第五話;闇の中へ〜境遇〜
物心ついたときにはすでに独りだった。
父親の顔なんか知らない。
水商売をしている母親にほったらかされて育った。
愛情なんて与えられなかった。
家に帰っても在るのは机の上のお金だけ。
母はあたしに何一つ教えてくれなかった。
12の時、母の彼氏にヤられた。
何してるのかなんて分からなかった。
苦しくて……気づいたら手にお札を握ってた。
あたしは中1で“売り”をやったんだ。在るのはいつもお金だけ……。
お金はあたしを裏切らない。
お金があれば、欲しいものが買える。
流行りの服が着られる。
おいしいものが食べられる。
頭の中で、何かが切れた。
それからあたしは売りを繰り返すようになった。
でも、それでも、どんなにたくさんお金があってもあたしが満たされることはなかった。
それに気付いてもあたしは売りをやめようとはしなかった。少なくとも、ヤりたがる男達はあたしを必要としてくれていたから。その最中だけはあたしの居場所があるような気がしたから……。
「君、ひとり〜?」
「そうだけど?」
「ちょっと遊びに行こうよ」
「え〜、お金もってるの〜?」
「大丈夫だって〜。奢るし」
この後は、お決まりの定番コース。食事してお泊まり。
もう3ヶ月は家に帰ってない。
それなのに母からの電話はたったの一件も入ってなくって、あまりの関心のなさにさすがに少しへこんだ。
学校もサボり続けてる。さすがにもう退学になったかな?どうだっていいけど。
「ヤりたいんでしょ?いくら払えるのって聞いてるの」
あたしは不敵な笑みを浮かべて見せた。
堕ちてゆく……。どこまでも堕ちてゆく。
あたしの愚かさゆえ……。
こんな作品で誠に恐縮ですが感想などあれば聞かせて下さいm(_ _)m