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第九話;季節外れの夏休み1

しばらくぶりの投稿となります。読んで下さっている心優しい読者様、本当に申し訳ございませんm(_ _)mこれからもゆっくり進めていきたいと思っています。

第3R


 記録に残る真夏日に繰り広げられた熱いバトルは、残暑ののこる秋口まで引き伸ばされていた。

 あたしはあの日から、負けないと誓ったライバルに一度も会っていない。

 もし遭遇した時の対策もばっちり立ててあるのに。なんだかさっぱりしない気分。

 それというのもあの日から、智くんがあたしを静羽さんに会わせようとしないせいなんだけど……。

 まぁ、あたしだって毎回毎回デートの邪魔なんてしたくない。

 当たり前といえば当たり前なんだけどさ……。


「ただいま〜」

 いつもなら大喜びでお出迎えするとこだけど、最近あたしはちょっぴり反抗期。部屋に入って来た智くんに、TVに視線を向けたままおかえりって言った。

 智くんは、そんなあたしをしょうがないなって顔で見てる。

 そうやって、優しく見つめられたら、あたしの中の甘えたいって欲求が膨らんじゃうからやめて?

 彼女が一番大切なくせに、あたしの心まで占領してく……ズルイ人。

「何をすねてんの?僕に彼女がいたこと?ごめんね、話してなくて」

 智くんはあたしの隣に座って、髪を撫でながらゆっくりと話す。心地よさにあたしは目をつむる。

「あたしの事、捨てたりしないでね……」

 胸がキュウって締め付けられて、あたしは溢れそうな涙を堪えながらやっとそれだけ言った。

 智くんは、ただ優しくあたしを受け入れてくれた。

 質問には答えがなくて、あたしの喉に堪えた涙の苦味が広がった。




***** *  *




 

 目前に広がるは、海。季節はずれのパノラマには、あたしと智くんしかいなかった。

 少し肌寒いけど、青と白しかない景色が、そんなの忘れさせてくれた。

 最高の気分だよ。

「きっもちい〜い!智くんもおいでよ」

 海に足だけつかってはしゃぐあたしを、困ったような顔して智くんが見てる。

 今、何を考えてるのかな?人の気持ちが分かればいいのに。

「風邪ひくなよ〜」

 智くんはあたしの呼びかけを無視して、浜辺にセットしたキャンプ用チェアでくつろぐ。

「おじさん……」

「なんか言った?」

 うわぁ、地獄耳だぁ……。今めっちゃ小声で言ったのに。

 1人で波と戯れててもつまんないよ。智くんのバーカ。


 ――そもそもなんであたし達がここに来てるかって言うと、月日は夏にさかのぼる。

 どこもつれてってくれない智くんに痺れを切らして、あたしは夏中に海に行く約束を(無理矢理)取り付けたんだ。


 そりゃあもう、ゴーイングマイウェイ(つまり自己中)にね。

 ところが、智くんはその約束をすっかり忘れてそのまま放置。

 ある日キレたあたしが帰ってきた智くんにいきなり助走付飛び蹴りをかました結果(つまり実力行使)、スケジュールの空いてた今日、晴れて海にやって来ることができたってワケ。

 おかげ様で秋になっちゃったけどね……。



「智くん、ビーチバレーならやる?」

 今度は目の前まで近付いて言った。

「やらない」

 一瞬瞳を上げてこっちを見ただけで、智くんはすぐに手元の本に目線を移す。ひどいと思うのはあたしだけ?

「砂のお城は?」

「作らない」

 即答ですか……。っつーか、

「じゃあなにしに来たのよ!」

 あたしの言葉に、智くんは本を閉じて深く溜め息をついた。

「お前が来たいって言ったんだろ?」

「智くんと一緒に、来たいって言ったの!」

 あたしはカッとなって言った。

「俺は見てるだけで満足です」

 智くんは、有無を言わせぬ必殺スマイル。あたしは言葉に詰まってしまった。

「それじゃつまんない……」

 あたしはそれだけ呟くと、予約してあるホテルの方へ踵をかえした。つまりはスネたわけだけど、荷物は智くんに全て持たせるという軽い復讐も忘れてない。

「おい!待てよ!」

 待てと言われて待つ馬鹿がどこにいる。あたしは更にスピードを上げた。背後で小さくなってく智くんの声に軽く良心を痛めながら、あたしは尚もズンズン歩いた。


 こんな時、静羽さんの前にいる時の智くんが脳裏をかすめて、あたしの胸はキリキリと痛むんだ。

 どうしてそんなに、幸せそうに、嬉しそうに、愛しそうに、優しい瞳で、最高の笑顔で、貴方の全てで、あたしには見せない表情で、この世で一番大切な人として、あんな女を見るの?

 あたし以外の女に、そんな優しい笑顔を向けないで。あたし以外の女を見つめたりしないで!

 あたしの事を、この世で一番大切な人として見て欲しい……。




 

 こんな歪んだ愛情が、彼に届くことはないって、本当は分かってるんだ……。

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