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陰陽高校生 大戦記  作者: 風間 義介
三章「変わりゆく日常」
26/128

一、

 巨大スライムの騒動から数日後。

 護たちは今でと変わらない日常を過ごしていた。いや、多少の変化があることにはあった。教室の雰囲気が少しばかり、浮ついているのだ。

 「……なぁ、清。ここ数日のうちに何かあるんだっけか?」

 護は隣にいる友人に声をかける。護は現在の若者とは少しずれている部分があるため、同級生たちが何を楽しみにしているのか、自分たちと同じ世代の若者がどのようなイベントを楽しみにしているのがまったくわからない。

 そのため、芸能人やイベントが話題になると、護は清に質問することが習慣になっていた。

 「ふむ……特に何かイベントがあるわけでもないはずだが……あ、でもあれかな?」

 「あれ?」

 「あぁ、最近ネットで流行してるサイトでな。よく当たる占いサイトがあるんだよ」

 清の占いサイトに対する説明はこうだ。

 携帯電話で使用されているサイトに、無料の会員登録をした人間だけが占ってもらえるサイトが存在する。そのサイトに登録すると、毎朝、本日の運勢と今日一日の行動で気をつけるべきことがメールで送信されてくるらしい。

 そして、その運勢占いがよく当たるということが、最近噂になっている。

 「……くだらな」

 護は清だけに聞こえる程度の音量で、ぼそりと呟き、ため息をついた。

 本業の人間からしてみれば、おみくじであればともかく、誰が作成したのか、どのような基準で占っているのかすら不透明な占いは、信じるに値しないものなのだ。

 何より、普段、神霊の存在を信じないが、神頼みや占いを好むという傾向が腹立って仕方がない。

 「確かにくだらないな。けどよ、ここからが面白い話でさ」

 「……ん?」

 「占いを受けるたびにポイントが溜まってくんだと。で、一定ポイント貯まると、まじないを教えてもらえるらしい」

 「まじない、ねぇ……?」

 たかだかまじない程度でここまで話が盛り上がるものなのだろうか。

 護の疑問気づいたのか、清はにやりと笑いながら、説明を続けた。

 「そのまじないってのが、よく効果を表すらしくてな。ただ、どういうわけか『直接教えられた人間』しか使えないらしくてな」

 「……ふむ。確かに興味深いな」

 通常、まじないというものは、誰かに教わり、その手順通りに実行すれば、大体の場合、同じ効果を得ることができる。しかし、教えてもらったまじないを、教わった通りの手順で行っても必ず失敗するというのは、護としても非常に興味深いものであった。

 「そのまじないって、どんなのがあるんだ?」

 「さぁ、な。知りたかったら、聞いてみればいいんじゃね?」

 「……めんどうだな」

 と言いながら立ち上がり、まじないの話で盛り上がっているのだろう一団の方へとよっていく。

 その背中を見て、清は微笑みながらうなずいている。

 ――あいつ、ここ最近で変わったな

 高校生活を共にして二年と少し、護は極力、人と関わることを避けて過ごしてきている節があった。中学時代に、少しばかり周囲の護を見る目が変わったということが原因らしいが、それが徐々に改善されてきている。

 それが証拠に、清が声をかければすぐに反応を返すようになった。

 正直、その反応を楽しんでいた人間としては、さみしいものがあるのだが。

 清はその言葉を胸にしまいながら、静かに護の背を見守っていた。

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