四、
この世に偶然というものは無い、すべてのことに意味があり、縁が人とそれを結ぶ。
それゆえに、出会いは必然。
たとえ、それが出会うもの同士が望もうと、望まざると。
人のゆく道は、縁と、必然が全てを決める。
――この世に偶然は無い。ならば、この出会いもまた必然なのか。
草木も眠る丑三つ時、とはいうが、科学至上主義の現代日本では、例え丑三つであったとしても、それなりの音と光が存在している。
光があるということは、ただでさえ暗い夜の闇にまぎれ、より深い闇もまたそこにあるということだ。その闇を好み、人に害をなす魑魅魍魎はそこに潜み、人を襲う。
それらの脅威から人々を守るため、日夜奮闘しているのが零課の術者たちだ。
だが、この日はその面子に少し違っていた。
およそ、深夜の時間帯に外出するには好ましくない風貌の四人組の少年少女が、都会の一角にあるビル街の路地に立っていた。
明らかに普通ではないことは、彼らのいでたちを見ればわかる。
かたや、数珠を首から下げ、独鈷を手にしている少年。かたや、手甲と肘当てを身につけた少年。
かたや、いくつかの鈴が棒を取り囲むように取り付けられた、神楽鈴を手にしている少女。かたや、身長よりも長い杖を手にしている少女。
どちらにしても、年相応の格好とは言い難い。
しかし、自分たちの格好を気にかけることなく、少年の一人が、口を開く。
「……さて、現地集合だったから、自己紹介もまだだったか……」
ちらり、と手甲を身につけた少年を見る。
「……そうだな。術者の常識は、今回は破棄してくれ。でないと、今後がやりにくい」
「まぁ、お互い敵同士じゃないからな。そこまで警戒しなくてもいいだろう」
そう言って、独鈷を手にした少年が先に名乗った。
「俺は土御門護、陰陽師の見習いだ。で、こっちが風森月美。巫女の見習いだ」
護は手のひらを月美の方に向け、二人に名乗った。
「……ありがとう。その態度、信頼の証として取っておく……俺は月影勇樹、こっちは皇桜。精霊使いの見習いだ」
勇樹はそう言いながら親指を桜に向ける。名を紹介された桜は、護と月美にひらひらと手を振りながら微笑んだ。
互いに本名を名乗ったのだろう。護と勇樹はそう確信していた。
通常、術者は本名を他人に明かさない。名前とは、そのものをこの世界に存在させるための楔、いわば世界とのつながりをあらわす鎖だ。
その楔をつかませると言うことは、その存在を縛ることにつながる。鎖をつかんだものが術者であれば、その存在の生死を操ることもできる。
それゆえ、術者と分かっていて本名を名乗るのは、愚劣の極みなのだ。
逆に言えば、術者と分かっていて本名を名乗るということは、己の鎖を相手に見せるほど信頼しているという証でもあるのだ。
護は勇樹の言葉に不敵な微笑みを浮かべ、ふたたび闇をにらむ。
この向こうには、陰陽寮から討伐依頼が出ているあやかしがいる。
――しかし、奇妙なことになったな
護はつい数時間前のことを思い出しながら、闇の中を歩き始めた。