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プロローグ
悠君が言った。
「人は生まれたその瞬間から、死に向かっているんだ。」
「じゃあ、今あの車に乗っているひとも、今そこのコンビニを出て行った人も?」
と私が聞くと彼は、
「そう、今救急車で運ばれた人も、たった今この世に生まれてきた子供も、俺も、お前も。」
そういわれると当たり前のことだ。わかっていたはずなのに、なんだか今初めて知ったような、驚きと妙な新鮮さを感じた。
ひどく沈んだ気分になり死にたくなるようなとき、確かに私は死に近づいていると実感する。しかし、気分が安定しているとき、私は本当に死に向かって歩いているのか。安定と不安定の間を常に行き来している私は、どこに向かっているのかわからなくなった。
私は、どこに向かっているのだろう、どこに向かうべきなのだろう。
そこには一体何があるのだろう。