19 白いツバサ 流転転生 本編15
もしもの時に決められていた合流場所、……それはアクアナトリウムという海に面した町の港だったが、選達が転移した場所は違う場所だった。
クラスメイト達がざわめく。
選「ここって……アレだよな」
緑花「普通の家の裏……よね」
そうだ。選達が移動してきたのは、こじんまりとした可愛らしいとも言ってもいい様な家の裏庭だった。
地面には元いた場所の床に記されていたような魔法陣が刻まれている。
アルガラとカルガラが間違えて転移させたわけではなさそうだ。
選「どういう事だ」
緑花「とりあえず、家の人に聞いてみるのが一番でしょうね」
分からないなら知っている人間に聞くのが一番だろう。
選は緑花の意見に賛成して、家の中にいるであろう人物へ声を掛けようとした。
選「すいま……」
???「あら? 貴方達は」
見計らったかのように姿を現した人物は二十歳くらいの女性だった。
不思議そうな表情を浮かべるのだが、ややあって納得したように頷いた。
???「貴方達、ひょっとしてお城から来た人たちなのかしら。驚いたわ。まさかこんな小さな方達だったなんて」
そしておっとりとした様子で、頬に手を当てながら「まあ、大変ね」などとあまり緊張感の感じられないような様子で、ゆっくりとした足取りで来た道を戻って行ってしまう。
緑花「あっ、あの……」
???「ちょっと待っててね」
一応理由があると言えども勝手に侵入したのはこっちの方だ、家の住人らしき人間から待てと言われたなら、待つのが普通だろう。
どうにも見ている限りでは悪い人ではなさそうなので、悪い様にもならないだろうし。
大人しくしている事数分、今度は女性の他に男性の老人が出て来た。
白い髭を生やした、エプロン姿のその老人は人のよ良さそうな笑顔を浮かべて、言葉を掛けてくる。
???「これはこれは、本当に小さな来訪者さんだね。遠くからよくいらっしゃった。貴方達が来たという事は、世界を助ける事に協力してくれる事になったと、そう考えていいのかね?」
選「え、はあ、まあ」
お姫様でも兵士でもない、目の前にいるのは一般人にしか見えない人達だ。
どこまでこっちの事情を知っているのか分からなくて、選は歯切れ悪く答える事しかできなかった。
???「そうかいそうかい。 申し訳ないね。取りあえずお持て成しをしたいところだけど、お店の中にはお客さんもいるし……屋外で悪いけれど、こんなにたくさんの人数は入れないだろうから、そこら辺で楽にしてくればいいよ」
選「あ、いや俺達は大丈夫だけど」
そう言って老人は次に、初めに選達が出会った女性へ向かい、店の中へ戻る様に言った。
店という事は営業していたのならお客さんとやらの相手をしなければいけないのだろう。
女性の戻っていく背中を見届けた後、老人は自己紹介をした。
ハング「私の名前はハングと申します。もう一人の方は、孫のコリーになります」
選「あ、と俺は選だ。それでこっちが……」
そこでようやく互いの自己紹介になり、全員分を済ませた後は、話の本題へと入った。
ハング「とりあえず、まずはどうしてこのような場所へ転移したかの事情を説明しなければなりませんね」




