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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

マイペースに異世界暮らし

増える知人

作者: 汐琉

今回はキリ良く短めで。


次回は美人さん再登場予定です。

●8月✕日お昼頃



 先日、出先で思いがけず余計なお節介を焼いてしまった私は、帰宅後しばらく羞恥から畳の上でバタバタしたりもしたが、忘れる事にして立ち直った。



 そのせいで精霊馬を作り忘れて眠ってしまったので、もしこの家にご先祖様が帰ってこようとしていたなら徒歩一択だろう。


 何か申し訳なくなってしまい、次の日は朝早くからキュウリとナスで精霊馬を作っておく。

 どちらが帰り道用の牛かわからなくなったので、両方作った。

 別に「早く帰りやがれ」とか言いたい訳では無い。

 

 たぶん。



 家庭菜園で相変わらずいつの間にか増えている野菜を採っていると、麦わら帽子を被ったカッパくんがやって来る。

 ちょうど良かった。


「きゅきゅわ?」


 念の為、カッパくんち用にも精霊馬を一組作っていたのだが、返ってきたのは訝しげな声だ。

 カッパくんは割り箸で出来た精霊馬の足を掴んで、色んな角度から眺めている。

 最終的にカッパくんは、キュウリの方の尻尾辺りをかじり、美味しいと言わんばかりの笑顔を向けてくれる。

 君がそれで良いなら、全部食べて構わないよ。

 カッパくんのご先祖様なら、三途の川もスイスイだろうし、精霊馬がなくとも帰ってこられるだろう。

 最終的に、精霊馬だった物は割り箸だけを残して綺麗に無くなってしまったが、カッパくんから「きゅーわ!」と美味しかった的なリアクションをもらえたので、精霊馬も浮かばれるだろう。


 ……カッパくんのご先祖様が夢枕に立たないと良いけれど。


 キュウリを美味しそうにお代わりしているカッパくんを見ていたら、冷蔵庫に仕込んである物を思い出した私は、ポンと手を打ってカッパくんへ声をかける。

「あぁ、そうだ。カッパくん、卵好きみたいだから卵料理食べる?」

 ちなみに前回あげた時は、生卵のままだったから、パカッとやって飲んだのか、それとも茹でたり焼いたりしたのかは不明だ。

 私の言葉を聞いたカッパくんは、パァッと表情を輝かせてコクコクと大きく頷いてくれる。

「そっか、よかった。実は味玉を作り過ぎちゃってね」

 精霊馬を作成後、何となく味玉を食べたくなり、レシピを調べたら美味しそうなのがたくさん見つかり、ついつい二パック分ほど味玉にしてしまった。

 調子に乗って危うくもう一パック買ってきて、黄身の味噌漬けまで手を出すところだった。

 そんな事を話しながら、複数のジッパー付きの袋に、それぞれ味付けを変えた味玉を入れていく。

 それは一旦そのまま冷蔵庫へ。

 帰り際にカッパくんへ渡すつもりだ。

「涼しい所で保管して欲しいんだけど、大丈夫かな?」

「きゅわ!」

 カッパくんは、任せとけとばかりに胸を叩いてくれたので、信じてみよう。



 保冷バッグの中に保冷剤をガッツリ入れて持たせようと思ったのは、別にカッパくんを信じてない訳じゃないよ?



