さいほうやさんと星座のひみつ
ママは言った。「星座はさいほうやさんがあんでるんだよ。」って。
子供から大人まで、違った視点で楽しめる童話です。
懐かしい夢を見た。
その日は、いつもより空がきれいだった。ほのかは芝生に座って、ぼんやりとキラキラ光る星を眺めていた。そろそろお家に帰らないと、ママに叱られちゃう時間だ。
すると、芝生の向こうからママの声が聞こえた。
「ほのか、どこに行ってたの?」
「ごめんね、ママ。あのね、星がとってもきれいだったの。」
ママは空を見上げて、にこにこと笑った。
「あら、本当ね。さいほうやさんが頑張ったのね。」
「さいほうやさん?」
「そうよ。星座をあむ人。」
「星座を?」
ママの言葉は、時々ちょっとふしぎで、ほのかにはよくわからない。
「大人になると夢はあんまり見られなくなるけど、大人になってから見られる特別な夢もあるのよ。」
ほのかは、ママの笑顔を見ながら、少し不思議な気持ちになった。
「さぁ、そろそろ帰ろっか。ちょっと肌寒くなってきたし。」
ほのかは目を覚ました。頭が少し痛かったけど、熱はもう下がったみたいだ。時計を見ると、夜中の0時。そっと伸びをして立ち上がる。
変な時間に目が覚めたから、上手く眠れなくなっちゃったや。熱でずっと家にいたから、久しぶりに、ちょっとお散歩でもしよう。
ドアを開ける。風が冷たくて、ちょっと気持ちいい。なんだか悪いことをしているみたいだ。顔をあげると、銀色の毛糸が揺れている。何だろうと思って目で追うと、星たちがきらきらと繋がっていくのが見える。ほのかはドキドキして、その光を追いかけた。
森の中の小道を抜けると、小さな家があった。窓から、ちいさな手が針と糸で星をぬうのが見える。こっそり見ていたら、「そんなところで見てないで、入って来なよ。」と声をかけられる。言われた通り入ると、ちいさな人は星を編んでいた。
「さいほうやさん…?」
むかし、ママが言っていたことを思い出す。
「よく知ってるね。そうだよ。夜空の星座はぼくが作っているんだ。」
さいほうやさんはそう言いながら、テキパキと星を編んでいく。
「でも、星座に線は引かれてないよ?」
「そうだね、引かれてないよ。かに座も、ふたご座も、そう見えるだけさ。」
「そう見えないよ?」
「あはは、ならぼくもまだまだだね。」
「なんで星座を編むの?」
「星座は願いごとを知ってるからね。」
「願いごと?」
「そうだよ。小さな糸をほどくだけで、大きな奇跡が起こるんだ。」
「どうして?」
「どうしてだろうねぇ。」
さいほうやさんはくすくすと笑う。
大人になってから見られる特別な夢。ママの言葉を思い出す。
大人になっても、知らないことがたくさんだ。
「今日はもう終わり。続きはまた今度。」
「また来てもいい?」
「たどり着けたらね。」
さいほうやさんがパンッと手を叩くと、ほのかは自分の家にいた。夜空にかかる小さな魔法。きっと、知らないことがもっともっとたくさんある。
気がついたら眠ってたみたい。昨日は色々あったからなぁ。窓の外の空はまだ少し夜の名残でうっすらと光っていた。さいほうやさんや、星をあむ手は、夢だったのかな、本当だったのかな。
だけど、胸の中はふわふわとあたたかくて、まるで小さな星がひとつだけ、ずっと光っているみたいだった。
「また会えるかな…」ほのかはそっとつぶやく。
すると、窓の外の風が、ふわりとほのかの髪をなでていった。さいほうやさんが「また来てもいいよ」って言ってくれているみたい。何だか、いい一日になりそう。
ほのかはゆっくり伸びをして、ドアを開けた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
子供の特権みたいな夢もあるし、大人だからこそ見られる夢もある。
そんな不思議な経験をした際には、是非、空を見上げてみてください。
さいほうやさんが、星座を紡いでいるかもしれません。




