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おれは呆気にとられていたが、後ろからサトミがどついてきて事の重大さを認識した。
「おい!グズグズすんな!
すぐに追いかけるよ!早くそいつら起こしなよ!」
おれはススムとマナブを起こし、サトミも含め車に飛び乗り、囚人達を追った。
まだ夜が明ける前だが、札幌市街の前線で政府軍と囚人軍がぶつかった。
囚人軍は突然の進撃命令に対して、逆にテンションが上がり、とち狂ったように政府軍に突入する。
暗闇の中、砲弾が光の尾を描き、お互いを行き来する。
着弾したと同時に爆音と爆風で、一瞬自分が何者なのかを忘れる。
次の爆風と爆風で我に返る。
すぐ向こうでは、いきり立って突撃した囚人が政府軍の恰好の餌食になり、銃弾を集中的に浴び、バタバタと折り重なって倒れて行く。
そんな光景を唖然として眺めていると、また近くで爆発が起き、
肉片やもげた足、まだ指が動いていそうな腕、片側半分が吹き飛んだ潰れた頭部などが車のフロントガラスにたたき付けられた。
バックミラーでススムとマナブを確認すると、もう限界が近いことが読み取れた。