 というか今さらだが、ナチュラルに家の中にカッパくんがいるのだが、とても馴染んでいる。




「さて、カッパくん。お昼にしようか」


「きゅわぁ!」



 この可愛い隣人(?)のおかげで、最近はランチタイムが楽しみだ。




●8月✕日夕暮れ時



「じゃあ、早めに食べるんだよ、カッパくん」


「きゅわ!」



 ランチを一緒に食べた後、カッパくんはお昼寝をしてから、いつも通り家庭菜園のお手伝いをしてくれた。

 空が夕陽色に染まる頃、カラス……というには若干大きな鳥が森へ帰っていく。

 それを見たカッパくんは、きゅっ! と驚きの声を上げて、そろそろ帰らないと的な動きで私へアピールをしてくる。

 本人(?)は至って真剣なんだろうが、その動きはコミカルで可愛らしい。

「そうだね、もう夕暮れ時だ。カッパくんもおうちへ帰らないと。今日も手伝ってくれてありがとう」

 笑ってしまいそうになるのを堪えた私は、冷蔵庫へ入れてあった味玉各種を保冷剤入りの保冷バッグにインしてカッパくんへ渡す。

 いつも通り夏野菜も持たせたので、少し帰り道が心配になる。

 なにせカッパくんはゴブリンと見間違うサイズの小さめカッパだから。

「カッパくん、野菜は今日は止めておこうか」

「きゅわ!? きゅわわ!」

 心配になって提案してみたのだが、目を真ん丸くした後イヤイヤと頭を振ったカッパくんは、私に取られないようにしっかりと野菜の入ったエコバッグを抱え込んでしまう。

 どうしようかと悩んでいると、カッパくんの帰り道である茂みがガサガサと揺れて、新たなカッパが姿を現す。

 隣にいるカッパくんより肌の色が暗く、キリッとした顔立ちをしたカッパだ。

 カッパくんと区別するため、カッパさんと呼ばせてもらおうか。

 そんな事を呑気に考えていた私の方へ、カッパさん(仮)がゆっくりと歩いてくる。

 並んでみるとカッパくんより頭三つは背は高いが、私より少し目線は低い。

「うちの者がいつもお世話になってます」

 カッパくんの無害さを知っているので無警戒にほけほけ笑いながら観察していたら、思いがけず普通に喋りかけられて、頭を下げた事によって丸見えになった皿と見つめ合い数秒固まってしまう。

「い、いえ、こちらこそ、いつもお手伝いをしてもらって助かってるので」

 どもりながらも反射ながら、心からの言葉を返せた私をちょっと誉めたい。

「ご迷惑はおかけしてないでしょうか? 先日は卵までいただいてしまったようで……」

「まったく迷惑なんて思ってないので。カッパくんのおかげで楽しくて……あー、ややこしいか」

 私の中では『くん』と『さん』で呼び分けてるが、目の前にいるのはどちらもカッパな訳で。

 カッパくんはえへへという感じで笑って頬を掻いているが、カッパさん(仮)はふむと頷いてみせる。

「では、私の事は九重(ここのえ)とお呼びください」

「ここのえ……漢数字の九に重ねるで、ここのえさんで合ってるかな?」

 カッパさん(仮)の名前を聞いた瞬間、脳裏にすぐ浮かんだ漢字を口に出して訊ねると、カッパさん(仮)は少し戸惑いながら肯定を返してくれる。

「えぇ、合ってますが……」

 普通なら『九重さん』とか呼ぶんだろうけど漢字が浮かんだ時、同時に呼びたい愛称を思いついてしまった。

 少し特殊なので戸惑われるかもしれないから、笑顔で押し切ろう。

「じゃあ、きゅうさんって呼ぶから」

 脳裏に浮かんだの某きゅうりのお漬物だ。

 でも、キリッとしていながらも、カッパくんと似た愛嬌があるんで、この可愛い響きが似合うと思うし。

「九重の九で、きゅうさん、ですか?」

「そう。駄目かな?」

「……いえ。あなただけでしょうし、そのような呼び方は」

 若干呆れられた気もするが、カッパさん改めきゅうさんは笑顔であだ名呼びを許してくれた。

「きゅわ!? きゅわきゅわきゅっ!」

 私たちのやり取りを見守っていたカッパくんが、さかんに何かを訴えて来るがあいにくと私には何を伝えたいかわからない。

 曖昧に笑って頷いていると、きゅうさんがカッパくんをなだめてくれる。


「お前はまだ『名前』をもらっていないでしょう?」


 そんな言葉がちらっと聞こえてしまったので、もしかしたら大人になると名前をもらえる感じなのかもしれない。

 カッパの世界も色々あるらしい。


「いつもありがとうございます」


「きゅーわ……」


 去り際、元気のないカッパくんが少し心配だったが、きゅうさんが一緒だから問題なく帰られるだろう。





「というか、普通に話せるんだね、カッパって」




 荷物を手に茂みへ消えていく二人を見送ってから、今さらながらそんな感想を口にしている私は、順調にこの世界に馴染んでいるのかもしれない。


いつもありがとうございますm(_ _)m


ただ今短編のみ感想直返信しておりますが、遅くなる事も多々ありまして、申し訳ありません。


そして、この作品初めての個人名が、初登場のカッパという……。


こんな作品ですが、お読みいただきありがとうございます(^^)

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― 新着の感想 ―
カッパくん可愛いな…… しかしカッパくん、主人公に愛称ねだってない? というかそれで名付けしたら色々とややこしくなりそう……?
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