17 白いツバサ 流転転生 本編13
労うように拍手をした後、アルガラとカルガラは選達に改まって声を掛けた。
アルガラ「これならば魔法を与えても良いかの。という事で、今からおぬし達に、代々我が家に伝わる秘儀にて、魔法を授ける、心するといい」
カルガラ「ワシからは魔力で編んだ武器をさすげる。物質として使えるようにはするが、大切に扱うのじゃぞ」
アルガラ「そこに並ぶがよい」
カルガラ「急がんでも約束を反故にはせんのじゃ」
気が変わらない内にと、動く何人かの心を読んだような台詞に一部がびくっとなる。
気持ちは分からないでもない。
今まで物語の中の存在だった魔法が使えるようになるのだ。
これで、胸が躍らなかったらおかしいだろう。
選「一体どんな感じなんだろうな」
緑花「どうなるのかしらね」
選は期待を、緑花は若干不安を抱きつつも、皆と同じように動きアルガラとカルガラの前に立つ。
アルガラ「では行うぞ」
カルガラ「集中するから静かにしとるんじゃぞ」
並んだ選達を前にアルガラとカルガラは、それぞれ呪文を詠唱をしていく。
アルガラ・カルガラ「異界の地より召喚されし者達へ」
アルガラ・カルガラ「我が力を与え、顕現させよ」
アルガラ・カルガラ「混迷せし大地に一条の光もたらさんが為に、今その手に未来を切り開く為の力を」
そして、二人が手にしていた杖の先端から光が発せられ、選達を包み込む。
一瞬後、代わりに並んだ一人一人の前に光が集まって、物質へと構成される。
選「これは何だ?」
光の塊は、手に取ると変化していく。
選の手にあるそれは、剣の形と変化した。
緑花のものは籠手だった。
他のクラスメイトの物を見てみるとそれぞれ違っているようだ。
これが、与えてくれた力なのか。
剣を手に持つと驚くほど、よくなじんだ。
その武器は身の丈ほどもある大剣で、黒い柄に、金色の装飾が入っている。
見ていると妙に懐かしい気持ちになった。
なぜか、遠い昔にもこんな剣を持って使っていたような気がする。
アルガラ「それは英雄ラグナの剣。おぬしはもしや、転生者ではあるまいか」
カルガラ「転生者だというならば、過去の記憶はどうなっとるんじゃ」
選「転生者?」
緑花「それってどういう意味なの」
選の手にしている剣を見て驚いている様子のアルガラとカルガラに問いかければ、二人は難しそうな顔を見せる。
アルガラ「稀にではあるが、この世界には前世の記憶をもって生まれてくる者がいる。前世に強い思いを持って生きた人間に起きる現象での、リンネ現象と読んでおる」
カルガラ「しかし、まさか異世界の召喚者がそうだとはこれは驚きじゃぞ。おぬしはひょっとしたらラグナの転生者かも知れぬ」
選「ラグナ?」
二人が説明するに、ラグナというのは今から百年前に生きた人間で、その時に起きた終止刻を終わらせた人間だという。
選「そんなスゴイ人間の生まれ変わりが俺?」
緑花「まだそうと決まったわけじゃないじゃない。選は選でしょ」
選「確かにそうだけどな」
その可能性は高い様な気がするんだよな。
手に持っている剣は何度見ても、新しさより懐かしさを感じるし。
カルガラ「さて、説明にもどるぞ。今それぞれが持っている物は、己の意思を形にした武器じゃ。その者の意思の形について適応した物質となったのじゃ」
アルガラ「それだけではない、魔法も使えるようになっているはずじゃ。心の中に浮かんだ言葉を唱えれば自然と使えるようになっとるはずじゃから試してみるのじゃ」
カルガラに言われて、クラスメイトの何人かが呪文を唱えて炎やら水やらを出してるのをみると、本当に魔法が使えるようになったのだと実感する。
アルガラ「さて、力もつけた事だし。おぬしらはそろそろ自分たちがどうするべきか決めても良いだろう」
カルガラ「今すぐ答えを出せとまではいわん。ひとまず休憩したら良いじゃろう」
そういえば、まだ協力するかどうか決めていなかった




