりで目が回っちゃいそうだわ」


 誤魔化す様にそう言えば未利や啓区達も追従してくれる。


未利「そりゃあ、もう予想できないくらい、ものっすんごい遠くから来たわけだしね」

啓区「色々興味とか湧いちゃうよねー」

菜亜「なあも、お水さんチョロチョロ見たり、炎さんゴウゴウもっと見たいって思うの」

コリー「うふふ、そんなに興味を持ってくれるなんて、嬉しいわね。やっぱり自分の巣だった町は特別だもの。時間があればゆっくりと町を案内していた所なんだけど、残念だわ」


 上手く信じてくれたことにほっと息をつく。


 お城の方は大変な事になったけど、ここら辺はまだ平和なんだな。

 つい数日前に起こった出来事と比べると、目の前の景色が少し不思議になってくる。


 終止刻(エンドライン)とやらの時期が来て、もっと世界は大変になっているかと思ったが案外そうでもないのだろうか。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