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世界No.1の外科医、異世界転生!?  作者: 阿門 甲斐吽


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13/23

【第13話】医師から医師へ


 天明(てんめい)六年(ろくねん)、初夏(しょか)。


 紀伊国(きいのくに)の山々(やまやま)は深(ふか)い緑(みどり)に覆(おお)われていた。


 華岡家(はなおかけ)の診療所(しんりょうじょ)にも、朝(あさ)から絶(た)え間(ま)なく患者(かんじゃ)が訪(おとず)れている。


 腹(はら)を壊(こわ)した農夫(のうふ)。


 腰(こし)を痛(いた)めた老婆(ろうば)。


 熱(ねつ)を出(だ)した子供(こども)。


 青洲(せいしゅう)は一人(ひとり)ずつ話(はなし)を聞(き)き、身体(からだ)を診(み)て、必要(ひつよう)な薬(くすり)を処方(しょほう)していった。


 父(ちち)・直道(なおみち)から医業(いぎょう)を継(つ)いで一年(いちねん)。


 最初(さいしょ)の頃(ころ)。


 患者(かんじゃ)たちは青洲(せいしゅう)を。


「直道先生(なおみちせんせい)の息子(むすこ)」


 と呼(よ)んでいた。


 それが最近(さいきん)。


 少(すこ)しずつ変(か)わってきた。


「青洲先生(せいしゅうせんせい)」


 そう呼(よ)ぶ者(もの)が増(ふ)えている。


 父(ちち)の名(な)ではなく。


 自分(じぶん)の名(な)で。


 医師(いし)として見(み)られ始(はじ)めている。


 嬉(うれ)しくないと言(い)えば嘘(うそ)になる。


 だが。


 同時(どうじ)に怖(こわ)くもあった。


 名(な)が知(し)られるということは。


 それだけ多(おお)くの命(いのち)を預(あず)かるということでもある。


「先生(せんせい)」


 加恵(かえ)が診察室(しんさつしつ)へ顔(かお)を出(だ)した。


「お客様(きゃくさま)です」


「患者(かんじゃ)か?」


「いえ」


 加恵(かえ)が少(すこ)し首(くび)を傾(かし)げる。


「お医者様(いしゃさま)だそうです」


「医者(いしゃ)?」


 青洲(せいしゅう)が立(た)ち上(あ)がる。


 玄関(げんかん)には一人(ひとり)の男(おとこ)が立(た)っていた。


 四十歳前後(よんじゅっさいぜんご)。


 旅装(りょそう)ではあるが、腰(こし)には薬籠(やくろう)を下(さ)げている。


「華岡青洲先生《はなおかせいしゅうせんせい》でしょうか」


「そうですが」


 男(おとこ)は頭(あたま)を下(さ)げた。


「突然(とつぜん)申(もう)し訳(わけ)ありません。少(すこ)し離(はな)れた村(むら)で医者(いしゃ)をしております」


「私(わたし)に何(なに)か?」


「診(み)ていただきたい患者(かんじゃ)がおります」


 青洲(せいしゅう)の表情(ひょうじょう)が変(か)わった。


「あなたの患者(かんじゃ)を?」


「はい」


 男(おとこ)は苦(くる)しそうに言(い)った。


「私(わたし)には、もう分(わ)からないのです」


 話(はなし)を聞(き)くと。


 患者(かんじゃ)は五十代(ごじゅうだい)の男(おとこ)。


 半年(はんとし)ほど前(まえ)から身体(からだ)がだるく。


 最近(さいきん)になって。


 足(あし)が腫(は)れ始(はじ)めたという。


 食欲(しょくよく)も落(お)ち。


 息切(いきぎ)れもする。


 男(おとこ)はさまざまな薬(くすり)を試(ため)した。


 だが。


 良(よ)くならない。


「連(つ)れて来(こ)られますか?」


「すでに外(そと)で待(ま)たせています」


「では、すぐに」


 患者(かんじゃ)は家族(かぞく)に支(ささ)えられて入(はい)ってきた。


 青洲(せいしゅう)は一目(ひとめ)見(み)て。


 違和感(いわかん)を覚(おぼ)えた。


 顔色(かおいろ)が悪(わる)い。


 呼吸(こきゅう)が浅(あさ)い。


 そして。


 両足(りょうあし)が腫(は)れている。


「横(よこ)になってください」


 患者(かんじゃ)を寝(ね)かせる。


 青洲(せいしゅう)はまず脈(みゃく)を取(と)った。


 速(はや)い。


 そして弱(よわ)い。


「胸(むね)が苦(くる)しくなることは?」


「あります」


「横(よこ)になると?」


「……余計(よけい)に苦(くる)しいことがあります」


 青洲(せいしゅう)の目(め)が細(ほそ)くなる。


「夜中(よなか)に息苦(いきぐる)しくて起(お)きることは?」


「あります」


「尿(にょう)は?」


「前(まえ)より少(すく)ないです」


 付(つ)き添(そ)ってきた医者(いしゃ)が驚(おどろ)いた。


「足(あし)の腫(は)れを診(み)るのではないのですか?」


