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第三話;Name


 僕の家には猫がいる。


 僕の名前は朱家 知範(アケヤトモノリ)

 猫の名前はミミ。

 と言っても、これは僕が付けた名前だけど。

 彼女が付けて欲しいって頼んだんだ。だから僕は彼女の本名を知らない。

 それどころか、家の事も、学校はどうしたのかも、誕生日や血液型すら知らないんだ。

 何一つ知らない。

 それでも不思議と“聞きたい”とは思わなかった。ミミから話してくれる事を望んでいたから。

 

 聞いていたなら、教えてくれただろうか?包み隠さず、僕にすべてを。

 心の影を、まとっているあの哀しい闇についてを…。

 僕を信じて打ち明けてくれたのだろうか?


「ミミ、ただいま」

「おかえり智くん!!」

 ミミが元気よく玄関までお出迎え。我ながらなかなか悪くない帰宅だと思う。

「今日は何が食べたい?」

「オムライス♪」

 僕はすっかりミミの世話係。ミミは女の子なのに料理が全く作れないから。

 というよりも、家事全般ができないのだ……。

 始めのうちは僕も彼女に仕事を頼んだりもしていた。

 しかし、一ヶ月も経たないうちに僕はそれらを自分でやった方がずっと効率的だということに気付いた。

 彼女の期待の裏切りぶりといったら天下逸品。

 料理を作らせば黒古げにし、おまけに指を切るし、皿を洗わせれば割るし、洗濯をさせれば洗面所を泡だらけにし、掃除をさせれば余計汚すという暴挙に出る。

 コメディのワンシーンをそのまま抜き出したような行動に、僕は途方にくれ立ち尽くしたものだ。

 そんな経緯があったため、今では僕はミミの世話係に落ち着いたってわけ。

 そもそもペットってそーゆうもんだし?

 犬や猫よりはずっと賢いしね。

 まぁ、動物と比較するのはいささか無理があるかも知れないけど。

 そもそもミミが以前どうやって生活していたのかが気になる所だ。 やっぱり何もかも親に任せきりだったのだろうか?何もかもやってくれる様な両親がいるならば、家出なんてしないだろうと僕は思う。

 甘いだろうか?

 けれど僕は人生平々凡々に、至極平和に過ごしてきた人間だから、ミミの事を本当に理解してあげることは出来ないだろう。

 多分永遠に……。

 それでも僕はミミと出会ってしまった。

 苦しんでいる心に気付いてしまった。


 もう後戻りはできない。 なにがあっても彼女を助けてみせる。

 今度こそは、しくじりたくない……。

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