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「ススム、不謹慎だぞ。ミドリカワさんの前でそういうこと言うなよ。ミドリカワさんがいなかったらおれらも、ああなってたんだからな」
ススムとマナブの兄弟を拾ったのは、昨日の旭川近郊でのことだった。
兄弟は仲が良く、埼玉から旅行に来ていたが、旅行中にこのゲームに巻き込まれたとのことだ。
それにしても旭川市内は大変な景色になっている。
町全体がほぼ壊滅状態で、がれきと死体の山しか見当たらない。
「おい!手挙げて車から出てこい!」
囚人服を着た男が銃をこちらに向けてきた。
「おっ、仲間か。わるい、わるい」
おれが囚人服を着ているのを確認すると、囚人達はみな何もせずに受け入れてくれる。
ススムとマナブもおれが一般人を仲間にしたと言えば、すんなりと通される。
ススムとマナブがおれに恩を感じているのは、囚人達に殺されそうになっていた二人をおれが仲間と言って助けたからだ。
今この地域では、この囚人服が身を守る最大の武器になっている。