「診(み)ています」


 青洲(せいしゅう)は答(こた)えた。


「だから、他(ほか)のことも聞(き)いているのです」


「しかし……」


「足(あし)だけに原因(げんいん)があるとは限(かぎ)りません」


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)の胸(むね)に耳(みみ)を当(あ)てた。


 次(つぎ)に腹(はら)を見(み)る。


 首(くび)。


 唇(くちびる)。


 手(て)。


 足(あし)。


 一(ひと)つずつ確認(かくにん)する。


 そして。


 意識(いしき)を集中(しゅうちゅう)した。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【対象(たいしょう):成人男性(せいじんだんせい)】


【循環機能(じゅんかんきのう):低下(ていか)】


【体液貯留(たいえきちょりゅう)を確認(かくにん)】


【呼吸機能(こきゅうきのう):軽度低下(けいどていか)】


【全身状態(ぜんしんじょうたい):注意(ちゅうい)】


【原因解析(げんいんかいせき)――】


 文字(もじ)が止(と)まった。


「……ん?」


【解析精度不足(かいせきせいどぶそく)】


【単一原因(たんいつげんいん)として確定(かくてい)できません】


 青洲(せいしゅう)は黙(だま)った。


 システムでも分(わ)からない。


 いや。


 違(ちが)う。


 分(わ)からないのではない。


 情報(じょうほう)が足(た)りないのだ。


「先生(せんせい)?」


 付(つ)き添(そ)いの医者(いしゃ)が不安(ふあん)そうに見(み)る。


「少(すこ)し考(かんが)えます」


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)を見(み)た。


 足(あし)が腫(は)れている。


 だからといって。


 足(あし)の病気(びょうき)とは限(かぎ)らない。


 身体(からだ)の中(なか)では。


 すべてがつながっている。


 呼吸(こきゅう)。


 血(ち)の巡(めぐ)り。


 水分(すいぶん)。


 尿(にょう)。


 青洲(せいしゅう)の中(なか)に。


 かつて別(べつ)の人生(じんせい)で診(み)てきた患者(かんじゃ)たちの姿(すがた)が浮(う)かんだ。


 息苦(いきぐる)しさを訴(うった)える者(もの)。


 足(あし)が腫(は)れた者(もの)。


 横(よこ)になることができず、身体(からだ)を起(お)こしたまま眠(ねむ)っていた者(もの)。


 あの頃(ころ)なら。


 血液(けつえき)を調(しら)べ。


 胸(むね)の画像(がぞう)を撮(と)り。


 心臓(しんぞう)の動(うご)きを調(しら)べる方法(ほうほう)もあった。


 だが。


 今(いま)。


 目(め)の前(まえ)には何(なに)もない。


 だからこそ。


 患者(かんじゃ)の身体(からだ)が発(はっ)している小(ちい)さな兆候(ちょうこう)を拾(ひろ)う。


「もう一度(いちど)、脈(みゃく)を」


 青洲(せいしゅう)は目(め)を閉(と)じた。


 速(はや)い。


 弱(よわ)い。


 呼吸(こきゅう)との関係(かんけい)。


 皮膚(ひふ)の状態(じょうたい)。


 唇(くちびる)の色(いろ)。


 足(あし)の腫(は)れ。


 尿量(にょうりょう)。


 そして。


 横(よこ)になると増(ま)す息苦(いきぐる)しさ。


「……血(ち)の巡(めぐ)りか」


 青洲(せいしゅう)が呟(つぶや)いた。


「え?」


「身体(からだ)の中(なか)を巡(めぐ)る力(ちから)が弱(よわ)っている可能性(かのうせい)があります」


 付(つ)き添(そ)いの医者(いしゃ)が眉(まゆ)を寄(よ)せる。


「巡(めぐ)る力(ちから)?」


「足(あし)だけを治(なお)そうとしても、おそらく良(よ)くなりません」


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)を見(み)る。


「身体全体(からだぜんたい)を診(み)る必要(ひつよう)があります」


 その瞬間(しゅんかん)。


【SYSTEM (システム)】


【診断思考(しんだんしこう)を確認(かくにん)】


【複数生体情報《ふくすうせいたいじょうほう》の統合(とうごう)に成功(せいこう)】


【生命解析(せいめいかいせき) 熟練度上昇《じゅくれんどじょうしょう》】


 青洲(せいしゅう)の目(め)が止(と)まった。


「熟練度(じゅくれんど)……?」


 初(はじ)めて見(み)る表示(ひょうじ)だった。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【使用経験蓄積《しようけいけんちくせき》を確認(かくにん)】


