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陰陽高校生 大戦記  作者: 風間 義介
四章「現れたるは……」
43/128

八、

 護がかんの鋭い刑事からの事情聴取を終え、下駄箱で月美が事情聴取を終えるのを待っていた。

 だが、ただじっと待っているわけではなかった。その手には正方形の板があった。その板の中央には北斗七星が記されていた。

 どうやら、携帯できるよう、小さな六壬式盤を自作したようだ。

 ――占うべきは、あの教師たちの命運。それから、この学園で起きていることだな

 階段に腰掛け、まず教師たちの命運について占い始める。だが、本名しか知らないせいか、鮮明な結果が読めない。わかったことは、ただ一つ。今日、彼らが悲惨な姿になるということだけ。生年月日や年齢がわかれば、もう少し詳しいことがわかったのかもしれない。

 しかし、今は悔やんでいる場合ではない。なにより、今は秘密裏に動いたほうがいいのかもしれないと、護の直感が告げている。

 ――これ以上は無理か……なら、次は

 護は続けて、いま学園で起きている│怪異ことについて占い始めた。今回の、いや、今回に限ったことではない、突然の非日常的な出来事は、護の経験上、怪異の予兆となることが多い。いや、もうすでに、怪異は始まっていると考えておかしくない。

 いや、今回もすでに予兆はあったのかもしれない。あるいは、ここ最近、多く発生していた妖は、今回のこの事件を暗示しているものだったのかもしれない。

 だからこそ、急ぐ必要がある。もうすでに犠牲者が出てしまっている。

 「……これ以上、犠牲者を出さないために……」

 ふとつぶやいて、護は少しばかり苦々しく微笑んだ。

 まさか、自分の人間嫌いが終わる時が来ようとは、思っても見なかった。

 いつもなら、たとえ今回のような事件が起きても、犠牲者が何人で出てこようと、友人でない限り、護は関与することはなかったし、する気も起きなかった。

 怪異が、科学的に立証できない何かが起きるのは、人間がそれらの存在にそうさせる何かをしたということ。因果応報、当然の報い。言ってみれば、彼らの側からすれば立派な正当防衛だ。それを邪魔してやるつもりはないし、なにより、人間がそれで懲りることがないことを護は知っている。

 だから、感謝されようがされまいが、「繰り返す」という人間の性を知っているからこそ、懲りるまで何度でも同じ目に合えばいいと思っている。

 それが、まだ次の犠牲者を作らないために行動しているのだ。自身も気づかぬうちに、変わっていったようだ。

 ――周りの人間の影響、か……

 馬鹿らしい、とも思いつつ、護は再び占いをはじめる。

 くるくると、板にはさまれた円盤が回転をはじめる。摩擦の影響なのだろうか、いつも以上に板の動きが遅く感じる。だが、円盤は回転を続け、外円から順に停止を始めた。

 「……これは……」

 護が携帯式盤から読み取ったもの。それは、断片でしかなかったが、彼を絶句させるには十分なものだった。

 「生徒」「携帯」「占い」「まじない」。それらはいま、月華学園に通う生徒たちの間で流行している携帯電話の占いと、回数を重ねるごとに教えてもらえるまじないのことを示していると考えて、間違いないのだろう。

 だいたい予想はしていたが、まさか本当にこの流行が鍵になっていたとは思いもしなかった。

 「……本当に、何が起ころうとしているんだ……」

 護はそっとため息をつき、携帯式盤をカバンにしまい、月美の到着を待った。

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