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第七話;淡い恋心

 君と出会ってから春が来て、夏になった。

 君との距離が縮まるほどに、内と外との二人の僕はどんどん、どんどん離れて行く。

 だけれど今いる二人の僕は、何れも元々の僕ではない。

 元々の僕は何処へ行ったのだろう?

 分からない、

 ただ、

 僕は変わってゆく……。

 君に触発されて。


 いつも私を不自由にさせたモノ……、どこかに私が忘れてきてしまったモノ……。

 信じる心、

 大切で愛しいそれを。

 私はいつだって、本当は人を心から愛したかった、愛されたかった。……必要とされたくて堪らなかった。

 私の願いは、いつだって叶えられない。

 分かっているのに、私はまだ甘い希望を持つのかな?

 期待したって傷つくだけなのに。

 私は変わってゆく……。

 彼に影響されて。



 遠くの方に、御主人様がチラリと見えたような気がした。

 一瞬、声を掛けようかと迷ったが、すぐにあたしは外で彼にバッタリ会うのは初めてだということに気付き躊躇した。(正確に言えば出逢ったとき以来だけど)

 考えてみれば、あたしと智くんは一歩家から出てしまえば、何の接点もない。

 智くんからすれば、自分の教え子と同じくらいの年齢のあたしと並んで歩くのは不快な事でしか無いだろう。

 この時あたしの中に、何か、不思議な感覚が生まれた。

 今まではなかった感情、もしくは意識していなかった感情。

 あまりに心地よかったから、考えようともしなかったんだ。

 あたしの気持ちを。

 智くんに対する気持ち、あたしが智くんをどう思っているのかを。

 外に出ていつもと違う顔をしてる智くんを見て、少し遠い存在の彼を見て、少女マンガなんかじゃ無いけど、あたしのハートは確かに痛んだんだよ……。

 一緒にいて心地いいのは、好きだからだよ。

 勇気を出して、あたしは智くんに話しかけようと彼に近づいて行った。


「智範!」


 声を掛けようとした、まさにその時、反対側から誰かが彼の名前を呼んだ。

 向こうを向いた彼が、やってきた清楚な女の人に笑顔を見せている様子が、あたしには手に取るように分かった。見えもしないのに……。

 あたしはまた傷つくのだろうか。

 まだ、間に合う……。まだ、そんなに好きじゃない。

 大丈夫、本気じゃないから……。

「お……お兄ちゃん!」

 本気じゃないけど、この悲しみに、デートをちょっぴり邪魔するくらいの価値はあるでしょう?

 振り向いた智くんの腕に思いっきり抱きついた。

「お兄ちゃん、久しぶりだね!全然帰ってきてくれないんだもん!」

 あたしは青くなってる智くんを後目に、にっこりイジワルに笑って見せた。

「え?あ、え〜と……あぁ、うん。ごめん」

(ミミの奴何考えてんだ!?)

「あれっ?もしかしてお兄ちゃんの彼女さん?はじめまして♪妹の響でーす」

 朱家 響、なかなかいい名前じゃん!

 そうしてあたしは初めて彼女の顔を真っ直ぐに見た。

 美人、としか言いようがなかった。

 背がとても高いとか、目がすごく大きいとか、そういう派手な美しさじゃなくて、整った、綺麗な顔立ちをしていた。

「はじめまして、薗田 静羽(ソノダシズハ)です」

 シフォンスカート、キャミに春色シャツ。

 大人で清楚な薗田さんはあたしとは正反対のタイプだった。まさにお嬢様って感じで。

「あ〜、えっとごめん、すぐに帰すから。ちょっと待ってて」

 智くんはあたしを腕から引き離して、彼女に聞こえないように後ろを向いてヒソヒソ話し始めた。

「バカかお前は!バレたらどうする!?」

「バレないようにするもん!あたしだってたまには外で智くんと一緒にいたい!」

「ダメなもんはダメ!さっさと家に帰って留守番してなさい!」

「こんな時だけ御主人様風吹かせないでよ!留守番ばっかでもうウンザリだもん〜!」

「おみやげ買って行ってやるから。な?」

 おみやげなんかに釣られるもんか。どれだけ子供扱いしてるのよ!

「イヤッ!絶対帰らないんだから〜!!」

 あたしはわざと彼女に聞こえるように叫んで、嘘泣きまでもしてみせた。

「あたし……本当は家出して来たの!帰る所なんてないんだからっ!」

「ミ……響、ワガママ言うんじゃない!父さんだって心配してるぞ」

「あの人は、あたしがいない方が都合がいいのよ!」

 あたしは大袈裟な芝居とメンソレータムの涙で、見事薗田さんの心を動かした。

「私は別にいいわよ?そんなに嫌がってるのに無理に帰すなんて可愛そう」

「でも……」

「家出くらい誰だって一度はするわよ。兄弟なんだし何日か匿ってあげたっていいんじゃない?」

「……分かったよ。少しだけだからな?」

「うん!ありがとう静羽さん!」

 智くんも遂に根負けして、あたしにデート付き添いの許可を出した。不服そうに……。

 第1Rはあたしの勝ち。

 今日一日、ひっかき回してやるから覚悟してろよ!智くん、あたしに隠し事してたことを後悔するがいい!!!



 今までだって逆境ばかりの人生だった。今更これしきのことでめげてたまるか!


響と智範は2人で生活する事によって、お互いにいい意味で変わっていく……と、いうようなことを書きたかった訳ですが今までの所、全然表現出来てませんね(●´U`●;ゞ

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