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10 白いツバサ 流転転生 本編07


 エンジェ・レイ遺跡の転送台の上で光に包まれたと思った次の瞬間には、選達は豪奢な飾り付けの施された広間に移動していた。

 目の前には、綺麗なドレスを来た少女が椅子に座っていて、傍にはきっちりとした制服を来て魔法使いが持つような杖を持った少女が立っている。二人とも選達とそう変わらない歳に見える。


 選達の姿を一人一人確認していったドレスの少女が自己紹介をする。


 コヨミ「初めまして異世界の皆さん、私の名前はコーヨデル・ミフィル・ザエル。コヨミと呼んでもらって結構ですよ。私はこの世界を統治する者です」


 次いで傍に立つ杖を持った少女も口を開いた。


 エアロ「私は姫様の護衛、エアロです。よろしくお願いします」


 選達の頭の中に話しかけてきた少女の声だ。


 選「俺は、獅子上選だ。選って呼んでくれ……ください」


 統治領主っていうのはよく分からないが、部屋の雰囲気や少女の物腰、言葉遣いからひょっとして偉い人なのか、と思い普段の様子で挨拶しそうになって、選は言葉を改めた。


 コヨミ「普段の口調で結構ですよ。大切なお話なのに、話したいことを上手く話せなくては困りますから」

 選「そ、そうか。助かる」


 ほっと息をつく、偉い人に話すような言葉何ていらないし、そういう風にすると余計緊張しそうだったのでちょっと困ったからだ。


 そんなやりとりがあった後、クラスメイト達が次々に自己紹介をしていく。

 最後の一人が終わった後、コヨミが再び話を始める。


 コヨミ「では、お約束通り事情を説明します。担当直入に言いますが、この世界は滅亡寸前に追い込まれています」

 選「はぁ……。……はぁっ!?」


 さっそくの説明の衝撃発言。

 耳にした言葉に一度頷いてから、数秒後言葉の意味を理解した後、思わず聞き返してしまった。それは他の生徒達も同じだ。


 しかし、そんな選達にコヨミは沈痛な面持ちで説明を続ける。


 コヨミ「簡単に説明しますが、この世界は光の魔力と闇の魔力でできています。それら二つの均衡がとれた状態で世界は成り立っているんです。ですが、原因は分かりませんがそのバランスが崩れてしまい、闇の魔力が膨れ上がり、各地で異形の怪物たちが出没して暴れまわっているのです」


 それなら選達が見たあの生き物たちも、闇の魔力とやらが膨れ上がったせいで生まれた化け物なのだろうか。


 コヨミ「それを何とかするために、サクラ……サクラス・ネインという私の前の王女が立ち上がったのですが、力及ばず解決できませんでした。志半ばで倒れた彼女は召喚魔法によって、異界から助けとなるような人たち……つまり貴方達を呼んだのです」

 選「そうだったのか」


 意図せず知り合いを失くしてしまったという少女の事情を聴いてしまい、選達は気かける言葉に迷った。


 コヨミ「気にしないでください。これは私達世界を統べる者の務めなのですから、話を続けましょう。何か質問はありますか」

 選「あ、ああ、えっと……そうだ、何で俺達だったんだ? 子供だし、強い奴なら他にもたくさんいたはずだろ」


 助けとなるような人間を読んだ、と説明されたが選達はまだ子供だ。

 確かに選は喧嘩なれしているが、それはあくまで子供としては、なのだ。

 世の中には他にも強い人間はや山程いるはずなのに、自分たちが選ばれた理由が分からなかった。


 コヨミ「それは私には何とも、ですが心に白いツバサを持つ者……サクラはそういった人間を探していたと聞き及んでいます」

 選「俺たちツバサなんて生えてないぞ」


 クラスメイト達の中から「いや、比ゆ的な意味でしょ」と突っ込みが上がった。

 コヨミは苦笑だ。

 そうしているとこれまで大人しく話を聞いていた緑花が声をあげる。


 緑花「それで、そのサクラさんがこの世界の事をあたし達に託すために異世界に呼んだみたいだって事は聞いたけど。どうしてあたし達はあんな所に移動させられたの?」


 そういえば、選達がいたのは化け物がはびこる遺跡の中だった。


 コヨミ「申し訳ありません。おそらく魔法のコントロールが上手くいかなかったのでしょう。召喚魔法というものは今まで一度も試みやれたことがありませんでしたから」

 緑花「それで、あんなよく分からないところに移動しちゃったのね」


 コヨミが謝る事でもないし、責めるべき人間でもないので選は何も言えないし、言うつもりもない。

 誰だって、自分がやったわけじゃないことで色々言われたら嫌だろうしな。


 選「そういえば、エンジェレイ遺跡とか言ってたけど、あそこは一体どういう建物だったんだ?」

コヨミ「あの場所は、人目のつかない……地下に建てられたものです。この闇の魔力の満ちる……終止刻(エンドライン)を終わらせるために、必要な物です。その為の儀式を行う場所、セントアーク遺跡を起動させる道具のカギが封印されている場所なのですが、どこからか異形の者達が入り込んでしまったようです」


 あんなでかい建物を、小さな鍵一つ保管するために利用するなんて贅沢だな、と思った。それだけ大事なものなのだろうなのが。


 そういえば、遺跡の中で手に入れたものがあったのだった。


 選はそれをポケットから取り出して見せた。

 選「なあ、それってこれのことか?」

 コヨミ「それは、凛水の首飾り。そうです。よくとってきてくださいました。それがあれば、遺跡を起動させられます」


 偶然の行いで手に入れたものだったが、役に立ったようでなによりだ。


 エアロ「でも、おかしいですね。封印されていたはずなのに。それとも長い年月をかけて、封印が綻びたのでしょうか」

 選「あ、それは……」


 それについて選は何か言おうとするが、言葉になる前に遮られた。


 エアロ「そういえば、姫様……そろそろいいのではありませんか?」

 コヨミ「あ、そうですね」


 エアロとコヨミが小声で何かしらやり取りを交わす。

 しばらくしてからコヨミはすまなさそうに言った。


 コヨミ「すみません、長々と話に突き合わせてしまって。今日はもうお疲れでしょう、お部屋を用意しましたので、休憩を取ってください」


 確かに慣れない運動のせいで、選達は相当疲れていた。

 後の話は後日という事で、首飾りを渡した後、選達は部屋に案内された。




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