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その後も私は各本部長から次々と浴びせられる質問に淡々と答えていった。
できる女として、成り上がりでこの地位まで昇ってきた。
まだまだ上があるため、さらなる高みを目指し全ての時間と神経をこの仕事へ費やしている。
人生で唯一の失敗は、若気の至りでしてしまった『結婚』だ。
子供は好きだし、大事に思っている。
しかし、あの日を境に結婚し子供がいるということが自分の負荷へと変わった。
守るべきものが増えた分、自分がやらなければならないことの進行が妨げられた。
今は守るべきものがない方が動きやすいのは確かだ。
「他には…」
ドンドン
バタンッ
急に会議室のドアが開いた。
「失礼します!大変です!横浜で、ウッド・ベルと間違われた一般市民が暴行を受け亡くなりました。
被害者は『鈴木』。ウッドベルを直訳すると『鈴木』になることから、名字が『鈴木』ということで狙われたそうです。
また、この噂が急激に広がり、各地で『鈴木狩り』の動きが出始めている模様です」