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第四話;Name2〜過去〜

(空が見える……。あたりまえか、ここ屋上だし。あたし横になってる訳だし。あぁ、でも、青いな……。それもあたりまえか。あたしオカシイかな?病んでる?)

 少女はポソリと呟いた。

「くっだらない」

 これはまだ彼に出会う前のミミの話。

 まだ、ただひとりの佐山 (サヤマヒビキ)という少女だった頃の話。

 辛い記憶……。 響は、制服の紺のプリーツスカートをヒラヒラと風に揺らしながら、学校の屋上からようやく重い腰を上げた。

 かれこれ一時間目から三時間も屋上に籠りっぱなしだったのだ。

 教室に戻る気になったのは、決して授業をマジメに受けようと思ったからではなく、お腹が空いたからだった。

 辛うじて持ち込んだウォークマンでは、暇は潰せても空腹ばかりはどうしようもなかった。

 響はグリコのリズムで階段を降り始めた。

「グ・リ・コ!パ・イ・ナ・ツ・プ・ル、チ・ヨ・コ・レ・イ・ト……」

「ウ・ザ・イ!ミ・ン・ナ・キ・モ・イ、ゼ・ン・ブ・キ・エ・ロ!」

 響は声に出して笑った。その様子は人が見ればきっと気持ちの悪い光景だっただろう。

 響は確かに病んでいたのだから。


 響の願い、それは自分を含め全ての生命が抹消されることだった。

(消えてしまいたい。消えてしまえばいい。魔法みたいにさっと。地球なんて早くなくなってしまえばいい。)


 ガラッ……。

 響はドアを勢いよく開いた。

 教室ではすでに古文担当の河合が出席をとっていて、生徒はみな一斉に響の方に目を向けた。

 呆れている者もいれば、まるで無関心な顔をした者もいる。

「遅れてごめんなさ〜い」

 響はさっさと席に着こうとした。

「待て、何で遅れたんだ!」

(げ〜、始まったよお説教ぅ〜!)

「別に」

 響はそう言うと、また席の方に向き直った。クラスメイトは観客顔で二人のバトルを観戦中。

 中には授業が潰れたと明らかに喜んでる奴もいる。

(そうやってあんたらは都合の良いときだけあたしを使おうとするんだ……!普段は存在丸無視のくせに!)

 この教室には既に響の居場所はなかった。

 教室とゆうよりは、世の中と言った方が正しいかも知れないけれど……。

 響はどうしても人に溶け込めなかった。

 どうやっても、響の風変わりな性格が周りから浮いてしまう。 性格は直したくてもそう簡単には直らないから。そんな環境が次第に響を人間嫌いにしていった。


「待てと言ってるだろ!」

 響は軽く舌打ちをした。

「だから理由なんかないつってんの。バーカ」

(バカは言い過ぎたかな。(笑))

「お前誰に向かって物をいってると思ってるんだ!!」

(あ〜ぁ。河合ってばいたくご立腹なりけり……)

「あんたこそ、自分を一体何者だと思ってるわけ?教師っていうのはそんなに偉いのか!」

「少なくともお前みたいなクズよりはよっぽど偉いだろうな!」

(クズか……。確かにね。あたしにピッタリの言葉だよ)

 響は自分に対して時折自虐的な発想をした。

 存在価値も生き甲斐も見つけられない自分が大嫌いだったから。


(どこにも居場所がない出来そこないのあたしは、確かにこの世界のゴミでしかないよね……)

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