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習作  作者: 深草みどり
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お花見をする人達

 花見に訪れた公園で、私の前を歩いていた女性達が話していた。


「暖かいのか寒いのかよくわからない天気だね。桜も蕾のままでいた方がいいのか咲いたものかを迷っているようだよ。気の早いのはもう散って葉っぱになっているしね」

 四人組の女性の中の一人、黄土色と苔色(黄色と緑ではなく)のくすんだ縞模様に銀糸を散らした地味なのか派手なのかわからないセーターを着た派手な女性が言った。頭には同じデザインの毛糸の帽子を被っている。

「昨日も雨、明日も雨。今年のお花見は今日が最初で最後かしらね」

 すらりと背の高い女性が言った。ベージュの半袖シャツから伸びる腕は細いが筋肉質で何かスポーツをやっているようにすがすがしい身のこなしをしていた。

「今日集まれてよかった。ほら桜がきれい!」

 小柄で薄手のダウジャケットを着た女性が言った。おしゃれなのか、防寒対策なのか首には毛皮のマフラーのような物を巻いている。

「これはソメイヨシノかしら?」

 最後の一人はごく普通の女性だった。背は高くもなく低くもなく、服装もこれと言った特徴がない。彼女は歩道から少しはなれたところでぽつんと植えられた、二分咲きくらいの木にスマートフォンを向けた。

「これは桜じゃなくない? 源平桃だって。桃の木よ」

 特徴のない女性の疑問にセーターの女性が目を凝らしながら言って。その視線の先を追うと、木の幹に黒いプレートがついている。そこに木の名前が書かれているらしいのだが、私の視力では文字が判別できなかった。

「日本人は本当に桜が好きなのね」

 背の高い女性がブルーシートを広げて宴会をしている一団を見ながら言った。

「私たちのところにも桜はあったじゃない。一月か二月くらいに咲いていたわ」

「こっちだと卒業とか入学の時期と重なるから季節の花なのでしょうね。ソメイヨシノは同じ時期に咲くっていうしね」

 ダウンジャケットの女性の言葉に普通の女性が返した。

 それから女性達は地面に坐って桜を見る、あるいは桜に背を向けて飲み食いを楽しむ日本人を見学しながらあるいて行った。

 私は彼女達が流暢な日本語を話していたので日本人だと思った。だが海外から来て日本に住んでいる人たちらしかった。あとで調べてみると、東南アジアの方では一月くらいから咲き始める桜があるらしい。それは鮮やかなピンク色をしているとか。そういった品種の桜の花は散るのではなく落ちるのだそうだ。散らずに落ちる桜だと別れや出会いの寂しさや期待の感情がのらず、普通にきれいな花になるのかもしれない。


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