【観察情報(かんさつじょうほう)との統合率(とうごうりつ)が上昇(じょうしょう)】


【次段階条件(じだんかいじょうけん):未達成(みたっせい)】


「次段階(じだんかい)……」


 思(おも)わず声(こえ)が漏(も)れる。


「先生(せんせい)?」


「いや、何(なん)でもありません」


 青洲(せいしゅう)は表示(ひょうじ)を消(け)した。


 今(いま)は患者(かんじゃ)が先(さき)だ。


 この時代(じだい)にできることを考(かんが)える。


 無理(むり)に強(つよ)い薬(くすり)を使(つか)うのではない。


 身体(からだ)への負担(ふたん)を減(へ)らし。


 食事(しょくじ)。


 水分(すいぶん)。


 休息(きゅうそく)。


 尿(にょう)の量(りょう)。


 呼吸(こきゅう)。


 脈(みゃく)。


 足(あし)の腫(は)れ。


 それらを毎日(まいにち)記録(きろく)する。


「すぐに治(なお)るとは言(い)えません」


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)と家族(かぞく)に告(つ)げた。


「ですが、変化(へんか)を見(み)ながら治療(ちりょう)を変(か)えていきます」


「治(なお)りますでしょうか」


 家族(かぞく)が聞(き)いた。


 青洲(せいしゅう)は少(すこ)しだけ黙(だま)った。


「分(わ)かりません」


 付(つ)き添(そ)いの医者(いしゃ)が驚(おどろ)く。


「青洲先生(せいしゅうせんせい)」


「分(わ)からないことを、分(わ)かるとは言(い)えません」


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)を見(み)る。


「ですが、できることはあります」


 父(ちち)の言葉(ことば)が蘇(よみがえ)る。


 知識(ちしき)だけの医者(いしゃ)になるな。


 人(ひと)を見(み)ろ。


「それを一(ひと)つずつやります」


 数日間(すうじつかん)。


 患者(かんじゃ)は華岡家(はなおかけ)の近(ちか)くに滞在(たいざい)することになった。


 青洲(せいしゅう)は朝夕(あさゆう)。


 必(かなら)ず状態(じょうたい)を確認(かくにん)した。


 脈(みゃく)。


 呼吸(こきゅう)。


 尿(にょう)。


 食事(しょくじ)。


 睡眠(すいみん)。


 足(あし)の腫(は)れ。


 そして。


 本人(ほんにん)がどう感(かん)じているか。


 すべて記録(きろく)した。


【完全記録(かんぜんきろく)】


【症例情報(しょうれいじょうほう)を保存(ほぞん)】


【生命解析(せいめいかいせき)との連携率上昇《れんけいりつじょうしょう》】


 五日目(いつかめ)。


「先生(せんせい)」


 患者(かんじゃ)が身体(からだ)を起(お)こした。


「昨日(きのう)より、少(すこ)し息(いき)が楽(らく)です」


 青洲(せいしゅう)は足(あし)を見(み)る。


 腫(は)れもわずかに減(へ)っている。


「まだ無理(むり)をしないでください」


「はい」


 十日目(とおかめ)。


 患者(かんじゃ)は自分(じぶん)で庭(にわ)まで歩(ある)けるようになった。


 完治(かんち)したわけではない。


 病(やまい)の原因(げんいん)を完全(かんぜん)に突(つ)き止(と)めたわけでもない。


 それでも。


 悪化(あっか)は止(と)まった。


 付(つ)き添(そ)っていた医者(いしゃ)が深(ふか)く頭(あたま)を下(さ)げた。


「勉強(べんきょう)になりました」


「私(わたし)は大(たい)したことをしていません」


「いいえ」


 男(おとこ)は首(くび)を振(ふ)った。


「私(わたし)は足(あし)の腫(は)ればかり見(み)ていました」


 青洲(せいしゅう)は黙(だま)って聞(き)く。


「先生(せんせい)は違(ちが)った」


「私(わたし)も最初(さいしょ)から分(わ)かっていたわけではありません」


「それでもです」


 男(おとこ)は青洲(せいしゅう)の研究帳(けんきゅうちょう)を見(み)る。


「なぜ、これほど細(こま)かく記録(きろく)するのです?」


 青洲(せいしゅう)は少(すこ)し考(かんが)えた。


「忘(わす)れるからです」


「忘(わす)れる?」


「人間(にんげん)は忘(わす)れます」


 青洲(せいしゅう)は帳面(ちょうめん)を開(ひら)いた。


「だから残(のこ)す」


 昨日(きのう)より良(よ)くなった。


