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「サトウくんの考えはわかった。他に意見はないか?」
各本部長同士お互いを見合っていたが、他には意見が出てこなかった。
今の本部長連中は保身に走っているのが誰の目から見ても明らかだった。
ウッド・ベルが登場してから一ヶ月、政府が握っているウッド・ベルの情報は皆無と言ってもいいほどだ。
日本の中心にいてこれなのだから、国民はもっと不安だろう。
そんな状況のため、各本部長は動くと動いた人に責任を押し付けられて、今の職を辞することになるとの警戒感から発言が消極的になっている。
私はこの逆境を最大のチャンスと捉えた。
何か失態を犯せば確実に今の地位からは追いやられるだろう。
だが、成功さえすれば発言権が増し、野望へと一歩近づく。
かと言って、ただ単純に撃沈するつもりはない。
今までの経験から自分なら行けるという、根拠のない自信をなぜだか持っていた。
不思議な感覚だが、ウッド・ベルとの距離はそう遠くないと直感で感じていたということもある。