Love cat
「けっ…けんちゃーん!」勢いよく俺の部屋のドアを開け、光が飛び込んできた。
「…Zzz。」こういう時は無視に限る。
「ちょっ!なんで無視なん!?起きてるでしょ!?」バシバシの俺の布団を叩く光。
「るっせーんだよ!大した用事もねぇくせに。それと犬飼先生と呼べと何度も…。」いつもの説教をしようとすると…
「でも、オレだって同じ名字だし…って!そんなことより愛がっ…。」光がいつになく緊迫した表情を浮かべる。
「愛がどうした?…まぁた腹でも壊したか。」やれやれとベットから立ち上がると…
「ひっ…人になったんだよっ!」俺にすがる様に光が叫ぶ。
「…は?」「だ、か、ら!人間になったんだってば!」更に大声で喚く光。
「…。お前さ…、そりゃ漫画の読みすぎじゃねぇの?」マジで引いた。
「違うって!とにかく来て!」光が俺の冷たい視線にも動じず、俺の腕を無理矢理引っ張る。
愛とは、この犬飼動物病院で飼っているメス猫で、気が強いくせに、忠実なとこもある変わった性格をしている。それでも可愛いと思ってしまう俺はよっぽど飼い主バカだろう。
「愛ー?」愛のお気に入りの毛布を持ち上げると、そこには猫耳と尻尾の生えた少女が寝息をたてて寝ていた。
「ほら!嘘じゃない。」威張った様に言う光。
「…。光…ちょっと顔貸せ…。」目は少女から離さず言う。
「ん?」
バコッ
光が顔を俺に向けた瞬間思いっきり殴る。
「ったー!何で殴るの?」光が涙目で訴える。
「あ~やっぱり夢じゃないか。」うんうんとうなずきながら腕を組む。
「オレを無視しないで、けんちゃん!」赤くなった頬を擦りながら言う光。
そうこうしてるうちに少女が目を覚ました。目を擦りながら、俺たちの方を向く。
「え、えーっと…愛…?」光が遠慮がちに確かめる様に聞く。
「!!」尻尾と耳が立ち、少女の表情が明るくなった。
「服がいるな。」とりあえずオレのワイシャツを着せたが、ずっとこのままというわけにもいかない。愛は嬉しそうにシャツの匂いを嗅いでいるが。「なんで?愛はなんでも似合うから、サイズは大きくても賢ちゃんの服でいいじゃん。明日オレの服持ってこようか?賢ちゃんのよりサイズは小さいし。」のんきな発言をする光。
「バッカ。このままほっといてみろ。ムラムラすんだろ。…あ、いやその…。」思わず言わなくて良いことを口走ってしまう。
「…。村々って何?」光が首を傾げる。
「……。」
物心つく前から一緒に育った従兄弟だが、光がバカでよかったと初めて思った瞬間だった。