二、
陰陽寮として統一された零課では、陰陽寮の機関としては初となる任務を行っていた。
その内容は、ここ数週間で流行するようになった宗教団体の調査だった。宗教団体の危険度調査は、今までも行ってきたが、今回の任務は少し毛色が異なっていた。
通常の宗教団体は、何かしらの宗教を核にしていることが多いのだが、今回、調査対象となっている団体にはどのような宗教が核になっているのかが見えない。そして、気がかりなのは教義が全く理解できないことだ。
宗教というものは、一部の邪宗を除いて、死した後の世界へと行けるための生き方を説くものであり、利益の追求や現状から抜け出すための教えを説くものではない。だが、この団体は教義らしい教義はなく、ただ単に「星に祈りを捧げる」という行為を掲げているだけだった。
そして、気がかりなのことがもう一つある。
信者たちがどこで礼拝を行っているのかが、団体の本拠地となる場所がわかっていないのだ。さらに、信者の年齢層や主な職業、教団の構成員などの情報も入手できていない。
「……どうなってんだかな」
「さぁ、な……テロ組織でないことを祈るだけだな」
「完全に管轄外になるからな。まぁ、宗教がテロや戦争に利用されるってのはよくあることだから仕方ないんじゃないか?」
任務にあたっている若い捜査員が二人、陰陽寮の本拠地があるビルの一室で愚痴をこぼしていた。勝手が違いすぎる相手にどう対応したらいいか、正直困惑しているといったところだ。
それだけならばまだいい。だが、今回は統合された宮のエージェントと共同で捜査を行っている。普段の人員とは異なる人間が介入してくることに、まだ戸惑いを感じているのだ。
愚痴の一つも言いたくはなる。
「愚痴ばかり言っていても仕方がなかろうて。ほれ、仕事仕事」
二人の手が止まっているのを見て、一人の壮年の男性がデスクに近づき、書類を彼らの頭に乗せながら指示を出す。
二人はその書類を受け取り、じっとりとした目で男性を見ながら再び仕事にとりかかった。
壮年の男性は、二人のその様子を見て気づかれないようにため息をつく。
――まぁ、気持ちはわからんでもないんだが、な
急といえば急な取り決めに若い職員はすっかり動揺しているようだ。ことがことだけに、熟練の職員も少なからず困惑している。
まして、それが霊的保護機関の統合による陰陽寮復活となればなおのことだ。
零課の職員全体に、静かではあるが確実に混乱が存在している。
――やれやれ、このままで大丈夫なの?局長さんよう
書類に手をつけながら、壮年の男性は心の内でそう呟いていた。




