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これは、あの時声を殺した誰かへ。


クラスでの話し合いで発表したら「その意見ちょっと変だね。」と言われ、発表しなかったら「話聞いてなかったの?」と言われる。体育の授業で積極的にボールに触ったら「あの人下手なのに参加してくるのちょっと迷惑だよね。」と言われ、消極的になったら「やる気ないならやめたら?」と言われる。合唱コンクールの練習で大きな声で歌ったら「音全然あってないのによく歌えるよね。」と言われ、口パクにしたら「もっと声出して?聞こえないけど。」と言われる。ただ自分なりに考えて行動に表しただけなのに、返ってくるのは否定や嘲笑。そんな場面を挙げ出せばキリがないほど経験した。それから私は、表現する場で自分を押し殺すことが多くなった。「こう思うけど、言ったら変だと思われるかもしれない。」「行動を起こして目立ちたくない。」このような思いが私をそうさせた。


元々できない人が努力することを悪いみたいに言われて、恥ずかしい気持ちになる。でも周りに合わせて行動しなきゃやる気がないと言われてしまう。やってもダメ。やらなくてもダメ。どうしたら「正解」なのかがわからなくて、段々と「私であること」もわからなくなっていった。


最近は「自分らしく生きよう」「個性を大事にしていこう」「人と違っていいんだよ」というような「私であること」を励ましてくれる言葉が増えてきているように感じる。SNSや音楽、友人との会話の中で「あなたのままでいい」と背中をおしてくれる言葉に出会う機会も増えてきた。私自身もそんな言葉に勇気付けられたことも沢山ある。しかし、実際に一歩社会に出てみればみんなと同じでなければ排除されてしまうような空気が蔓延している。標語的には個人を大切にしていこうと言うのに、実際の社会では大衆と異なる個人は認められない。


そんな中自分に素直になって行動することはとても難しく、勇気がいることだ。行動しようとしても怖くて、何かしたら笑われてしまうかもしれない。自分自身を否定されてしまうかもしれない。だったら、いっそ何もしないほうが楽かもしれない。そんなふうに思ってしまう自分もいて、そんな自分にまた悲しくなる。


ふと気づいた。私はただ臆病だから動けないわけじゃない。社会が「同じであること」を求めすぎて、違う形で努力している人たちの存在が見逃されているのだ。


「頑張ってるね」とよく言う。この言葉のために努力をすることも多くある。しかし、それは目に見える努力だけではないはずだ。失敗しても、目立たなくても、自分なりに必死に取り組み、乗り越えようとしている人は、日常の中に沢山いる。けれど、そうした努力は多くの場合、気づかれず、ないものとして扱われてしまう。その度に、自分も、誰かも、「正解」から振るい落とされているような気がして悲しくなる。


声が小さくても、ゆっくりでも、目立たなくても、誰もが「自分なりの努力の仕方」で必死に努力している。その姿は、外から見ただけじゃわからないかもしれない。しかしそれを知ろうともせずに「声が大きい」なら「やる気がある」。「発言が多い」なら「頑張っている」。そうやって条件をつけて個人を決めつけることが私はとても悔しい。努力しているかどうかはその人の中に隠れた気持ちの中にある。「ちゃんとやっているかどうか」は見えているところだけでは決して測れない。


私自身、何度も「やる気がない」と思われることがあった。

でも、そうじゃない。怖かっただけ。自信がなかっただけ。それでも、心の中にはいつも頑張ってみようとする気持ちがありました。その気持ちは誰にも評価されなくても、確かにそこにありました。


誰にも言えない不安や悩みを抱えていて、それでも自分なりの方法で前に進もうとしている人たちは、きっと沢山いる。そんな人たちをもっとまっすぐ受け止められる社会であってほしい。


でも、きっと響かないんだろう。

私を傷つけて、歪め、苦しめた人たちには何も届かない。

文字を撫でて、舐めて、読んだふりをして、理解してふりをして、胸を打たれたふりをして、素敵な言葉を並べて、結局はなにも変わらないまままた日常へ戻っていく。


そんなのわかりきったことだ。

でも、それでも私はまた期待してしまう。

変わってくれるかもしれない。

報われるかもしれない。


その度に裏切られて、期待した自分を責めて、また諦める。

痛みが古傷をえぐる。


あぁ、また無駄だった。

また残されたのはちぎれかけた自尊心と、まとわりつく後悔だけ。


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