force
「よし、行ってこい!」光を押し出す様に玄関まで連れて行く。
「ちょっ!だ、だから何でオレ!?」なんとか逃れようと光が暴れる。
「お前女に間違われたことあんだろ?だから!…そうそう下着も忘れずにな。」この際理由なんてどうだっていい。自分で行かないで済むなら。
「それは昔の話だし…しっ下着とかよくわかんないし…とにかくやだ!」反抗的な目で俺を見てくる光。
「ふぅ…仕方ないな。」溜め息をつき、携帯を取り出す。
「諦めて違う人に頼むの?」光がぱぁっと明るい表情になる。
「いいから、ちょっと黙ってろ。」光を黙らせる。
「おっひさぁ〜ケンケン連絡ありがとぉー!」出会い頭に抱きつかれ、ちょっと引く。
「お、おう。久しぶり朱鳥。いいから、離れろ。あとケンケン言うな。」言いながらくっついている朱鳥を剥がす。
「やぁん。冷たいんだからぁ。」残念そうな目をする朱鳥。
「あ、の…?」おずおずと会話に入ろうとする光。
「あぁ、こいつ朱鳥。高校の同級でな…こいつに任せておけば平気だから。」面倒くさいことこの上ない。
朱鳥は赤茶の髪で襟元の開いた白いブラウスに黒のショートパンツに真っ黒なニーハイブーツをはいていた。美人だが、ただの美人じゃない。
「この子が光ちゃん?かっわいー!!」朱鳥が抱きつこうとしたのをさりげなく光が避ける。
「…えっ?え、…え?」光がいろいろ聞きたげに朱鳥と俺を見る。どうやら光もなんとなく違和感を抱いた様だ。
「言っとくが、朱鳥は男だぞ。」早口で言う。
「ちがーう!ニューハーフだってばぁ!」プリプリと朱鳥が怒る。
「えぇ!?…あ、あの、この人に任せるって何を…。」朱鳥を怯えた様に見る光。
「怖い?大丈夫よぅ。優しくしてあげるからん。」朱鳥がウインクをする。
「…っ…。」
光の助けを求める様な視線を感じたが、気づかない振りをした。