 悪(わる)くなった。


 そんな感覚(かんかく)だけではなく。


 何(なに)をした。


 どう変(か)わった。


 何(なに)が効(き)かなかった。


 それを残(のこ)す。


「一人(ひとり)の患者(かんじゃ)から学(まな)んだことが、次(つぎ)の患者(かんじゃ)を救(すく)うかもしれません」


 男(おとこ)は帳面(ちょうめん)を見(み)つめた。


「医術(いじゅつ)を……残(のこ)す」


「はい」


 青洲(せいしゅう)は頷(うなず)いた。


「父(ちち)から私(わたし)が学(まな)んだように」


 男(おとこ)は帰(かえ)り際(ぎわ)。


 もう一度(いちど)、青洲(せいしゅう)へ頭(あたま)を下(さ)げた。


「また教(おし)えを請(こ)いに来(き)てもよろしいでしょうか」


「私(わたし)でよければ」


「ありがとうございます」


 男(おとこ)が去(さ)っていく。


 その背中(せなか)を。


 青洲(せいしゅう)は静(しず)かに見送(みおく)った。


「あなた」


 隣(となり)に加恵(かえ)が立(た)つ。


「はい?」


「先生(せんせい)と呼(よ)ばれていましたね」


「いつも呼(よ)ばれている」


「そうではなくて」


 加恵(かえ)が笑(わら)う。


「お医者様(いしゃさま)からです」


「……そうだな」


 青洲(せいしゅう)は少(すこ)し照(て)れくさそうに頭(あたま)をかいた。


 夜(よる)。


 診療所(しんりょうじょ)が静(しず)まり返(かえ)ったあと。


 青洲(せいしゅう)は一人(ひとり)でシステムを開(ひら)いた。


【SYSTEM (システム)】


【生命解析(せいめいかいせき)】


【熟練度(じゅくれんど):上昇(じょうしょう)】


【完全記録(かんぜんきろく)との連携(れんけい)を確認(かくにん)】


【進化条件(しんかじょうけん)の一部(いちぶ)を開示(かいじ)】


【条件一(じょうけんいち)】


【一定数(いっていすう)の複合症例(ふくごうしょうれい)を解析(かいせき)せよ】


【条件二(じょうけんに)】


【自身(じしん)の診断(しんだん)と解析結果(かいせきけっか)を統合(とうごう)せよ】


【条件三(じょうけんさん)】


【???】


【進化先(しんかさき):???】


「やっぱり……」


 青洲(せいしゅう)は画面(がめん)を見(み)つめた。


 スキルは。


 最初(さいしょ)から完成(かんせい)された力(ちから)ではなかった。


「成長(せいちょう)するのか」


【回答(かいとう)】


【肯定(こうてい)】


 青洲(せいしゅう)の目(め)が細(ほそ)くなる。


「何(なに)をすれば進化(しんか)する?」


【回答(かいとう)】


【医師(いし)として成長(せいちょう)してください】


「……ずいぶん曖昧(あいまい)だな」


【回答(かいとう)】


【必要条件(ひつようじょうけん)です】


 青洲(せいしゅう)は思(おも)わず笑(わら)った。


 つまり。


 近道(ちかみち)はない。


 患者(かんじゃ)を診(み)る。


 考(かんが)える。


 失敗(しっぱい)する。


 記録(きろく)する。


 学(まな)ぶ。


 そして。


 また患者(かんじゃ)を診(み)る。


 それを繰(く)り返(かえ)すしかない。


「面白(おもしろ)い」


 青洲(せいしゅう)は呟(つぶや)いた。


 神(かみ)から与(あた)えられた力(ちから)なのに。


 使(つか)う本人(ほんにん)が成長(せいちょう)しなければ。


 力(ちから)も成長(せいちょう)しない。


「だったら」


 青洲(せいしゅう)は研究帳(けんきゅうちょう)を開(ひら)いた。


「俺(おれ)が先(さき)に進(すす)めばいい」


 その頃(ころ)。


 華岡青洲(はなおかせいしゅう)という若(わか)い医師(いし)の名(な)は。


 まだ紀伊国(きいのくに)の片隅(かたすみ)にしか知(し)られていなかった。


 だが。


 患者(かんじゃ)が患者(かんじゃ)へ。


 家族(かぞく)が家族(かぞく)へ。


 そして。


 医師(いし)が医師(いし)へ。


 その名(な)を伝(つた)え始(はじ)めていた。


 小(ちい)さな流(なが)れは。


 まだ誰(だれ)にも気(き)づかれないほど静(しず)かに。


 しかし確実(かくじつ)に。


 広(ひろ)がり始(はじ)めていた。



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