~confess~
少しだけ賢と朱鳥の過去に触れています。ほとんど賢のモノローグですが。
「あーこうしてると、高校の時に戻ったみたいねぇ。」朱鳥が椅子に座ったまま、伸びをする。
「…そうだな。まぁ歳はくったが。」あまり興味なさそうに賢が同意する。
「もぉそれ言わないでよ!」抗議する朱鳥。
「事実だろ?」煙草をくわえ、ライターを手探りで探し、火を着ける。
高校の頃の俺は所謂『優等生』。出来ることを妬む奴らに、陳腐な言葉で褒めてくる先公。…もう何もかもうんざりだった。屋上でなんとなく時間を潰す日々が続いた。
そんなある日。
「あ、人!?匿って!」屋上のドアが勢いよく開いて、長い髪を金に染め、化粧した朱鳥が飛び込んで来た。これが朱鳥との出会いだった。
「お前生徒指導の先公に追いかけられてたんだっけ?…インパクトのある出会いだったよな。」色んな意味でという言葉はどうにか飲み込んだ。
「あら!?やぁだ、そんなにかわいかったかしら?」朱鳥が赤面する。
「……そうじゃなく、驚いたつーか、引いたし。」どうしてこうも自分の都合の良いように解釈できるのか不思議だ。
「…アタ…オレ…さ、賢に会えて嬉しかったよ?」朱鳥が地声で呟く。
「え?」急に改まられ、訳が解らないでいると、
「皆オレのこと落ちこぼれとか、オカマとか決めてかかって、ちゃんと見てくれた人っていなかったんだ。だから賢がこうして普通に接してくれることでオレがどれだけ救われたか。」俺の顔を真っ直ぐ見て微笑む朱鳥。
「…あっそ。」気のない素振りを装ったつもりが、照れて目が泳いでしまう。
「それと…。」と少し躊躇し、下を向く朱鳥。
「?」
「それと…オレ…!」朱鳥が決心した様に顔を上げる。
「オレ?」
「や、やっぱ、いい!かっ帰る!」明らかに動揺した様子で、バタバタと帰ろうとする朱鳥。
その背中に、
「なぁ、朱鳥。」と声をかける。ビクッと朱鳥の肩が震えた。
「俺…気づいてたよ、高校の時から。…でも、ごめん。」友達として傍にいることは出来ても、朱鳥の気持ちに応えてやることは出来ない。
「やっや〜ね、賢ったら!バレバレだったってこと?」涙声の朱鳥が少しだけ振り向いた。
「賢、やっぱり言わせて?」震える声を抑える様に朱鳥が言う。
「あぁ、聞いてやる。」子守唄を歌う様に優しく言い、目を瞑る。
「大好き。」
「サンキュ。」
キミはボクにとっても、大切な存在だから誠意を持って応えよう。キミにせめてものありがとう。