ネコの心と五月晴れ?
すぐ近くまで寄ってみると、次第に陰になっていてよく分からなかった男の服装や様子が見えてきた。
ユルめのジーンズにジャケットを合わせたカジュアルな着こなしで、オシャレな帽子を被っている。
更によく観察してみると、左手には何か冊子を持っているようだった。
「すいませ〜ん!ちょっといいですか?」
あたしはとびきりの営業スマイルと甘えた声で、ここぞとばかりに媚を売る。
「あのぉ、この辺りで黒いこのくらいの財布みませんでした?」
あたしは手で大きさを指し示しながら言った。
「財布?この辺で落としたの?」
そう言って振り向いた男は予想外にイケメン(死語)で、不覚にも思わずたじろいでしまった。
「はい!……たぶん」
(これは騙せなさそうだなぁ〜)
あたしは焦りながらも、出来る限り自然に見えるように答えた。
すると、男はなぜか突然クスクスと笑いだした。
気の短いあたしは当然怒りだして、男にくってかかった。
「あたし、何かおかしいこと言った!?」
せっかく売った媚が台無しになりました☆
「お前さ、人を騙すつもりならもっと巧くやれよ。演技力0!バレバレ」
「悪かったわね!だいたいあなたにお前呼ばわりされる覚えはないんですけど?」
あたしはカァッと熱くなるのを感じて、口から漏れたのはこの可愛げのないケンカ腰の台詞だった。きっと耳まで真っ赤になってると思う。
「だいたいね、あたしは別に騙そうとした訳じゃないんです!緊急事態なの!少しくらい人に助けを求めたっていいじゃない!!」
「ふ〜ん。で、緊急事態って何?」
男はニヤニヤしながらイヤミを込めてそう言った。
「それは…その、お金が無いっていうか…せっ羽詰まっててぇ……」
「やっぱりな。俺、お前みたいな女一っ番嫌い!ちょっと可愛いからって調子こいて、何もしなくても何でも手に入ると思っててさ。やっぱ女は中身が大事だよなぁ。俺はお前みたいなバカ女に、ぜってぇ金なんか出さねぇからな!」
「そんなこと思ってないっつーの!」
「じゃ〜ね〜。あいにく俺は多忙ですので。またね、バカ女ちゃん♪」
「ムッカツク〜〜!!あんたみたいなイヤミ男、二度と会いたくないわよ!!」
男は手をヒラヒラ振りながら河原の土手を登って行った。
あたしは治まりきらない苛立ちを抱えながら、男の姿が見えなくなるまでその場に立ち尽してしまった。
この時の心情を一言で言うのなら、まさしく“最低”である。
話の続きが苦しくなってきたので登場人物を増やしてみました(*^∀^*)
感想・評価など厳しいものも受け入れ、少しでも良くしていきたいので何かありましたらお願い致します。